情報処理推進機構(IPA)は10月26日、国家試験のITパスポート試験に合格した人を対象に、学習期間や学習時間、使った教材などを尋ねたアンケートの結果を公表した。3297件の回答のうち、合格までの総学習時間は「50時間~100時間未満」が1023件で最も多く、100時間未満が全体の70.9%を占めた。学習開始から受験までの期間は「1カ月~2カ月未満」が最多だった。IPAは受験を考える人が「どのくらいの期間、どのくらい学習すればよいのか」と迷うことを踏まえ、学習計画を立てる際の目安として示したとしている。
対象は2025年10月以降の合格者 回答の8割が社会人
アンケートの対象は、2025年10月から2026年7月にITパスポート試験を受験して合格した人のうち、情報処理技術者試験に関するアンケートの送付に同意していた人である。2026年9月4日から11日まで電子メールで案内し、ウェブフォームで回答を集めた。
回答者の受験時の状況は、社会人が81.3%、大学生・大学院生・専門学校生・短大生・高専生が8.1%、小学生・中学生・高校生が4.3%、無職・その他が6.3%だった。年齢層は50代が28.4%で最も多く、40代が23.5%、20代が17.5%、30代が15.7%と続いた。60代以上も8.6%いた。合格までの受験回数は1回目が79.6%で、2回目が13.0%、3回目以上が7.3%だった。
受験前のデジタル技術へのなじみを尋ねた質問では、「日常的なPC・スマートフォン、インターネット利用が中心だった」が1188件で最も多かった。「ほとんどなじみがなかった」(122件)と合わせると全体の39.7%を占める。「仕事や学習で、デジタルツールや業務システムを継続的に使っていた」は1107件、システム開発を継続的に学んだり扱ったりしていた人は298件だった。
受験のきっかけ(複数回答)は、「学校・会社から受験を勧められた、または必須だったため」が1279件で最も多く、「デジタル知識を体系的に学び直したかったため」が1029件で続いた。「合格すると学校・企業から一時金や報奨金、手当等の支給があるため」も514件あった。
総学習時間は「50~100時間」が最多 なじみが深い人ほど短い
合格までの総学習時間は、「50時間~100時間未満」が1023件で最も多く、「25時間~50時間未満」の827件、「100時間~150時間未満」の514件が続いた。100時間未満と答えた人は全体の70.9%だった。200時間以上を費やした人も195件あった。
合格までの総学習時間(件)
数値で見る(単位: 件)
| 項目 | 件 |
|---|---|
| 25未満 | 488 |
| 25〜50 | 827 |
| 50〜100 | 1,023 |
| 100〜150 | 514 |
| 150〜200 | 250 |
| 200以上 | 195 |
IPAは、受験前のなじみの度合いと総学習時間を掛け合わせた集計も示した。システム開発を継続的に扱っていた人では「25時間未満」が41.9%で最も多かったのに対し、「ほとんどなじみがなかった」人では25時間未満は12.3%にとどまり、200時間以上が15.6%を占めた。日常的なPC・スマートフォンの利用が中心だった人は、「50時間~100時間未満」が33.9%で最も多かった。IPAは、なじみの度合いが高い区分ほど総学習時間が短い回答が多い傾向が見られたとしている。
学習開始から受験までの期間は、「1カ月~2カ月未満」が843件で最多、「2カ月~3カ月未満」が741件、「1カ月未満」が613件だった。3カ月未満が全体の66.6%を占める。一方で6カ月以上かけた人も327件あった。
1日の学習時間は、平日が「30分~1時間未満」の1193件、休日が「1時間~2時間未満」の935件で、それぞれ最も多かった。平日の平均学習時間を「数分から1時間未満」とした人は全体の60.5%だった。休日は「勉強していない」が362件あり、平日(127件)の約2.9倍だった。
教材は市販の参考書が最多 アプリと無料コンテンツが続く
使った教材・学習コンテンツ(複数回答)は、「市販の参考書や問題集」が2671件で突出して多かった。「スマートフォンアプリ」が1291件、「インターネット上の無料コンテンツ」が1127件、「YouTubeなどの動画サイト」が790件で続き、IPAのウェブサイトで公開されている公開問題やシラバスを使った人は643件だった。
最も使った教材を1つだけ尋ねると、市販の参考書や問題集が1601件で全体の48.6%を占めた。スマートフォンアプリが543件、インターネット上の無料コンテンツが537件で、通信講座やオンライン講座は176件だった。企業内研修・社内教材は37件、資格スクールなど民間の通学型講座は26件にとどまった。
合格して役立ったこと(複数回答)では、「合格できたことで自信がついた」が1450件で最も多かった。次いで「仕事や授業で、デジタル技術に関する会話や資料の理解がしやすくなった」が1042件、「経営・法務・セキュリティなど、幅広い知識の理解が深まった」が940件だった。「社内評価の材料になった」は621件、「他の試験・検定の受験につながった」は606件で、「特にない」は290件だった。
学生は短期集中、社会人は会社の勧めが入り口
IPAは、社会人2679件と学生(大学生・大学院生・専門学校生・短大生・高専生)267件の回答を分けて比べた結果も公表した。小学生・中学生・高校生、その他、無回答の計351件は比較に含めていない。
| 項目 | 社会人 | 学生 |
|---|---|---|
| 受験のきっかけで最多 | 学校・会社から勧められた、または必須(1108件) | 就職・転職活動、進学・進級で役立つ(149件) |
| 学習開始から受験まで2カ月未満 | 42.4% | 56.2% |
| 平日の平均学習時間が1時間以上 | 30.9% | 53.2% |
| 休日に「勉強していない」 | 11.3% | 4.9% |
| 最も使った教材の2番目 | スマートフォンアプリ(466件) | インターネット上の無料コンテンツ(56件) |
| 合格して役立ったことの2番目 | 会話や資料の理解がしやすくなった | 就職・転職活動、進学でのアピール材料(105件) |
総学習時間はどちらも「50時間~100時間未満」が最も多かった。学生は平日に1時間以上学ぶ人が半数を超え、期間を短く区切って受ける傾向が出た。社会人は受験期間が長めで、平日の学習は1時間未満が中心だった。
受験者は年27万人台 合格率は5割前後で推移
ITパスポート試験は、情報処理技術者試験の区分の一つで、職業人が備えておくべきITの共通的な基礎知識を問う。コンピューターなど情報機器の仕組みに加え、企業活動や関連法規、情報セキュリティ、AIなど新しい技術の概要も出題範囲に含む。試験時間は120分で、100問を解く。試験会場のコンピューターで解答するCBT方式で、年間を通じて随時実施されている。
IPAの統計資料によると、2025年度の受験者は27万1352人、合格者は13万2012人で、合格率は48.6%だった。2019年度の受験者は10万3812人で、6年で2.6倍に増えた。2024年度は27万3905人で、ここ2年は27万人台で横ばいとなっている。2026年度は4~9月の受験者が10万9986人、合格者が5万3815人で、合格率は48.9%。このうち社会人の合格率は52.1%、学生は38.9%だった。
情報処理技術者試験は2027年度から新しい試験制度に移る予定で、ITパスポート試験も対象となる。新制度の出題範囲の見直しは情報処理技術者試験、2027年度春から新制度 知識の出題分類は23から30へで取り上げた。
IPAは今回の結果について、アンケートの送付に同意した合格者に限った調査で、合格者全体の状況を示すものではないと説明している。回答は自己申告で、同じ人が複数回答えることを技術的に制限していないため、集計は回答件数に基づき実人数とは一致しない可能性がある。そのうえで、合格に必要な学習量や学習方法を保証するものではなく、学習計画を検討する際の参考情報として使ってほしいとしている。
