日本経済団体連合会(経団連)は10月13日、「主要政党の政策評価 2026」と「政治との連携強化に関する見解」を公表した。自由民主党を中心とする与党について「大きな成果を上げてきた」「高く評価できる」と評価した。政策評価の与党欄には自民党と日本維新の会を載せ、前年の2025年版で与党欄にあった公明党は、国民民主党、立憲民主党、参政党と並ぶ野党欄に移った。見解では、会員企業・団体に政党への政治寄附を呼びかける方針を、前年と同じ文言で示した。

経団連の「政策評価」とは 事業方針に照らして与党を採点

政策評価は、経団連がその年度の事業方針を物差しにして、与党の政策の実績と課題を点検する文書だ。2026年版の冒頭は、6月3日に決めた2026年度事業方針「『投資牽引型経済』を確立し、力強い成長を生み出す」に基づき、「自由民主党を中心とする与党の政策(実績ならびに課題)の評価を行った」と説明している。あわせて「主な野党についても主張・実績を検証した」としている。

構成は「与党」「野党」「今後の課題」の3部だ。与党の部は、事業方針の項目ごとに経団連の主張と政府・与党の「実績等」を左右に並べた表になっている。野党の部は、各党の掲げる政策と、実現に結びついた実績を分野別に書き出している。

同じ日に出した「政治との連携強化に関する見解」は、政策評価の結論部分と、政治資金についての経団連の考え方、会員企業への寄附の呼びかけをまとめた短い文書だ。2025年も政策評価と見解は同じ10月14日に公表しており、2本を対で出す形は今年も変わっていない。

与党全体への評価は次の一文にまとまっている。「自由民主党を中心とする与党は、高市総理の掲げる『強い経済』の実現に向けて、2026年度予算や各種法案を成立させたほか、官民一体での国内投資拡大に向けた具体的な道筋を明示するなど、大きな成果を上げてきた。また、主要国との積極的な外交も展開しており、高く評価できる」。

与党欄に自民と維新 公明は野党欄へ

2025年版と2026年版で、各党を載せた欄は次のように変わった。

欄 2025年版(2025年10月14日) 2026年版(2026年10月13日)
与党 自由民主党、公明党 自由民主党、日本維新の会
野党 立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、参政党 国民民主党、公明党、立憲民主党、参政党

与党全体への評価の書きぶりも変わった。2025年版は与党について「少数与党での難しい政権運営が求められるなか、『熟議の国会』を通じ、野党との丁寧な政策協議と合意形成を重ね」と書き、末尾で「自由民主党・公明党の両党を中心に、安定した政治の態勢が確立されることを強く期待する」と結んでいた。2026年版の見解にはこの一文が無く、「政治には、民意を適切に反映しつつ、強力なリーダーシップを発揮し、重要政策を迅速かつ着実に推進することが求められる」で結んでいる。

与党欄の維新については、飲食料品にかかる消費税の2年間ゼロを掲げていること、即時償却を含む設備投資促進税制の創設を掲げて「その実現に結びつけた」ことを挙げた。社会保障では、現役世代の社会保険料負担の引き下げに向け、社会保障負担率の数値目標の設定や、高齢者の医療費窓口負担の原則3割化などを強く主張しているとし、今後の改革の骨子を自民党と合意して「骨太方針2026」にも反映させたと書いている。

自民党の「実績」 投資枠、食料品の消費税、原子力

自民党の欄で経団連が実績として挙げた主な項目は次の通り。

  • 予算編成改革で、複数年度の計画に基づく『「強く豊かな日本」投資枠』を創設し、補正予算依存からの脱却を掲げた
  • 財政運営の目標として、国・地方の総債務残高対GDP比の安定的な低下を中核に位置付けた
  • 「社会保障国民会議」での議論を経て、「所得に連動したきめ細やかな給付」の創設と、その導入までのつなぎとして2年間に限った食料品の消費税率引き下げを打ち出した
  • 「骨太方針2026」で、2029年度までの間に実質賃金で年1%程度の上昇を賃金引き上げの「ノルム」(当たり前の水準)として定着させる考えを掲げた
  • 防災庁設置法を成立させた
  • 経済界の意見を踏まえる形で経済安全保障推進法を改正した
  • 原子力について、再稼働の加速と既存炉の最大限活用、次世代革新炉の開発・設置の方針、2040年代・2050年代までに必要な設備容量と建て替え基数の見通しを明記した

外交では、経済界が同行する初の外遊先にインドを選んだことや、マレーシア、南アフリカ、ベトナムの訪問を挙げ、グローバルサウスとの連携強化に取り組んでいるとした。

「今後の課題」には、原子力発電所の再稼働の加速、債務残高対GDP比の安定的・継続的な引き下げ、裁量労働制の拡充、エビデンスに基づいた外国人政策の推進などを並べた。前年版でも課題としていた選択的夫婦別姓は、今回も「選択的夫婦別姓の実現をはじめとする多様な人材の活躍推進」として残っている。

野党4党は「掲げる政策」の列挙 実績に触れたのは国民民主党

野党の部は、評価の言葉を添えず、各党の政策を分野ごとに書き出す形だ。2025年版は野党の部の冒頭に「一部の政策が政府・与党の打ち出した法案・予算案を修正する形で反映された」と書いていたが、2026年版は「主な野党の掲げる政策・実績は以下の通りである」とだけ記している。

国民民主党については、所得税の基礎控除などの見直しを掲げ、控除額を178万円へ引き上げる改正に「結びつけた」と、実現した成果として書いた。ほかに「社会保険料還付制度」の導入、原子力の再稼働・建て替え・新増設や核融合などによるエネルギー自給率50%の実現、年5兆円の「教育国債」による教育・科学技術予算の倍増を挙げた。

公明党は、消費税の食料品の軽減税率の恒久的な引き下げ、物価上昇などに応じて基礎控除などを適時に引き上げる仕組みの構築、全国の避難所や防災拠点への再生可能エネルギー・蓄電池の導入率100%、平和外交の強化、専門高校の機能強化を掲げているとした。

立憲民主党は、医療・介護・保育・教育などの「ベーシックサービス」の拡充、すべての原子力発電所の速やかな停止と廃炉決定、2030年の再生可能エネルギーによる発電割合50%、国公立大学の授業料無償化を掲げているとした。参政党は、消費税の廃止をはじめとする減税や社会保険料の削減による国民負担率35%への抑制、再生可能エネルギーに偏った政策の是正、0〜15歳の子ども1人あたり月10万円の教育給付金などを挙げている。

政治寄附の呼びかけは前年と同文 八幡製鉄判決を引く

見解の後半は政治資金を扱う。経団連は「民主主義を適切に維持していくためには、相応のコストを要する」とし、2003年1月の「奥田ビジョン」で示した考え方を改めて引いた。政党の資金は党員からの会費・事業収入を最も重視し、それに準ずるのが民間からの自発的な寄付で、公的助成は「あくまでもこれらを補完するもの」という位置づけだ。国から政党への公的助成には政党交付金がある(政党交付金の使い道、2025年分の支出は357億7159万円で3.0%減 本部の政治活動費は23.4%増・支部は24.7%減 総額315億円は「人口×250円」でほぼ固定)。

企業による寄附については、1970年6月24日の八幡製鉄政治献金事件の最高裁大法廷判決を注で引き、会社が政党の健全な発展に協力することは「社会的実在としての当然の行為として期待される」とした部分を示した。そのうえで、経団連の呼びかけを踏まえた企業・団体の寄附は政党の政治資金団体を窓口に行われ、「特定の利益誘導を図るようなものではない」と書いている。政治資金のあり方では「透明性の向上が何より不可欠」とし、政治資金規正法の改正が重ねられてきたと触れた。

結論として、経団連は会員企業・団体に対し、「自主的な判断に基づき」、自由主義経済のもとで企業の健全な発展を促し、国民生活の向上に資する政策を進める政党への政治寄附を実施するよう呼びかけ、政党の政策評価も続けるとした。この呼びかけの文言は、2025年10月14日の見解と同じだ。

見解は寄附先の政党を名指ししていない。寄附はあくまで会員の「自主的な判断」によるとしたうえで、寄附の呼びかけと政策評価の実施を同じ一文に並べている。与党を「高く評価できる」とした政策評価は、その呼びかけと同じ日に公表された。経団連がどの党をどの欄に置き、どう書いたかは、企業・団体献金のあり方を考えるうえで、経済界側の考え方を示す一次資料になる。