政府は10月30日、政治資金規正法施行令と政党助成法施行令の一部を改める政令(令和8年政令第338号)を官報で公布した。2027年1月1日に施行する。オンラインで提出された政治資金収支報告書を、紙に印刷し直さず電子データのまま写しとして受け取れるようにし、その手数料を定めた。総務大臣に請求する場合、ネット経由で受け取ると1ファイル210円、紙に出力すると1枚10円かかる。総務省は同じ日に施行規則も改め(総務省令第125号)、収支報告書データベースに載せる項目を具体的に決めた。
政令と省令で何が決まったのか
総務省の報道資料によると、今回の改正は、2024年に成立した改正政治資金規正法(令和6年法律第64号)の一部が2027年1月に施行されるのに合わせたものだ。システム改修などに伴い、「写しの交付・閲覧の対象となる収支報告書等が電磁的記録である場合に対応する規定を整備する」と説明している。
これまでの施行令は、紙で出された収支報告書を前提に写しの作り方を定めていた。改正後の施行令第18条は、受理した報告書が「文書」か「オンラインで提出された電磁的記録」かで分け、それぞれ4通りの受け取り方を並べた。紙の報告書は、複写機で用紙に白黒で写したもの、スキャナで読み取ったデータをCDかDVDに写したもの、請求した人のパソコンにネット経由でファイルとして写す方法の4つ。電子データの報告書は、A4の用紙に白黒で出力したもの、CD、DVD、ネット経由のファイルの4つで、ネット経由は電子申請で請求した場合に限る。
電子データの4通りには「総務大臣又は都道府県の選挙管理委員会がその保有する処理装置及びプログラムにより行うことができるもの」という条件が付く。窓口の機器とソフトで対応できる方法だけが選べる、という意味だ。政党助成法に基づく報告書の写しについても、政党助成法施行令の第7条と第8条を同じ形に改めた。政党交付金の使い道を記した報告書の中身は政党交付金の使い道、2025年分の支出は357億円 宣伝事業費が2.3倍の102億円に、支部は2割減で伝えた。
閲覧の方法も省令で決まった。電子データの報告書を窓口で見る場合は、A4の用紙に出力するか、画面に表示して見せる(施行規則第35条第5項を新設)。
手数料は1枚10円、ネット経由は1ファイル210円
手数料は改正後の施行令第19条第1項が定める。政治資金規正法第20条の2第3項は、総務大臣に写しを請求する人が「実費の範囲内において政令で定める額の手数料」を納めると定めており、今回の額はこの規定に基づく。都道府県の選挙管理委員会に請求する場合は、この政令の額の対象ではない。
紙の報告書の写しは、用紙への複写が1枚10円(両面に写した用紙は片面を1枚と数える)、CDは1枚100円、DVDは1枚120円に、報告書1枚ごとに10円を足す。ネット経由で受け取る場合も報告書1枚につき10円だ。
電子データの報告書になると、数え方が「枚」から「ファイル」に変わる。用紙への出力は1枚10円だが、CDは100円、DVDは120円に1ファイルごとに210円を足し、ネット経由は1ファイルにつき210円となる。
| 受け取り方 | 紙で提出された報告書 | オンラインで提出された報告書 |
|---|---|---|
| 用紙(白黒) | 1枚10円 | 1枚10円 |
| CD | 1枚100円+報告書1枚ごとに10円 | 1枚100円+1ファイルごとに210円 |
| DVD | 1枚120円+報告書1枚ごとに10円 | 1枚120円+1ファイルごとに210円 |
| ネット経由 | 報告書1枚につき10円 | 1ファイルにつき210円 |
出典: 官報 令和8年10月30日号外第238号(政令第338号による改正後の政治資金規正法施行令第19条第1項)
データベースに提出日と公表日を載せる
2027年1月1日に施行される政治資金規正法には、オンライン提出を前提とした規定が2つ入る。第19条の15は、国会議員関係政治団体の会計責任者に、収支報告書と政治資金監査報告書の提出、確認書の添付を「電子情報処理組織を使用する方法により行うものとする」と定める。第20条第5項は、オンラインで出された収支報告書の記載事項を集めて検索できるデータベースを総務大臣が整え、「インターネットを通じて一般の利用に供しなければならない」とする。個人寄附者などに関する事項のうち総務省令で定めるものは除く。提供は報告書の公表日から3年を経過する日まで続ける(同条第6項)。
今回の省令は、このデータベースに載せる情報を施行規則第34条で4つに定めた。①収支報告書の様式(別記第14号様式)に書かれた事項(「事務担当者の氏名」欄と「この頁の小計」欄を除く)②報告書の提出先と提出された年月日 ③政治団体が解散したり政治団体でなくなったりした場合はその年月日 ④報告書が公表された年月日。
意見公募では、②と④の年月日がそれぞれ何を指すのか条文から読み取れないという意見が出た。総務省は、「提出された年月日」は政治団体から総務大臣や都道府県の選挙管理委員会へ報告書が出された日で、受付印で確認できる日だと答えた。「公表された年月日」は政治資金規正法第20条第1項に基づく公表日を指し、データベースで情報を出し続ける期間の管理に必要だとしている。この意見を受け、第34条の柱書きにある「以下この条」を「以下この項」に直した。
意見40件、無料化や機械で読める形式を求める声
意見公募は8月26日から9月24日まで行い、40件が集まった。総務省は意見と考え方を一覧にして公表した。
多かったのは手数料への異論だ。電子データをネットでダウンロードさせる費用は「事実上ゼロ」だとしてオンライン交付の無料化を求める意見や、1ファイル210円の算定根拠が示されていないとする意見が並んだ。総務省は、法律が実費の範囲内で政令で定めるとしていることを挙げ、額は「情報公開令の趣旨に倣って、同様に規定しています」と答えた。写しの交付の方法も、行政機関情報公開法の施行令に定めた方法を「実際的なもの」として、それに準じて定めたとしている。
データベースについては、スキャンしたPDFではなくCSVやJSONなど機械で読める形式で出すことや、寄附者名・団体名での横断検索を求める意見があった。総務省は、法律がデータベースを「電子計算機を用いて取得し、かつ、検索することができるように体系的に構成したもの」と定義していることを示し、「データのダウンロードやキーワードでの検索ができる機能を設けることを想定しています」と答えた。
このほか、CDやDVDは使われなくなっているとしてUSBメモリやクラウドでの受け渡しを求める意見、選挙管理委員会の機器で対応できる方法に限る条件は電子交付を受けられない「抜け道」になるとの指摘、公表から3年という閲覧期間をなくすよう求める意見もあった。総務省は多くについて、今回は改正法の一部施行に伴うシステム改修などで必要な政省令の案を示したものだとして「御意見として承ります」と答えるにとどめた。収支の公開の在り方そのものは、政治活動の自由と密接に関わるため「各党各会派において御議論いただくべき事柄」としている。
国会では企業・団体献金の法案が審議待ち
政治資金規正法をめぐっては、2024年以降の法改正で国会議員関係政治団体のオンライン提出やデータベースの整備が決まり、今回の政省令はその施行に合わせて写しと閲覧の手続きを整えたものだ。施行は2027年1月1日で、政令には内閣総理大臣の高市早苗氏と総務大臣の藤井比早之氏が署名した。
一方、献金の入り口をどう規制するかは国会で議論が続いている。今国会には企業・団体献金の扱いを定める法案が3本出ており、審議の状況は企業・団体献金の3法案、衆院政治改革特別委に付託 自民・維新案は結論の期限を令和9年9月30日とするで伝えた。今回の改正は献金の規制には触れず、公表された報告書をどう見せ、どう写しを渡すかという公開の手続きを定めたものだ。
報告書の閲覧と写しの請求は、改正後も公表日から3年間に限られる(政治資金規正法第20条の2第2項)。オンラインで出された報告書は検索できるデータベースで提供される一方、総務大臣から写しを電子データで受け取るにはファイル単位の手数料がかかる。
