片山財務相は9月18日の閣議後記者会見で、令和9年度予算編成でやり遂げるべきことの一つに「租税特別措置・補助金等の点検・見直し、いわゆる日本版DOGE」を挙げ、「施策の優先順位を洗い直して、大胆に重点化する」と述べた。財務省は24日にこの会見の概要を公表した。では、洗い直しの対象はどれだけあるのか。財務省が今年2月に国会へ提出した最新の調査によると、法人税関係の租税特別措置は76項目、適用は延べ251万3286件、適用を受けた法人は151万7466社にのぼる。

「日本版DOGE」は予算編成改革の4本柱の一つ

租税特別措置とは、特定の政策目的のために、本来の税の仕組みから外れた軽減や控除を設ける仕組みを指す。中小企業の法人税率を下げる、研究開発費の一部を法人税額から差し引く、設備を早めに費用として落とせるようにする、といった措置がこれにあたる。補助金と違って予算書に金額が並ぶわけではないため、全体でどれだけの規模になっているかは外から見えにくい。多くは適用期限を区切って設けられ、期限が来るたびに延長するかどうかが判断される。

片山氏は改造前から財務相・金融担当相に加えて「租税特別措置・補助金見直し担当大臣」を兼ねており、9月17日に発足した第2次高市改造内閣でも引き続き担う。会見では、令和9年度予算編成でやるべきこととして、(1)『「強く豊かな日本」投資枠』の編成、(2)補正予算依存からの脱却と恒常的な施策の当初予算での措置、(3)租税特別措置・補助金等の点検・見直し、(4)債務残高の対国内総生産(GDP)比を安定的に引き下げる中で可能となる財政規模を精査し通年の国債発行額などを具体化すること、の4つを挙げた。

根拠は7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太の方針)にある。同方針は「租税特別措置や補助金等の点検・見直しを進め、施策の優先順位を洗い直し、大胆に重点化する」と明記し、注記で「各府省庁は自己点検を反映して概算要求を行うとともに、見直し内容を予算編成プロセスにおいて精査した上で、具体化する」としている。7月30日に閣議了解された概算要求基準も「補助金・基金の自己点検結果を要求・要望に反映し、予算編成過程において精査」と書き込んだ。各省庁が出した要求の中身は令和9年度の概算要求143.1兆円 新設の「強く豊かな日本」投資枠に12.2兆円 片山財務相「大幅な増加との指摘は当たらない」で報じた通りで、査定を経て12月に政府案が決まる。

対象は76項目、延べ251万3286件

財務省が今年2月に国会へ出した「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」は、2024年4月1日から2025年3月31日までに終わった事業年度の実績をまとめたものだ。租税特別措置法の適用を受けた法人は、確定申告に「適用額明細書」を添えることが義務づけられており、その記載を集計している。

提出した法人は151万7466社で、前年の148万3298社から3万4168社増えた。適用件数は法人税関係特別措置76項目について延べ251万3286件。前年は78項目で241万8094件だったので、措置の数は2つ減ったのに、使われた回数は9万5192件増えている。

種類別に見ると、規模が最も大きいのは税額控除で、17措置・35万7949件・2兆164億円。2年前の令和4年度は17措置・27万501件・1兆3289億円だったから、2年で6875億円ふくらんだ。次いで法人税率の特例が2措置・111万1078件で、軽減の対象となった所得金額は4兆7267億円。特別償却が26措置・3万6391件・8889億円、準備金が9措置・4682件・6067億円と続く。

件数で突出しているのは「中小企業者等の法人税率の特例」だ。法人税の税率は本則で23.2%だが、資本金1億円以下の普通法人などは所得のうち年800万円以下の部分について15%が適用される。この特例の適用件数は111万966件で、対象となった所得は4兆7129億円にのぼる。業種別の内訳はサービス業27.5%、建設業18.4%、不動産業15.3%で、中小企業が広く薄く使う典型例といえる。

研究開発減税は1兆69億円、3割を上位10社が占める

金額で目を引くのが研究開発向けの減税である。「試験研究を行った場合の法人税額の特別控除」は、研究開発費の一定割合を法人税額から直接差し引ける仕組みで、適用件数は1万8412件、適用総額は1兆69億円だった。

特徴は集中の度合いだ。1兆69億円のうち3032億円を、適用額の多い上位10社が占めている。割合にすると30.1%で、令和4年度の24.7%、令和5年度の25.5%から上がった。金額でも令和4年度の1889億円から1143億円増えている。適用総額そのものが7636億円から1兆69億円へ2433億円増えたなかで、上位10社の取り分がそれを上回る速さで伸びた計算になる。業種別では輸送用機械器具製造業が24.7%、化学工業が14.6%、その他の製造業が12.3%を占める。

研究開発を後押しする政策は政府全体で強化する方向にあり、高市首相は7月の「統合イノベーション戦略2026」案まとまる 高市首相「研究費の実質倍増を目指す」 科研費・運営費交付金を拡充へでも研究費の実質倍増を掲げている。減税で支えるのか、補助や交付金で支えるのか、支援の届き方に偏りがないか。点検・見直しは、その配分の設計を問い直す作業でもある。

評価の仕組みはすでにある 問われるのは年末の判断

見直しの土台となる評価は、すでに毎年行われている。財務省は8月31日、「令和8年度租税特別措置等に係る政策の事後評価書」を公表した。行政機関が行う政策の評価に関する法律などに基づき、国税の租税特別措置と地方税の税負担軽減措置について、政策目的、必要性、有効性、相当性を様式に沿って点検するものだ。各府省庁もそれぞれ所管の措置を評価し、その結果を税制改正要望に反映させる建て付けになっている。

つまり、点検する仕組みも、適用実績を公表する仕組みも、すでにある。足りていないのは、その結果を実際の廃止や縮小につなげる判断のほうだ。骨太の方針は、補正予算と当初予算の区分の考え方を検討して「2026年内に改定する予算編成の基本方針に反映する」としており、年内の改定と12月の政府案決定が最初の関門になる。

片山氏は会見で、これらの課題について「いずれも非常に難しいですが、財務省のまさに組織令にある本務そのものだと思います」と述べた。租税特別措置の適用実態は毎年2月に国会へ報告される。次の報告に、洗い直しの結果がどう表れるかが問われる。