厚生労働省は9日、社会保障審議会介護給付費分科会(第269回)に、令和9(2027)年度の介護報酬改定に向けた論点と対応案を示した。取り上げたのは、夜間の訪問や認知症の高齢者を住み慣れた地域で支える地域密着型の4サービスである。2027年3月末で廃止が決まった「夜間対応型訪問介護」の利用者を受け止める定期巡回・随時対応型訪問介護看護には、24時間の通報・相談対応の機能を確保して日中の支援も行う事業所を評価する新たな報酬を設ける案を提示した。分科会は同日午後1時から開かれる。

夜間対応型訪問介護は2027年3月末で廃止、2030年3月末まで経過措置

夜間対応型訪問介護は、夜間に定期的な巡回訪問を行い、あわせて利用者からの通報を受けて随時駆けつけるサービスで、平成18(2006)年度に創設された。資料によると、介護報酬を請求している事業所は184か所、受給者は約7100人、費用額は約39億円にとどまる。請求事業所数は平成27年以降ほぼ横ばいで、受給者数は令和4年以降わずかに減っている。利用者の76.5%は基本分(通報を受け付けるオペレーションサービスの部分)だけの算定で、月に一度も訪問を受けていない人が多数を占める。

今年成立した社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)は、このサービスを廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護へ統合すると定めた。廃止の時期は第9期介護保険事業計画が終わる令和8年度末、つまり2027年3月末である。ただし第10期計画期間中の令和11年度末(2030年3月末)までは経過措置として、従来どおりのサービス提供を続けられる。

受け皿となる定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、日中と夜間を通じて訪問介護と訪問看護の両方を、定期巡回と随時対応で届けるサービスで、平成24(2012)年度に創設された。請求事業所は1397か所、受給者は約4万7100人、費用額は約995億円で、いずれも増え続けている。要介護3〜5の利用者が51.4%を占め、平均要介護度は2.7である。介護保険サービス全体の費用は介護サービスの費用、2025年度は12兆2208億円で4年続けて増加という規模で、定期巡回はそのうちのごく一部にあたる。

厚労省の対応案は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のうち訪問看護事業所と連携する類型(Ⅲ)について、必要に応じて24時間の通報・相談対応の機能を確保し、日中の支援を実施する事業所の取り組みを評価する報酬上の仕組みを新設するものだ。あわせて、新規に開設した事業所が地域の実情で利用者を確保できない場合に、訪問介護員などの人員配置基準を見直すことも検討する。地域密着型で月単位の定額報酬をとるサービスには新規開設時の配置基準の緩和があるのに、定期巡回にはその特例がないという指摘を踏まえた。

事業者の受け止めは一様ではない。厚労省が示した令和8年度の老人保健健康増進等事業の調査(125事業所、速報値)では、「夜間対応型訪問介護と統合する予定がないため影響はない」が60.0%で最も多く、「統合しても問題なく経営を継続できる見込みである」が12.0%、「課題はあるが経営を継続できる見込みがある」が17.6%だった。経営の継続が厳しい、または廃止の可能性があると答えた割合は、一般市町村が12.8%、中山間地域等が12.0%、都市部が6.6%である。

グループホームは3ユニットの夜勤2人体制を拡大、ケアマネ配置も緩和案

認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の高齢者が少人数の共同生活住居で介護や機能訓練を受けながら暮らす仕組みだ。介護給付費等実態統計の令和7年4月審査分では1万4233事業所、受給者は22.0万人、平均要介護度は2.64となっている。

夜間の人員配置は、3ユニットの事業所で原則3人以上の夜勤職員が必要とされ、一定の要件を満たす場合に例外として2人以上が認められているが、活用実績は限られている。対応案は、見守り機器などで夜間の状態把握と迅速な対応ができる体制を要件に、2ユニットが同じ階で隣接し別の階の1ユニットと一体的に運営されている場合や、同じ階に隣接していない3ユニットの場合についても、夜勤2人体制を可能とする内容である。令和8年度の老健事業の調査(120事業所)では、3ユニットの事業所は5.8%で、2ユニットが63.3%、1ユニットが28.3%だった。

介護計画をつくる計画作成担当者についても緩和案が出た。現在は事業所ごとに介護支援専門員(ケアマネジャー)を1人以上置くことが求められているが、人材確保が難しく経営状況も厳しい1ユニットの事業所に限って配置要件を見直すことを検討する。介護職の有効求人倍率が3.98倍に達している状況は令和8年版厚生労働白書を公表でも示されており、中山間・人口減少地域ではケアマネジャーの確保そのものが難しくなっている。

もう一つの論点は、グループホームを地域の認知症ケアの拠点として評価するかどうかだ。厚労省は認知症基本法と認知症施策推進基本計画の理念を踏まえ、入居者本人の能力や強みを生かしたボランティア参加の支援、若年性認知症の人への就労支援、本人による発信や社会参加の推進といった取り組みを報酬で評価する案を示した。

小規模多機能は軽度者の評価、看護小規模多機能は入浴の費用負担

小規模多機能型居宅介護(小多機)は、「通い」を中心に「訪問」と「泊まり」を組み合わせ、1事業所の登録定員29人以下で提供する。請求事業所数は令和元年度以降ほぼ横ばいで、直近は3年続けて減っている。収支差率は令和4年度3.5%、令和5年度5.2%、令和6年度6.0%と推移してきた。利用者の世帯構成は独居が約46%を占め、認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上の人が約37%に上る。

論点になったのは軽度者の扱いである。「通い」と「訪問」の利用回数のうち要介護1・2の利用者が占める割合は高く、比較的軽い段階から高い頻度でサービスが提供されている。一方で要介護度別に決まる基本サービス費の単位数は、要介護1・2が要介護3以上より低く抑えられ、その開きが大きい。厚労省は、軽度のうちからなじみの関係を築いて状態の変化に切れ目なく対応することが在宅生活の継続につながるとして、軽度者の状態維持や重度化防止に資する機能をどう評価するか、要介護度別の基本サービス費の在り方をどう考えるかを問いかけた。

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)では入浴が取り上げられた。機械を使った入浴設備がない事業所では、看取りの段階などで通所が難しくなった利用者から機械浴の希望があった場合、外部の訪問入浴介護を1回1万円以上、平均1万1376円を事業所が負担して使うことがある。対応案は、併せて算定できるサービスを見直すとともに、費用のすべてを事業所負担とせず、療養通所介護などの減算方法を参考に利用者の状態に応じて報酬を調整するというものだ。

高齢者住まいでの提供は4サービス共通の論点に

4つの資料すべてに、「住まいの形態に合わせたサービス提供に係る報酬の在り方」が共通の論点として並んだ。同じ建物に住む利用者への訪問は効率よくサービスを提供できるため、現在は同一建物減算で報酬を下げている。厚労省は、高齢者向けの住まいでのサービス提供の実態と事業所経営への影響を踏まえて、住まいの形態に合わせた提供の在り方をどう考えるかを示した。有料老人ホームについては有料老人ホームに登録制、厚労省が基準案のとおり、同じ改正法で都道府県などへの登録制度が導入される。

介護報酬の改定は3年に1度で、前回は令和6年度に実施された。今回示された論点のうち、訪問介護との連携促進、訪問看護の提供体制、高齢者住まいへのサービス提供、人口減少地域でのサービス提供体制の構築については、それぞれ別の回の分科会で説明と議論を行う予定だと資料に明記されている。