国土交通省は9月28日、10月と11月を荷主・元請事業者に対する「集中監視月間」と位置づけ、「トラック・物流Gメン」による監視を強めると発表した。全トラック事業者と倉庫業者を対象にした実態調査や関係省庁からの情報をもとに、適正な取引を妨げるおそれのある行為をした荷主らに是正指導を行う。今回は公正取引委員会と中小企業庁が地方レベルで加わり、無許可で有償の運送を請け負う「白トラ」への委託を防ぐために警察とも連携する。公取委も同じ日に、3機関による「物流分野取引適正化地方ブロック連絡会議」の立ち上げを発表した。
荷待ち、契約にない附帯業務、運賃の据え置きが対象
国交省が是正指導の対象に挙げるのは、貨物自動車運送事業法(トラック法)にいう「違反原因行為」である。具体的には、長時間の荷待ち、契約にない附帯業務、運賃・料金の不当な据え置き、過積載運送の指示・容認、異常気象時の運送依頼、無理な運送依頼の6類型が示されている。疑いが認められた荷主らには、働きかけ、要請、勧告のいずれかを行う。
これとは別に、今年1月に施行された取適法の禁止行為(支払遅延、代金の減額、買いたたき、報復措置、協議に応じない一方的な価格決定など)の疑いがある場合は、助言または指導を行う。トラック法と取適法という2本の法律を、同じ監視の中で使い分ける形である。
警察との連携は、物流センターや卸売市場での周知・啓発が中心となる。トラック法に基づく違法な「白トラ」への運送委託に関与した疑いがある荷主らには、要請または勧告を行う。
地方の出先機関どうしをつなぐ会議を新設
公取委が発表した連絡会議に入るのは、公取委の地方事務所等、経済産業省の地方経済産業局等(中小企業庁)、国交省の地方運輸局等の3系統である。地域ブロックごとに、取適法違反が疑われる事案の調査手法や執行方針について意見交換する。10月上旬に各地で開き、あわせて荷主の営業所や物流拠点を回る合同荷主パトロールの出発式を行う。開催日や場所は、それぞれの地方機関が個別に公表する。
公取委と国交省は昨年10〜11月の集中監視月間でも合同の荷主パトロールを行っており、そこに中小企業庁が加わって常設の会議体になった形だ。意見交換や合同調査で課題が生じた場合は、公取委本局・中小企業庁・国交省本省の3者が調整し、その結果を全国に戻す。
10月16日には、国交省と公取委の幹部による講演と対談を含むハイブリッド形式の説明会も開かれる。
昨年度は105名に立入調査、779名に注意喚起
3機関が手を組む背景には、荷主と物流事業者の取引に問題が広く残っている実態がある。
公取委が6月25日に公表した令和7年度の調査結果によると、荷主と物流事業者にアンケートを行ったうえで、労務費や燃料費などの上昇分を取引価格に反映させる協議をしないまま価格を据え置いた疑いなどのある荷主105名に立入調査を実施した。その結果、独占禁止法上の問題につながるおそれのある行為をした荷主779名に、懸念事項を具体的に示した注意喚起文書を送っている。
業種別では「建築材料、鉱物・金属材料等卸売業」「食料品製造業」「飲食料品卸売業」「協同組合」への送付が多かった。行為の種類では、「不当な給付内容の変更及びやり直し」「代金の支払遅延」「買いたたき」の順に多かった。
価格転嫁が通りにくい状況は物流に限らない。公取委が9月に公表した石油関連製品の緊急調査でも、石油関連製品の値上げ要請、通ったのは48.3% 公取委の緊急調査 三次受注者以降は45.4% 発注者59名に注意喚起という結果が出ている。
1月の法改正で運送の委託が規制対象に、来年4月には着荷主も
監視の道具立ては、この1年で相次いで変わった。
今年1月1日に施行された取適法は、下請法は今年1月に「取適法」へ 施行後の勧告14件のうち9件は「金型の保管費用」 トリドールには1億4741万円の返還指示のとおり下請法を改めたもので、運送を委託する「特定運送委託」が新たに規制対象の取引に加わった。あわせて、事業を所管する省庁も委託事業者に指導・助言ができる規定が設けられた。国交省や中小企業庁が公取委と同じ土俵に立てるようになったのは、この改正による。
施行後の適用例も出ている。公取委が7月10日に勧告したミネベアアクセスソリューションズの事案では、自動車部品などの製造委託に関する違反に加え、運送を委託した中小受託事業者1名に、今年1月から4月までの間、計546時間26分の積み込み・取り卸しと附帯業務を、費用を負担しないまま行わせたとして取適法の条文が適用された。5月12日に勧告を受けた琉球倉庫運輸の事案も、貨物運送の委託で運賃を減額したものである。
さらに、荷主と物流事業者の取引を独占禁止法で規制する「物流特殊指定」も、今年6月に改正され、来年4月1日に施行される。改正では、荷物を受け取る側の「着荷主」が、荷物を出す側の「発荷主」に対して行う特定の行為が、新たに規制の対象に加わる。これまでは荷物を出す側と運ぶ側の関係だけを見ていたが、その手前にいる受け取り側の指示が運送現場の負担を生んでいる、という構図にも規制が届くことになる。今回の3機関連携は、その施行に向けた地ならしでもある。
