政府の火山調査研究推進本部に置かれた火山調査委員会は10月19日、第11回の会合を文部科学省で開き、全国111の活火山すべてについて活動の現状を評価した「111の活火山の現状の評価」を公表した。7月から8月に小規模な噴火が3回発生した北海道の十勝岳については、今の活動が続く場合「同程度もしくは一回り大きな小規模噴火の発生が懸念される」とし、マグマ噴火へ移行する可能性にも言及した。あわせて、年明けの委員会で重点的に評価する火山として、十勝岳、北海道駒ヶ岳、吾妻山(福島県)、阿蘇山(熊本県)の4火山を選んだ。

日本地図上に全国111の活火山の位置を赤い三角で示した分布図
全国111の活火山の分布(気象庁「活火山とは」掲載の図、2026年10月21日閲覧)出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kazan/katsukazan_toha/katsukazan_toha.html)

十勝岳 小規模噴火が3回、マグマ噴火へ移行する可能性も

評価によると、十勝岳では噴気活動の活発化、火山ガス(二酸化硫黄)放出量の増大、山体の膨張が続く中で、7月22日と8月5日、6日に62-2火口付近からごく小規模な噴火が3回発生した。いずれも火口周辺への火山岩塊の放出は確認されず、ごく短期間で終息している。

火山ガスの放出量は、2023年3月に1日あたり900トンを観測した後は数百トン程度で推移していたが、今年4月下旬と6月上旬の観測で1日あたり1,000トンを超え、7月にはさらに増えて2,000トンを上回った。3月以降は山体付近の深さ数キロの膨張を示唆する地殻変動が認められ、9月12日にはマグニチュード1.8の火山性地震も発生した。

委員会は「現在の活動傾向が継続する場合には、引き続き同程度もしくは一回り大きな小規模噴火の発生が懸念される」とし、「山体の膨張が継続し、有感地震が発生する状況となれば、マグマ噴火へ移行する可能性もある」と評価した。十勝岳を巡っては、気象庁が9月12日に噴火警戒レベルを3(入山規制)へ引き上げており(十勝岳、噴火警戒レベル3に引き上げ 火口から3キロは大きな噴石に警戒 8月中旬から揺れの大きい地震が増加)、10月21日時点のレベルは2(火口周辺規制)となっている。委員会も9月16日に臨時の会合を開き、十勝岳単独の評価を取りまとめていた。

北海道駒ヶ岳は9月下旬から地震が増加 吾妻山は噴気の温度上昇

北海道駒ヶ岳では、9月23日から山頂火口原の浅い場所(深さ0〜1キロ付近)で地震が増え、26日以降は浅部の膨張を示すと考えられる傾斜変動を伴った。10月2日には傾斜変動の進む速さが増して地震回数がさらに増加し、3日以降、地震は減ったものの傾斜変動は緩やかに続いている。委員会は、火口周辺の熱活動は低調だとしつつ、今後さらに明瞭な浅部の膨張や地震の増加、火山性微動が観測される場合には「山頂火口原内で小規模な噴火が発生する可能性がある」とした。北海道駒ヶ岳は1640年の噴火で山体崩壊と大規模な噴火を起こした歴史を持ち、2000年まで水蒸気噴火を繰り返してきた火山だ。

吾妻山では2022年から2023年にかけて、地震の増加や地殻変動を伴う火山活動の活発化が認められた経緯がある。今回の評価は「概ね静穏」としたうえで、今年に入って一部の噴気で温度の上昇が確認されたほか、4月から大穴火口周辺の隆起によると考えられる緩やかな傾斜変動が観測され、5月以降は火山性地震もわずかに増えていると指摘した。吾妻山では1893年以降、大穴火口の周辺で水蒸気噴火が繰り返し発生している。

阿蘇山はマグマの蓄積が進行 地熱域は300〜400度に

阿蘇山では、今年5月頃から草千里付近の深部にあるマグマだまりへのマグマの蓄積を示唆する地殻変動が認められている。火山ガスの放出量は1日あたり1,000トン未満の少ない状態から、6月下旬以降は1,500トン前後とやや多い状態となり、8月中旬には2,700トンへ一時急増した。

中岳第一火口にたまる「湯だまり」の量は約8割で推移していたが、5月以降は約6〜7割に減り、表面温度は70度程度まで上がった。6月22日未明には噴出物が火口内に飛び散る土砂噴出が発生し、その後も高さ5メートル未満の土砂噴出が時々確認されている。南側火口壁の地熱域の最高温度は100度を下回っていたが、2月頃から上昇に転じ、4月以降は300〜400度程度で推移している。委員会は、こうした状態が続く場合には「中岳第一火口において、小規模な噴火が発生する可能性がある」とし、その場合のハザードとして火山岩塊の放出を含む火砕物の噴出と火砕流を想定した。

年明けに4火山を重点評価 噴火警報は全国12火山に発表中

重点的に評価する火山に選ばれた4火山は、年明けの火山調査委員会で詳しい現状評価の対象となる。選定した以外の火山でも、活動に変化がみられた場合には委員長の判断で対象に追加することがあるとしている。前回(令和7年度)は雌阿寒岳、十和田、草津白根山、三宅島、霧島山の5火山が選ばれ、今年2月の会合で個別の評価が公表された。

気象庁によると、10月21日時点で噴火警報が発表されている火山は全国に12ある。年明けの重点評価の対象となる4火山のうち、十勝岳、北海道駒ヶ岳、阿蘇山の3火山には噴火警戒レベル2(火口周辺規制)の噴火警報が発表されている。噴火警戒レベルは1から5までの5段階で、レベル2は「火口周辺への立入規制等」、レベル3は「登山禁止や入山規制等危険な地域への立入規制」が必要な段階にあたる。最も高いレベル5は、危険な居住地域からの避難などが必要な段階だ。

火山 噴火警戒レベル・キーワード
桜島 レベル3(入山規制)
雌阿寒岳、十勝岳、北海道駒ヶ岳、阿蘇山、霧島山(新燃岳)、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島 レベル2(火口周辺規制)
西之島、硫黄島 火口周辺危険
須美寿島、福徳岡ノ場 周辺海域警戒
噴火警報が発表されている火山(2026年10月21日時点)出典: 気象庁「火山登山者向けの情報提供ページ」

火山調査委員会とは 法改正で2024年に発足、全体評価は3回目

火山調査研究推進本部は、活動火山対策特別措置法の改正に伴って2024年4月に発足した国の組織で、火山に関する観測・調査・研究を一元的に推進する。その下に置かれた火山調査委員会が、火山活動の評価を担っている。活火山は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定義され、2017年に111火山となった。本部の発足時にも、当面はこの111を活火山とすることが確認されている。

111火山をまとめて評価した結果の公表は、2024年9月、2025年10月に続いて今回が3回目で、ほぼ年1回のペースとなっている。評価は火山ごとに過去の噴火の経緯と直近1年ほどの観測状況を記述するもので、活動の高まりが指摘された火山がある一方、多くの火山は「静穏に経過している」などとされた。国の防災対策全体の現在地は防災の全体像 南海トラフの想定死者は最大29.8万人、10年前の「8割減」目標に届かずにまとめている。