消費者庁、農林水産省、環境省は9月29日、令和8年度の食品ロス削減月間の取組を公表した。10月は食品ロスの削減の推進に関する法律が定める食品ロス削減月間で、10月30日は食品ロス削減の日にあたる。3省庁は同日、令和8年度食品ロス削減推進表彰の受賞者も発表し、コンビニエンスストア大手2社の取組が選ばれた。
「涙目シール」で年約2500トン、AIの値引きは約1万4000店
表彰は消費者庁と環境省が主催し、令和8年5月29日から7月31日まで募集した。応募は60件で、このうち17件が受賞した。両省庁の合同開催としては5回目になる。
環境事務次官賞に選ばれた株式会社ファミリーマート(東京都)は、消費期限が迫った中食商品に「涙目シール」を貼って買い手の共感を促す取組を全国約1万6400店舗で展開し、年間約2500トンの食品ロスを削減した。シールのデザインをフリー素材として公開し、ほかの事業者や地域が使えるようにした点も評価された。
消費者庁長官賞の株式会社ローソン(東京都)は、全国約1万4000店舗でAIによるダイナミックプライシング(需給に応じた価格の自動変更)と自動発注システムを導入した。あわせて、寄附対象商品を1個買うごとに1円を積み立て、食品に換えて施設などへ寄附している。
内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)賞は、特定非営利活動法人ジャパンハーベスト(岡山県)が受けた。焼きたてのパンや冷蔵食品といった消費期限の短い食品を、その日のうちに受け取って支援先へ届ける仕組みで、大阪・関西万博の余剰食品も子ども食堂などに回した。
環境大臣賞の公益財団法人福岡市学校給食公社(福岡県)は、学級閉鎖などで急に提供できなくなった給食用のパンを回収し、市庁舎などで市民向けに販売している。令和3〜7年度の5年間で約24万5000個のパンが廃棄を免れた。学校給食をめぐっては、食育の数値目標24のうち達成は2つ 第5次食育推進基本計画は10項目で目標を引き下げ 朝食を抜く子どもは「0%」から「5%以下」へと、国の計画自体が目標の達成に苦しんでいる。
このほか消費者庁長官賞には、企業の余剰食品や防災備蓄品を支援団体を通じて家庭へ届ける「WeSupport Family」(東京都)が選ばれた。2021年12月の活動開始以来、85社の企業と72拠点の支援団体と連携し、累計で800トンを超える食品を再流通させたという。
全国の食品ロスは461万トン 減ったのは家庭系だけ
農林水産省と環境省が6月30日に公表した推計によると、令和6年度に国内で発生した食品ロスは約461万トンだった。前年度の464万トンから3万トンの減少にとどまる。
内訳を見ると、動きは正反対だった。一般家庭から出る家庭系食品ロスは233万トンから224万トンへ9万トン減った。これに対し、食品関連事業者から出る事業系食品ロスは231万トンから237万トンへ6万トン増えている。家庭の減り分が事業者の増え分に打ち消され、全体ではほとんど動かなかった形だ。
食品ロス量の推計は、事業系は食品リサイクル法に基づく事業者の報告などから、家庭系は市町村への実態調査などから算出している。統計をさかのぼると、平成24年度は643万トン(事業系331万トン、家庭系312万トン)で、10年余りで約180万トン減った。ただし令和4年度以降は472万トン、464万トン、461万トンと、減り方が鈍っている。
国の目標は分野によって重さが違う。令和7年3月25日に閣議決定された「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」は、家庭系については2000年度比で2030年度までに半減し、2030年を待たずに早期達成するとし、事業系については2000年度比で2030年度までに60%削減するとしている。削減幅の大きい目標を負っているのは事業系のほうで、その事業系が前年度から増えた。
10月の啓発は「てまえどり」と駅のポスター
月間中の取組として、3省庁は「食品ロス削減5か条」を掲げたポスターを作成した。買い物前に自宅の食材を確認する、必要な分だけ買う、期限表示を理解する、冷凍を活用する、食品に対して「節約上手」になる、の5項目である。食品ロス削減推進アンバサダーを務めるお笑いトリオ・ロバートの馬場裕之氏が呼びかけるデザインで、紙のポスターは地方公共団体などに配った。
ポスターは公共交通機関にも掲出する。東京メトロは全駅の構内(一部掲出できない駅がある場合を除く)、JRは新宿、品川、東京、新橋、横浜、新大阪の6駅の構内が対象になる。
小売店では「てまえどり」を呼びかける。すぐに食べる場合に、商品棚の手前にある販売期限の迫った商品を積極的に選ぶ購買行動を指す。今年度は従来のデザインに加え、親子で取り組めるよう子どもに親しみやすいデザインの啓発資材を新たに用意した。日本フランチャイズチェーン協会、日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会、日本チェーンストア協会、日本チェーンドラッグストア協会の6団体が呼びかけに協力している。家庭のごみをめぐる意識では、「3R」の意味を知る人は35.1% 循環型社会計画の初回点検、暮らしの意識・行動だけが最低評価 ごみは1人1日854グラムというように、消費者の行動が政策の弱点とされてきた経緯がある。
10月30日に那須塩原市で全国大会
10月30日の食品ロス削減の日には、栃木県那須塩原市で「第10回食品ロス削減全国大会」が開かれる。主催は那須塩原市と全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会で、消費者庁、農林水産省、環境省が共催する。食品ロス削減推進表彰の表彰式は、この大会のプログラムの一つとして行われる。前日の10月29日には、農林水産省(東京都千代田区霞が関)で第14回「食品産業もったいない大賞」の表彰式が開かれる。
食品ロス削減月間の根拠は、令和元年に成立した食品ロスの削減の推進に関する法律の9条にある。1項は「国民の間に広く食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるため、食品ロス削減月間を設ける」と定め、2項は「食品ロス削減月間は、十月とし、特に同月三十日を食品ロス削減の日とする」と規定する。3項で国と地方公共団体に、月間中にその趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めることを求めている。
今回の表彰の審査委員長を務めた日本女子大学家政学部教授の小林富雄氏は講評で、応募全体について「取組の意義や工夫がよく伝わる一方で、客観的な成果や定量的な効果を示すデータの提示が少ない事例も見受けられました」と指摘した。削減量を数字で示せる取組が、まだ多くはないということである。
