出入国在留管理庁は、外国人に在留資格「永住者」を認めるかどうかの審査の考え方を示した「永住許可に関するガイドライン」を、2026年10月1日付で改定した。申請者の世帯年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかを審査の考慮要素とし、将来受け取れる年金の見込額も新たに見る。改定後のガイドラインは2027年4月1日以降の申請から適用するが、収入に関する部分は、改定日の6か月前以降に申請し、改定日に審査中だった案件にも当てはめる。同じ日に「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を新たに策定し、2027年4月に施行される取消し制度の運用の基準を示した。

収入は「日本人世帯の平均を上回る水準」が目安に

入管法22条2項は、永住許可の要件として「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」の2つを定め、そのうえで永住が「日本国の利益に合する」と法相が認めたときに限り許可できるとしている。入管庁はこれを素行善良要件・独立生計要件・国益要件の3つと整理している。

改定前の2026年2月24日改訂版は、独立生計要件を「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」と書くだけで、収入の目安は示していなかった。改定版は「日本人と同等水準以上の経済条件が求められます」と明記した。

具体的には、申請者の属する世帯の年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準(年収水準)に継続して達しているかを見る。世帯年収は、住居と家計を共にする人の年収を合算して出す。ただし「家族滞在」など就労を目的としない在留資格の家族が、資格外活動許可を受けて得た収入は合算しない。一方、申請者が扶養する親族は、外国に住んでいて同居していなくても世帯人数に加える。世帯が5人以上になると、生活費などの増加分を年収水準に上乗せする。成人して親の扶養を外れた人が申請する場合は、親の収入を足さずに本人の年収で判断する。

ガイドラインの本文には、年収水準の具体的な金額は書かれていない。

年金の見込額、30年間の厚生年金加入が物差し

年金は新たに加わった考慮要素だ。申請時点の年齢、それまでの年金の加入状況(自営業か会社員かといった働き方、加入期間、その間の平均年収)、申請時点の年収から推計した将来の受給見込額が、「受給年金水準」に届くかを見る。受給年金水準とは、日本人世帯の平均収入を上回る年収で30年間働き、その間ずっと厚生年金に加入していた場合に受け取れる見込額をいう。

見込額が届かなくても、不足分の生活資金を補える金融資産(補填資産)を申請時点で持っていれば、届いているものと評価する。補填資産の基準額は申請時の年齢で変わり、若い申請者ほど低い。年金の受給開始までに資産を積み上げられる期間が長いことを考慮したという。配偶者がいる場合は、2人の見込額を合算し、配偶者が同じ期間に国民年金の第3号被保険者だった場合の見込額を上乗せした水準と比べる。

8月4日の閣議後記者会見で、当時の法相は改定の狙いについて、永住者が最も安定した在留資格であることを踏まえ、「公共の負担とならないことをより確実に担保するとの観点から必要な見直しを行いました」と述べた。記者からは、日本人の平均以上という基準は法律の要件を逸脱しているのではないかとの質問も出たが、法相は1月の総合的対応策で見直しの検討が求められたことを挙げ、「その趣旨は、永住許可制度の適正化を図るというもの」と答えた。

収入の基準は申請中の案件にもさかのぼる

ガイドラインの適用は申請日で分かれる。入管庁の申請案内によると、次のとおりになる。

申請した時期 適用されるガイドライン
2026年3月31日まで 2026年2月24日改訂版
2026年4月1日〜2027年3月31日 2026年2月24日改訂版。ただし収入の部分(第2の4(2)・第2の5(7))だけ10月1日改定版
2027年4月1日以降 10月1日改定版
永住許可の申請時期と適用されるガイドライン出典: 出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」

さかのぼって当てはめる理由について、法相は8月の会見で、収入は「申請人が自活可能かどうかを判断する上で重要であり、ガイドライン改定後も従前の運用を続けることは適当でない」と説明した。6か月前という線は、永住許可の標準処理期間が4か月から6か月であることを踏まえて引いたという。記者から、すでに申請した人に払った金を返すのかと問われると、「申請だけではお金がかからない」と答えた。

同じ10月1日には在留手続の手数料も改定された。改定後の手数料は、10月1日以後に申請して永住許可などを受ける外国人が納める(詳しくは「外国人の在留手続の手数料、10月1日に改定 永住許可は1万円から20万円へ 在留資格の変更と在留期間の更新は一律6000円から最大7万5000円に」)。

改定案への意見募集は8月4日に始まり、9月4日午前0時に締め切られた。e-Govの結果公示によると、提出意見は5180件で、意見を踏まえた案の修正は「無」だった。

日本語能力B1相当、配偶者の特例は婚姻5年に

2027年4月以降の申請では、国益要件の審査項目も増える。改定版は、国益に合すると認められるには「単に国益に反しないという消極的なものにとどまらず、積極的かつ具体的に当該外国人の永住が日本国に利益をもたらす必要があります」とした。

新たに書き込まれた主な項目は次のとおり。日本語能力は、文化審議会の「日本語教育の参照枠」でB1相当以上かを見る。高度人材外国人とその家族、日本で初等・中等教育を通算6年以上受けた人などは対象外とする。日本の制度やルールの理解は、入管庁の「生活・就労ガイドブック」の内容を中心に、長官が指定する方法で確認する。学齢期の子を養育する場合は、子が小中学校に通っているかを見る。申請前10年以内に、合理的な理由なく1回で半年以上、または通算2年6か月以上日本を離れていた場合は、原則として消極的に評価する。

在留期間の特例も変わる。日本人や永住者、特別永住者の配偶者は、改定前は「実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留」で原則10年の在留期間を満たさなくても申請できたが、改定版は婚姻5年以上・在留3年以上とした。実子なども1年以上から3年以上になる。在留10年のうち5年以上が求められる「就労資格」から外す在留資格も、改定前の「技能実習」「特定技能1号」に、「育成就労」「企業内転勤」と一部の「特定活動」を加えた。

「我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン」は2027年3月31日で廃止される。改定版には第4として「我が国に貢献した者に対する特例」が置かれ、国民栄誉賞や勲章の受章者、東京証券取引所プライム市場の上場企業で取締役以上を5年以上務め、経済や産業の発展に貢献した人などを例に挙げた。外国人の在留をめぐっては、別の在留資格の許可基準も改められており、その影響は「在留資格「経営・管理」の新規入国者が上半期635人、前年同期から80.9%減 許可基準の改正から1年」でも伝えている。

永住の取消し、ほとんどは「定住者」へ切り替え

同時に策定された取消しのガイドラインは、2024年の入管法改正で加わった取消事由の解釈を示す。追加されたのは、入管法の義務を守らないこと、故意に公租公課を払わないこと、窃盗や詐欺、傷害など特定の罪で拘禁刑に処せられたことの3つで、2027年4月に施行される。改正法の国会審議では、具体的な事例のガイドラインを作って周知するよう求める附帯決議が衆参両院で付いていた。

取消事由に当たっても、すぐに出国させるわけではない。引き続き在留させることが適当でない場合を除き、法相が職権で別の在留資格への変更を許可する。ガイドラインは「ほとんどの場合は、『定住者』の在留資格への変更を許可することを想定しています」とし、変更後に要件を満たせば、再び永住許可を受けられるとした。

義務違反では、在留カードの更新や再交付の申請をしない、携帯や提示に応じないといった例を挙げた。過失でも取消事由には当たるが、更新を忘れたり、うっかり携帯しなかったりした「一度の義務の不履行だけをもって在留資格を取り消すことは想定していません」と明記した。公租公課は、所得税や住民税、国民健康保険料、国民年金保険料などを指し、富士山の登下山道の使用料や交通違反の反則金は含まない。「故意に」払わないとは、収入や資産、滞納の回数・額・期間などを総合して「支払意思がないことが明白」な場合をいい、やむを得ない事情があって本人に責任が無い場合は当たらない。

刑罰法令違反は、刑期の長短を問わず、執行猶予が付いた場合も含む。こうした罪で拘禁刑に処せられた永住者は「初犯であっても職権変更とすることが想定されます」とした。永住許可の後に拘禁刑の前科があり、さらに対象の罪で拘禁刑に処せられた場合は、取り消すとしている。