厚生労働省は10月22日、病院の機能再編を国が集中的に支援する「重点支援区域」に、北海道の西胆振構想区域を新たに選んだと発表した。医療機能の再編などの検討対象になるのは、市立室蘭総合病院、製鉄記念室蘭病院、日鋼記念病院の3病院である。室蘭市はすでに、市立室蘭総合病院の高度急性期・急性期機能などを製鉄記念室蘭病院へ統合し、令和9年度中を目途に病院事業そのものを閉じる方針を市議会で表明している。重点支援区域の選定は令和2年(2020年)に始まり、今回を含めて14道府県28区域になった。

選ばれたのは西胆振構想区域 対象は室蘭市内の3病院

厚労省は発表で「10月22日、地域医療構想の実現に向け、国による助言や集中的な支援を行う『重点支援区域』に以下の区域を新たに選定しました」とし、北海道の西胆振構想区域を挙げた。あわせて示された「医療機能再編等の対象となる医療機関名」は、市立室蘭総合病院、製鉄記念室蘭病院、日鋼記念病院の3病院である。

構想区域は、都道府県が地域医療構想を定める単位で、二次医療圏を基本に設定される。北海道は21の構想区域を置いており、西胆振はそのうちの一つだ。市立室蘭総合病院の経営強化プランによると、西胆振圏域は室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、洞爺湖町、壮瞥町の6市町で構成される。今回の選定で対象となった3病院は、いずれも室蘭市内にある。

重点支援区域は都道府県が申請する。厚労省の別添資料は、都道府県が「当該区域の地域医療構想調整会議において、重点支援区域申請を行う旨合意を得た上で」申請を行い、厚労省が選定すると定めている。申請は随時募集されており、厚労省は今後も選定を行う予定だとしている。

国の支援は技術的支援と基金の優先配分

重点支援区域に選ばれた区域が受けられる支援は、技術的支援と財政的支援の2本立てになっている。別添資料によると、技術的支援は、地域の医療提供体制や、医療機能再編などを検討する医療機関に関するデータ分析と、関係者との意見調整の場の開催である。財政的支援は、地域医療介護総合確保基金の優先配分と、病床機能の再編支援を「一層手厚く実施」することが挙げられている。

地域医療介護総合確保基金は都道府県ごとに置かれ、医療と介護の提供体制づくりに充てる基金だ。重点支援区域に選ばれることは、この基金の配分で優先される立場になることを意味する。

一方で、選定が再編の結論を決めるわけではない。別添資料は「重点支援区域の申請または選定自体が、医療機能再編等の方向性を決めるものではない」と明記し、選定された後も結論は「あくまでも地域医療構想調整会議の自主的な議論によるもの」だと念を押している。9月18日に選ばれた岡山県の高梁・新見構想区域についても、同じ枠組みが説明されていた(重点支援区域とは 病院再編を国が支援、岡山・高梁新見が27区域目 新見市3病院231床が対象)。

重点支援区域の選定は令和2年の北海道(南空知区域、南檜山区域)などから始まり、令和8年は岡山県の高梁・新見区域と今回の北海道・西胆振区域が選ばれた。別添資料の記載は「これまでに以下の14道府県28区域の重点支援区域を選定」に更新されている。

市立室蘭総合病院は令和9年度中を目途に統合、病院事業を閉じる

西胆振区域の再編は、国の選定を待たずに室蘭市が方針を決めている。令和8年2月26日の第1回市議会定例会で市長が行った市政方針説明は、「市内3総合病院の目指す方向性について、関係者間の合意を得た」とした上で、市立室蘭総合病院について「現在、提供する医療サービスのうち、移管可能な医療サービスは地域の医療機関へ移管し、高度急性期・急性期機能等については製鉄記念室蘭病院への統合を目指します」と述べた。

時期については「市立室蘭総合病院の経営状況を踏まえ、令和9年度中を目途とし、統合後、病院事業を閉じる決断に至りました」としている。市立病院の機能を他の病院へ移すだけでなく、市が営む病院事業という会計そのものを終えるという意味である。

理由として市政方針説明が挙げたのは、医療提供体制の持続可能性と、市の財政である。「病院事業会計の経営状況は、数年の間に室蘭市が財政再生団体に転落する危機的な水準であり、住民サービスの提供に深刻な影響が生じることを何としても避けるため」と説明した。令和8年度予算の編成では「病院事業会計における経営健全化基準超過の回避が最大の課題」として、一般会計からの緊急的な追加支援を決めたとしている。病院事業を閉じる際には残された債務が一般会計の将来負担になることから、公共施設や受益者負担の適正化、ふるさと納税の拡充に加え、新たに宿泊税の導入検討を進めるとも記した。

市立室蘭総合病院の規模は、経営強化プランの素案によると許可病床527床(一般379床、結核24床、精神120床、感染症4床)で、診療科目は内科や外科、産婦人科、小児科など22診療科。市立室蘭みなと診療所を附属診療所として持つ。同院の病院事業管理者は市立病院のサイトで「現在、室蘭市において地域医療体制の再編について協議が進められています」「今回の協議は、地域医療を将来にわたり安定して継続するためのものです」と住民に説明している。

3病院の役割分担は令和6年11月に同意済み

国の選定に先立つ合意は、北海道の調整会議にも報告されている。令和6年度の西胆振区域地域医療構想調整会議に室蘭市が出した資料「室蘭市内3病院の統合・再編等について」は、「第2次中間取りまとめを基本とした『医療機関体制の考え方』」(令和6年11月)として、地域ごとの役割分担を次のように整理している。

地域 中心となる医療機関 目指す姿
東室蘭地域 製鉄記念室蘭病院 主に高度急性期、急性期医療や救命救急における二次医療圏の拠点として、同院を受け皿に段階的な集約化を図る
蘭西地域 日鋼記念病院、市立室蘭総合病院 比較的軽度な急性期医療のほか、主に回復期・慢性期機能、在宅医療・介護との連携を図る医療機関を確保する
室蘭市の「医療機関体制の考え方」(令和6年11月)が示す地域ごとの役割分担出典: 室蘭市「室蘭市内3病院の統合・再編等について」(令和6年度 西胆振区域地域医療構想調整会議 資料3)

同じ資料は経緯も記している。協議は平成29年11月から平成30年3月まで4回開かれた「地域医療ありかた検討会」に始まり、平成30年5月の提言書で「3病院を中心とした再編等」と「市立病院の経営形態見直しの検討」が示された。平成30年9月から令和2年2月までに室蘭市地域医療連携・再編等推進協議会が12回開かれ、令和2年3月に第2次中間取りまとめをまとめたが、その後は新型コロナウイルスの影響などで中断した。

協議が再開したのは令和6年6月17日の第14回協議会である。同年8月13日の第3回ワーキンググループ会議で東室蘭・蘭西地区の「医療機関体制の考え方(案)」を協議し、11月7日の第15回協議会で3病院が同意、協議会終了後に報道機関へ公表された。資料は今後の予定として、事務レベルの個別協議とワーキンググループ会議を重ね、両地域の医療機関体制の概要がまとまり次第、協議会の議事として議論するとしている。

人口減少と病院経営が背景 西胆振は2040年に12万5020人

再編の前提にあるのは、患者となる住民の減少である。市立室蘭総合病院の経営強化プランによると、西胆振圏域6市町の総人口は2020年の17万7562人から、2025年に16万4447人、2040年には12万5020人まで減ると推計されている。65歳以上人口も2020年の6万7103人をピークに減少に転じ、2040年には5万3996人となるが、総人口の減りが大きいため高齢化率は上昇し、2040年には43.2%になるという。室蘭市の人口は2020年の8万1874人から2025年に7万4810人、2040年には5万5050人まで減る見通しで、65歳以上人口も2020年の2万9985人から2040年の2万1698人へ減る。

経営の数値も厳しい。同プランは令和4年度決算で経常収支比率101.1%、医業収支比率82.0%と記しており、本業の医業だけでは赤字で、補助金などを含めてようやく収支が均衡する状態だった。1日当たりの入院患者数は339人、病床利用率は65.8%、平均在院日数は21.9日である。プランは令和9年度の目標として経常収支比率100.8%、医業収支比率94.0%を掲げていたが、市政方針説明が示した判断は、計画期間の最終年度に病院事業を閉じる方向へ切り替えるものとなった。

需要の中身も変わる。北海道が定めた西胆振区域地域医療構想は、1日あたりの医療需要を平成25年と平成37年(2025年)で比べ、慢性期が減り、高度急性期・急性期・回復期が増えると推計している。

西胆振区域の1日あたり医療需要の推計(人)

平成25年2025年

05001,0001,500206209高度急性期598624急性期509554回復期1,4101,037慢性期
慢性期は1410人から1037人へ減る一方、急性期は598人から624人へ増える推計出典: 北海道「西胆振区域地域医療構想」
数値で見る(単位: 人)
項目平成25年2025年
高度急性期206209
急性期598624
回復期509554
慢性期1,4101,037

同構想は、この需要を病床稼働率で割り戻した2025年の必要病床数を2826床と推計し、内訳を高度急性期279床、急性期800床、回復期620床、慢性期1127床としている。必要病床数は固定された目標ではなく、構想は「あくまで現時点における見込み」であり定期的に見直すとしている。病床の多い慢性期を減らし、急性期の拠点を絞る方向が、室蘭市内の3病院の役割分担と重なる形になっている。

今回の選定で、西胆振区域はこの先の協議で国のデータ分析と基金の優先配分を受けられる立場になった。ただし別添資料が記すとおり、どの病院がどの機能をいつ引き受けるかは地域の調整会議の議論に委ねられており、国の選定はその議論に資源を回すための仕組みにとどまる。