日本郵便は10月21日、総務省の情報通信審議会郵政政策部会 郵便局活性化委員会(第21回)に「生活サポートプラットフォームの取組」と題する資料を提出した。郵便局が地方公共団体や民間の団体から事務を請け負う取組の現状をまとめたもので、直近では500以上の地方公共団体から事務を受託し、2025年度の受託事務手数料は9億600万円になったとしている。2027年4月には大分県の別府市公会堂の指定管理者となり、公共施設の指定管理者として郵便局が指定を受ける初めての例になる。委員会は同日午後4時から開かれ、議事次第は「日本郵便株式会社へのヒアリング」だった。議事録は10月22日時点で掲載されていない。

自治体からの事務受託は500団体超、手数料は1年で2億1700万円増えた

資料によると、日本郵便が地方公共団体から受け取った受託事務手数料は、2025年度が全体で9億600万円だった。2024年度の6億8900万円から2億1700万円増えた。内訳は、毎年繰り返し発生する「恒常的事務」が5億2500万円(2024年度は4億1300万円)、マイナンバーカードの電子証明書に関連する事務が1億800万円(同3200万円)で、電子証明書関連の手数料は1年で約3.4倍になった。

受託先の数について、資料は「直近では、500以上の地方公共団体から事務を受託」と記す。中期経営計画「JPプラン2028」では年度目標を600団体に置き、受託実績のない団体にはまず1件の受託を、実績がある団体には受託する事務と受託局の拡大を、これまで以上に積極的に提案しているという。

営業の体制としては、全国3,288の郵便局に「地方公共団体担当局長」を置き、各団体との交渉と連携を担わせている。全国13の支社には「地方公共団体窓口担当」を、本社には「地域共創事業部 自治体連携事業室」を設けた。日本郵便が相手とする団体は都道府県47、市区町村1,741である。郵便局の持つ情報を行政の側が使う動きも別に進んでおり、国勢調査では配達原簿の活用が検討されている(国勢調査に郵便局の「配達原簿」活用へ 総務省が有識者会議を初開催 2027年の試験調査で検証)。

電子証明書の更新受付は93団体に、3年間で約5110万件の更新を見込む

受託事務のうち、日本郵便が重点を置くと明記したのがマイナンバーカード関連である。2021年度と2023年度の法改正などを受け、郵便局では「マイナンバーカードの電子証明書の発行・更新等の受付」と「マイナンバーカードの交付申請の受付等」の事務を取り扱えるようになった。

電子証明書は法制上5年ごと、カード本体は10年ごとに更新の時期が集中する。資料は総務省の資料から引いて、2025年度から2027年度までの3年間の想定更新件数を約5110万件としている。日本郵便はこの需要が続くと見て、電子証明書の発行・更新等の受付事務の受託拡大を図るとした。

マイナンバーカードの電子証明書の発行・更新等の受付事務を日本郵便に委託した団体数(団体)

025507510072022年度162023年度342024年度932025年度
2025年度の93団体の内訳は政令市・特別区が18、それ以外の市と中核市が45、町村が30出典: 情報通信審議会 郵政政策部会 郵便局活性化委員会(第21回)資料21-1(日本郵便、2026年10月21日)
数値で見る(単位: 団体)
項目団体
2022年度7
2023年度16
2024年度34
2025年度93

受託団体数は2022年度の7団体から、2023年度16団体、2024年度34団体と増え、2025年度は93団体になった。2025年度の内訳は、政令市・特別区が18団体、それ以外の市と中核市が45団体、町村が30団体である。実際に窓口で扱っている局の数では、令和8年6月末時点で97自治体・324局がカード関連事務を実施している。うち電子証明書の発行申請の受付等だけを扱うのが71自治体・241局、カードの交付申請の受付等だけを扱うのが3自治体・11局、両方を扱うのが23自治体・72局だった。

空き家調査から公会堂の運営まで 別府市では初の指定管理者になる

受託する事務の種類も広がっている。空き家調査は延べ11団体から受託した。内訳は三重県玉城町が4回、奈良県生駒市が2回(一部は調査方法が異なる)、山口県宇部市、静岡県伊豆市、茨城県取手市、秋田県男鹿市、長野県佐久穂町が各1回である。局員が腕章を着けて外観を目視し、建物の傾斜、屋根や外壁の破損、門または塀の傾斜、ゴミ・資材の放置や散乱、立木・雑草の手入れの有無などをタブレット端末に入力し、判断の根拠となる画像も撮る。このほか、過疎地域の集落支援員の事務、郵便局のスペースでオンライン診療を受けられるようにする支援事務も請け負う。

委託元は行政だけではない。2026年8月には「日本防災士会」からの受託を始めた。馬籠郵便局が支部会員の入会申込書の交付と入会・脱退のデータ入力を代行し、2027年4月以降は総会の会場手配や資料作成も担う。営農の広域組織については、農林水産省の本省から各地方農政局へ、郵便局との連携事例の周知と促進を求める通知が出ており、連携の意向がある組織は地方農政局経由で日本郵便に連絡が入る仕組みになった。

指定管理業務では、別府市公会堂の指定管理者に2027年4月から就く予定である。資料は、公共施設の指定管理者として郵便局が指定を受けるのは初めてだと記している。近隣の郵便局が施設内に移転し、局の業務と施設の管理業務を同じ場所で行う。公会堂は旧逓信省営繕課の吉田鉄郎が設計し、別府市の指定文化財になっている建物で、大ホールは約400席、開館日は年間358日、開館時間は午前9時から午後10時まで、年間利用者数は令和4年度が4万2286人だった。日本郵便が自ら担うのは会議室やホールの予約受付、利用料金の収納、別府市への報告、災害時の予約者への連絡などで、清掃や消防設備・エレベーター・舞台設備の保守点検、夜間受付は再委託する予定である。

買い物支援は38局でコンビニ商品、豊岡市では移動郵便車で10月23日から

買い物支援では、郵便局の客用ロビーに陳列棚と冷蔵商品用のショーケースを置き、ミニストップの取扱商品を試行販売している。対象は関東支社と、東北・関東・南関東・信越・北陸・東海・九州の各支社エリア内の計38郵便局で、食品・飲料・日用品など約70種類を扱う。支払いは交通系電子マネー、楽天Edy、WAON、iD、QR決済に限ったキャッシュレスで、セルフレジによる無人販売である。郵便局側の作業は週1回の発注、届いた商品の陳列、在庫と賞味期限の確認、販売可能期限が切れた商品の廃棄で、商品はゆうパックで配送される。

兵庫県豊岡市では、移動郵便車を使った買い物支援の実証を10月23日に始める。総務省の郵便局利活用推進事業の一環で、実証は1月末まで続く。但東中山郵便局長が移動郵便車を運転し、毎週金曜日に資母地域を回って地域スーパーから受け取った商品を販売し、空き家などの困りごとを聞き取って豊岡市に報告する。同じ日に走っている他社の移動販売を補う形で、衣料品と日用品を提供する。10月16日には社用車で試行した。

地域づくりの取組では、鉄道事業者と組んで駅の窓口と郵便局を一体化した拠点が8か所まで広がった。千葉県の江見駅郵便局・安房勝山駅郵便局・鵜原駅郵便局、栃木県の蒲須坂駅郵便局、仙台市の作並簡易郵便局、長野県の大屋駅郵便局、青森市の油川駅郵便局、岐阜県の坂祝郵便局である。局内の空きスペースは地域金融機関のATMやトランクルームに貸して収益にしており、建物の老朽化に悩む信用金庫の支店を郵便局内に移した例もある。書店のない市町村が全国で500弱あることを踏まえ、福島県の新地・鹿島・小高・浪江の4局では2026年7月22日から2027年3月31日まで児童書を試行販売している。7月22日から8月26日までの実績で、4局のうち1局が年間の販売指標額をほぼ達成し、残る3局も予想を上回ったという。シニア向けでは、終活の専門家を紹介する「終活日和」の受付数が2024年度の8535件から2025年度は1万257件へ1.2倍になり、空き家の現況を写真付きで所有者に報告する「郵便局の空き家みまもり」は前月比約10%増のペースで利用が増えている。

社員は民営化時から10万人減 改正法の「基盤的サービス提供業務」に広げる

こうした受託の拡大を日本郵便が急ぐ背景には、人と拠点の減少がある。資料に載った推移では、直営郵便局は民営化時(2007年10月1日)の2万241局から2026年3月末は2万93局になり、前年同月より40局減った。社員数は民営化時の41万8000人から2026年3月末は31万8000人へ10万人減った。正規社員は21万8000人から16万9000人、非正規社員は20万人から14万9000人である。資料は社員数が減少傾向にあると認め、施策の重点付けと業務の効率化、営業時間の柔軟な運用で持続的なサービス提供を目指すとした。

時点 直営郵便局数 社員数 うち正規 うち非正規
2007年10月(民営化時) 2万241局 41万8000人 21万8000人 20万人
2012年10月(統合時) 2万240局 39万8000人 20万8000人 19万人
2022年3月末 2万145局 36万人 19万2000人 16万8000人
2023年3月末 2万142局 33万6000人 17万6000人 16万人
2024年3月末 2万143局 33万人 17万2000人 15万8000人
2025年3月末 2万133局 32万5000人 17万人 15万5000人
2026年3月末 2万93局 31万8000人 16万9000人 14万9000人

表: 直営郵便局数と社員数の推移 出典: 情報通信審議会 郵政政策部会 郵便局活性化委員会(第21回)資料21-1(日本郵便、2026年10月21日)

本業の郵便は縮小が続いており、日本郵便は同じ委員会の第20回(9月28日)に、配達頻度や送達日数、ポストの本数の見直しを検討していると説明している(郵便の配達頻度・送達日数・ポスト本数、日本郵便が見直し要望を検討 郵便物は2001年度263億通から2025年度118億通へ55.1%減 営業損益は4年連続の赤字)。民間事業者による信書便も、20年余り「郵便の代わり」は現れていない(信書便の民間参入が647者で過去最多 ただし「郵便の代わり」は20年余ゼロ 伸びたのは大型のみで3時間便は8.0%減)。

受託業務を広げる法的な足場として、資料は「改正法」と中期経営計画の関係に1章を割いている。日本郵便会社法第2条第5項の「基盤的サービス提供業務」は、①国、地方公共団体、基盤的サービス提供事業者の委託を受けて、②郵便の業務、銀行窓口業務、保険窓口業務に係る経営資源を活用して行う、③公共サービスその他地域住民が日常生活・社会生活を営む基盤となるサービスの提供、と定義されている。資料は、中期経営計画に掲げた生活サポートプラットフォームの取組にはこの定義に当てはまるものが多いとし、改正法の成立と施行を踏まえて新たな基盤的サービス提供業務の開発と拡大に取り組みたいとした。対象は委託元も契約の種類も限定せず広く捉える方針で、委託元として国、地方公共団体、地域金融機関、鉄道事業者、医療機関、地域観光団体、地域支援団体を、契約として準委任契約、請負契約、不動産賃貸借契約を挙げた。

社内への浸透も進めており、8月28日には全国統括局長会議を臨時に開き、全国の統括局長に基盤的サービス提供業務の重要性を説明した。地域共創分野の局長会議は例年の倍以上開く予定で、支社長会議でも対応の方向性を協議している。環境整備として挙げたのは2点ある。1点目は窓口営業時間の弾力化で、社員数が減る中で地域の事情や客の要望に応じて窓口の営業時間を柔軟に運用する必要があるとした。2点目は簡易郵便局での受託である。簡易郵便局は日本郵便から業務を受託して運営されているが、現在その受託業務に基盤的サービス提供業務に当たるものは含まれておらず、一部の受託者が地方公共団体から直接受託している状態だという。日本郵便は、この実例も踏まえて簡易郵便局で基盤的サービス提供業務を実施できる体制を速やかに整えるとした。