皇室に代々受け継がれた絵画や書、工芸品を収める皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)が、11月3日の文化の日に全面開館する。新しい施設の建設に伴って2025年5月から一時休館していた。全面開館を記念して、2027年5月16日までの約半年に特別展を3本続けて開く。第1弾「皇室の至宝—美いづるところ」には館の国宝や重要文化財に加え、正倉院宝物と法隆寺献納宝物が並ぶ。2027年2月からの第2弾では、伊藤若冲の「動植綵絵」30幅をそろえて展示する。

皇室からの寄贈品を公開する館として1993年に開館

館の説明によると、三の丸尚蔵館の始まりは1989年(平成元年)にさかのぼる。この年、上皇陛下と香淳皇后(昭和天皇の皇后)が、皇室に代々受け継がれてきた絵画、書、工芸品、歴史資料などを国に寄贈した。その保存と研究、公開を目的に、1993年11月に「宮内庁三の丸尚蔵館」として皇居東御苑の中に開館した。

館名の「尚蔵(しょうぞう)」は、古代の律令制で天皇に関わる器物を管理した蔵司(くらのつかさ)の長官「くらのかみ」に由来し、大切に保管するという意味を持つ。旧江戸城の三の丸があった場所に建てられたことから「三の丸尚蔵館」と名付けられた。

収蔵品はその後も増えた。1996年に旧秩父宮家、2001年に香淳皇后のご遺品、2005年に旧高松宮家、2014年に三笠宮家からそれぞれ寄贈を受けている。館の収蔵品検索では、小野道風(894〜966年)や藤原行成(972〜1027年)、狩野永徳(1543〜1590年)、円山応挙(1733〜1795年)、高村光雲(1852〜1934年)、横山大観(1868〜1958年)といった作者から作品を探すことができる。

建て替えで国立文化財機構へ移管、2023年に一部開館

収蔵庫と展示室を広げるため、2019年から新しい施設の建設が進められた。2023年には管理と運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移り、同年11月に「皇居三の丸尚蔵館」の名称で施設の一部を開館した。工事を続けるため2025年5月から再び休館し、今回の全面開館に至る。

館は全面開館に向けた説明で、展示室のほか、映像上映を中心に講演会やワークショップにも使える講堂と、ミュージアムショップを新たに整備するとしていた。第1弾の特別展には、同じ国立文化財機構に属する東京国立博物館が所蔵する法隆寺献納宝物の国宝も出品される。

開館時間は午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)。毎週金曜と土曜は夜間開館として午後8時まで開け、入館は午後7時30分まで受け付ける。休館日は原則として月曜日。

第1弾は正倉院宝物と近代美術、会期中に作品がすべて入れ替わる

第1弾の特別展「皇室の至宝—美いづるところ」は、11月3日から2027年1月24日まで開く。会期は前期(11月3日〜23日)、中期(11月26日〜12月20日)、後期(12月23日〜1月24日)の3つに分かれ、時期ごとに展示作品がすべて入れ替わる。館は、皇室の保護のもとで守り伝えられてきた正倉院宝物や、聖徳太子ゆかりの法隆寺献納宝物が「一堂に会します」と案内している。2026年が昭和改元から100年にあたることから、明治・大正・昭和の各時代に皇室にもたらされた近代美術も並べる。

館が挙げた主な出品作品は次のとおりだ。前期には正倉院宝物の「螺鈿紫檀琵琶(らでんしたんのびわ)」(8世紀)と「八角鏡 平螺鈿背」(中国・唐時代、8世紀)、狩野探幽の「源氏物語図屏風」(1642年)、伊藤若冲の「旭日鳳凰図」(1755年)、重要文化財の「菊蒔絵螺鈿書棚」(1903年)が出る。中期には東京国立博物館所蔵の国宝「伎楽面 治道」「竜首水瓶」と重要文化財「摩耶夫人および天人像」(いずれも飛鳥時代、7世紀)、重要文化財の「萬国絵図屏風」(17世紀)、富岡鉄斎の「武陵桃源・瀛洲神境」(1923年)が並ぶ。後期には国宝の「蒙古襲来絵詞」前巻(13世紀)と狩野永徳の「唐獅子図屏風」(16世紀)、横山大観の「龍蛟躍四溟(りゅうこうしめいにおどる)」(1936年)などが展示される。

休館日は月曜日だが、11月23日と2027年1月11日は開館し、11月24日・25日、12月22日、12月28日〜1月3日、1月12日を休みとする。11月14日には記念講演会「正倉院の至宝-その歴史と価値」を開くが、申し込みの受け付けはすでに終わっている。

第2弾は若冲「動植綵絵」、第3弾は書の1300年

第2弾の特別展「国宝 動植綵絵 いろどりの世界」は、2027年2月4日から3月14日まで開く。18世紀の京都で活躍した絵師・伊藤若冲(1716〜1800年)が描いた30幅からなる「動植綵絵」を一斉に展示する。館によると、30幅の一斉展示は国内では約10年ぶりで、1993年の開館以来、館として初めての試みとなる。「動植綵絵」は2021年に国宝に指定されており、指定後に30幅がそろって公開されるのも初めてだという。同じ時代の京都で描かれた花鳥画の名品も合わせて紹介する。

第3弾の特別展「日本の書の美1300年」は、2027年3月25日から5月16日まで開き、4月18日までの前期と4月21日からの後期で作品を大きく入れ替える。奈良時代に中国からもたらされた書聖・王羲之の「喪乱帖(そうらんじょう)」をはじめとする館の収蔵品に、天皇の筆跡である宸翰(しんかん)、写経、禅僧が書いた墨跡などを加え、現代まで1300年にわたる書の歴史をたどる。

3本の特別展は、いずれも皇居三の丸尚蔵館と読売新聞社、NHKが主催し、宮内庁と文化庁が特別協力する。館によると、収益の一部は「紡ぐプロジェクト」における修理事業に充てられる。

特別展 会期 一般の観覧料
皇室の至宝—美いづるところ 2026年11月3日〜2027年1月24日 2500円
国宝 動植綵絵 いろどりの世界 2027年2月4日〜3月14日 3000円
日本の書の美1300年 2027年3月25日〜5月16日 2500円
皇居三の丸尚蔵館のグランドオープン記念特別展の会期と一般の観覧料(税込み)

出典: 皇居三の丸尚蔵館「料金・チケット予約」、各特別展の案内ページ

観覧は日時指定の予約制、23歳未満は無料

3本の特別展はいずれも日時指定制で、会場での当日券の販売は無い。一般の観覧料は第1弾と第3弾が2500円、第2弾が3000円(いずれも税込み)。満23歳未満の人と大学生・高校生・中学生は無料だが、事前の予約が要る。入館の際には、23歳未満の人は運転免許証やパスポートなどを、学生は学生証や生徒手帳を見せる。小学生以下と、障害者手帳を持つ人および付き添いの1人は、無料で予約も要らない。当日の混雑によっては入場まで待つ場合があるとしている。

館は皇居東御苑の中にある。大手門から入るのが近く、地下鉄の大手町駅(C13a出口)から徒歩約5分、JR東京駅の丸の内北口から徒歩約15分で、大手門から館までは約100メートル。地下鉄東西線竹橋駅からは、平川門まで徒歩約10分、北桔橋門まで約15分となっている。館は、皇居東御苑が閉園している時間に入れるのは大手門だけだと案内しており、金曜と土曜の夜間開館に行く場合は大手門を使うことになる。東御苑の中には車で乗り入れることはできない。