公明党は10月15日、参院議員会館で政務調査会(中野洋昌会長)の全体会議を開き、政府が国会に提出した飲食料品の消費税減税関連法案の対案として、国民への「給付」を提案していく方針を決めた。政府案と同じ約10兆円を使う場合の一案として、2年間で国民1人当たり約8万円を給付する。党の機関紙・公明新聞が16日に伝えた。岡本三成代表は13日夜のBSフジの番組で、法案に支援金の対象者と給付額が書かれていないとして「このままでは賛成できない」と述べ、14日の中央幹事会では、法案への対応を「党内で議論し、方向性を決めていきたい」と語っていた。

政調全体会議で対案を決定 「2年間限定の減税は非効率」

公明新聞によると、全体会議では、来年4月から2年間に限って飲食料品の消費税率を1%に下げ、所得に応じて支給額を変える「就業者負担軽減支援金」を導入する政府案について議論した。

冒頭、岡本代表は「物価高対策は、生活者、家計を支援していくという目的に沿ったものになっているかが最も大切だ」と述べた。政府案に約10兆円が必要になることについては、「納税者からお預かりしたお金の使い道として適切な手段になっているか」が重要だとした。

中野政調会長は、政府案ではレジの改修に加え、農林漁業者や外食産業への影響など事業者の負担が大きく、それを支える追加の支出も必要になるため非効率だと指摘した。減税分のすべてが小売価格に反映されるとは限らないうえ、2年後に税率が戻る「大増税」は家計に深刻な影響を与えるとも主張した。

そのうえで、より早く確実に家計に届く物価高対策の一案として、2年間で1人当たり約8万円の給付を示し、意見交換を経て政府案の対案として提案していくことを決めた。会議の後、中野氏は記者団に「選択肢として、何があり得るのかということを国民の皆さまにも分かりやすく提起したい」と述べた。給付の時期や配り方など、対案の細部は公明新聞の記事には書かれていない。

政府案は2027年4月から 支援金の額は政令で

政府が10月9日に第222回国会(臨時国会)へ提出した法律案の概要(内閣官房・財務省)によると、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を国税分0.78%、地方消費税と合わせて1%とする。現在の軽減税率は8%で、減収する地方消費税の分は地方特例交付金で補う。施行日は2027年4月1日。

就業者負担軽減支援金は、勤労所得が一定額を超え、合計所得が一定額以下であることなど四つの要件に当てはまる人に毎年1回支給する。ただし、要件となる所得の線引きも支援額も「政令で定める額」とされ、法律の条文には数字がない。費用は国が3分の2以上を持ち、残りを都道府県と市区町村が半分ずつ負担する。財源は「特例公債に頼ることなく、歳出・歳入全般の見直しにより確保する」としている。

法案の中身と提出の経緯は「食料品消費税1%と支援金の法案、国会に提出 支援金の額と所得の線引きは政令に委ねる」で詳しく伝えた。政府案と公明の対案を並べると次のようになる。

項目 政府案(法律案) 公明の対案
中心となる手段 飲食料品の消費税率を1%に 国民への給付
時期 2027年4月から2年間 公明新聞の記事に記載なし
対象・金額 支援金の対象と額は政令で定める 2年間で1人当たり約8万円
規模 公明党は約10兆円とする 政府案と同じ約10兆円を想定

岡本代表「法案に対象者と給付額が書いていない」

公明新聞によると、岡本代表は13日夜のBSフジ「プライムニュース」で、政府案は「物価高対策の手段として確立されていない」と述べた。足元の生活が苦しいのに実施は来年4月からだと指摘し、新型コロナウイルス禍でドイツが同じような減税をした際、恩恵が事業者にとどまり消費者まで回らなかったという調査もあったと紹介した。

また、10兆円で一律給付をすれば国民全員が1人8万円、4人家族なら32万円を受け取れると説明した。所得に連動した給付制度については「法案には対象者と給付額が書いていない」とし、「『この商品を買ってください。価格は後で政令で決めます』と言われても買うかどうかを決められない」と例えた。中身が明らかになれば議論の余地はあるが、減税と一つの法案に束ねて出てきているため、このままでは賛成できないと述べた。

支援金の数字が見えない点は、13日の衆院予算委員会でも公明党の中野氏が取り上げていた(「公明、衆院予算委で支援金の「具体化」迫る 社会保険で手取り差、申告なしで反映を提案」)。

中央幹事会では日銀調査を引用 「ゆとりない」54.4%

岡本代表は14日午後、東京都新宿区の党本部で開いた中央幹事会のあいさつで、日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」を挙げ、生活にゆとりがなくなってきたと答えた人が54.4%に上り、その9割以上が物価の上昇を理由にしたと述べた。

日銀が10月13日に公表した第107回調査(8月3日〜9月4日に実施、有効回答1,972人)で確かめると、1年前と比べた暮らし向きで「ゆとりがなくなってきた」と答えた人は54.4%で、6月の前回調査の55.0%からわずかに下がった。「ゆとりが出てきた」は4.5%。ゆとりがなくなってきたと答えた人に理由を尋ねた質問では、「物価が上がったから」が91.4%だった。1年前と比べて物価が何%変わったと感じるかの平均は16.2%上昇で、1年後の物価についても『上がる』と答えた人が8割台後半を占めた。物価高の実感が続くなかで、減税と給付のどちらが早く家計に届くかが、政府案をめぐる論点の一つになっている。

岡本代表は、NHKの世論調査で消費税減税などの政府の物価高対策に反対が賛成を上回ったことにも触れ、「本当に驚いた」と述べた。反対の理由として、財源が不明確なまま実施だけを先に決めたことや、過度な円安で物価がさらに上がる懸念、ゆとりのない状況を直接改善する手法を望む声があると挙げた。同じあいさつでは、栃木県那須烏山市と那珂川町の道路予算が減った問題にも触れ、「国民の皆さんが納得するまで、しっかり解明していくことが必要ではないか」と述べた。

恒久減税を掲げてきた公明 法案への賛否は党内で判断

公明党は、法案が出る前から政府の方針に否定的だった。岡本代表は10月3日の第18回全国大会で代表に選ばれた際のあいさつで、2年間限定の食料品1%案を「物価高対策としてはあまりに非効率」と批判し、「いま求められるのは即効性ある具体策」と訴えた(「公明党の新代表に岡本三成氏 第18回全国大会で選出」)。

一方で同じあいさつでは、消費税率の引き下げは一時的な物価高対策ではなく、「『生きるための食』を支える福祉政策として、財源を確保した上で恒久的に引き下げるべき」とも述べている。今回の対案は、物価高対策としては減税より給付の方が早く確実だという主張で、税率を下げること自体を否定したものではない。

政府は、減税と支援金を一つの法律案にまとめて提出した。公明党は、支援金の対象と額が示されれば議論の余地があるとしており、法案に賛成するか反対するかは決めていない。岡本代表は14日、「国民の皆さんが最も期待し、最も望む形の物価高対策を党内で議論し、方向性を決めていきたい」と述べている。