公安調査庁長官は11月2日、団体規制法(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律)に基づいてオウム真理教に科されている観察処分について、期間の更新を公安審査委員会に請求した。2000年1月の処分決定以来、更新の請求は9回目になる。いまの処分の期間は2027年1月31日に満了する。公安調査庁は、教団が「Aleph(アレフ)」「山田らの集団」「ひかりの輪」の3つを主要な団体として活動していると位置づけ、麻原彰晃こと松本智津夫が依然として活動に影響力を持ち、殺人を勧める綱領を保持するなど「その危険な本質に変わりはない」と説明した。今回の請求では、団体が金品などの供与を受ける仕組みの概要を、公安調査庁長官に報告させる事項へ加えることも求めた。

観察処分とは 立入検査と定期の報告を義務づける

観察処分は、団体の役職員や構成員が団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体を対象に、公安審査委員会が科す処分だ。団体規制法5条1項は、首謀者が団体の活動に影響力を持っていることなど同項各号のいずれかに当たり、「その活動状況を継続して明らかにする必要がある」と認められる場合に、3年を超えない期間を定めて、団体を公安調査庁長官の観察に付すことができると定める。処分を受けた団体は、処分の効力が生じてから30日以内と、その後は3か月ごとに、役職員や構成員、資産などを公安調査庁長官に報告しなければならない(5条2項・3項)。公安調査官は団体の施設に立ち入って検査でき、拒んだり妨げたりした者には罰則がある。

期間が満了する前に同じ要件に当たり、引き続き活動状況を明らかにする必要があると認められれば、公安審査委員会は期間を更新できる(5条4項)。処分も更新も、公安調査庁長官の請求があった場合にしか行えない(12条1項)。長官は請求の前に警察庁長官の意見を聴くことになっている(同条2項)。公安審査委員会は請求書と証拠、団体側の意見を審査したうえで、請求を却下するか、棄却するか、処分を行うかを決める(22条1項)。

オウム真理教は松本サリン事件と地下鉄サリン事件という、不特定多数の人を殺傷したテロ事件を組織的に起こしており、公安審査委員会は2000年1月28日に3年間の観察処分を決めた。その後、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年、2018年、2021年、2024年と3年ごとに更新を決めてきた。

回 公安審査委員会の決定日
当初の処分 2000年1月28日
1回目の更新 2003年1月23日
2回目の更新 2006年1月23日
3回目の更新 2009年1月23日
4回目の更新 2012年1月23日
5回目の更新 2015年1月23日
6回目の更新 2018年1月22日
7回目の更新 2021年1月6日
8回目の更新 2024年1月12日(期間は2027年1月31日まで)
オウム真理教に対する観察処分の決定と期間更新の経過

出典: 公安調査庁「観察処分の期間更新請求(9回目)に係る公安調査庁コメント」

請求の理由 3団体とも「麻原が絶対的な影響力」

請求の対象は、「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体」だ。公安調査庁はこの団体のうち、麻原への「絶対的帰依」を明示的に強調する「Aleph」と「山田らの集団」、観察処分を免れるために「“麻原隠し”」を行う「ひかりの輪」が主要な団体として活動しているとみる。

公安調査庁は、5条1項の各号のうち次の4つに当たるとした。

  • 1号(無差別大量殺人行為の首謀者が活動に影響力を持つ):3団体とも、麻原が活動に「絶対的な影響力」を持つ
  • 3号(行為当時の役員の全部か一部が今も役員):「ひかりの輪」は上祐史浩氏が今も役員
  • 4号(殺人を明示的か暗示的に勧める綱領を保持):3団体とも、殺人を勧める内容を含む危険な教義を行動規範として保持
  • 5号(そのほか無差別大量殺人行為に及ぶ危険性がある):3団体とも、両サリン事件の当時と同じ「上命下服の閉鎖的な組織構造」を保っている

そのうえで、更新が必要な理由として、閉鎖性と欺まん性が際立っていること、地域住民らが恐怖感や不安感を持ち、更新を望んでいることを挙げた。

報告事項に「金品を受け取る仕組み」を追加

今回の請求には新しい項目がある。公安審査委員会が特に必要と認める報告事項として、団体(支部や分会など下部組織を含む)が「支援、賛助その他いかなる名目をもってするかを問わず」、団体の活動に使うために金品などの財産上の利益の供与を受ける仕組みの概要などを加えるよう求めた。認められれば、教団はお金や財産を集める仕組みも公安調査庁長官に報告しなければならなくなる。

資金の扱いは、「Aleph」に別途科されている再発防止処分でも柱になっている。再発防止処分は、観察処分を受けた団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認められる場合や、報告がされなかったり立入検査が拒まれたりして危険性の程度をつかみにくい場合などに、6か月を超えない期間を定めて施設の使用や金品の贈与の受け取りなどを禁じる処分だ(8条)。公安調査庁は2021年1月の7回目の更新決定の後、「Aleph」を対象に2021年10月から2026年7月までに9回請求した。1回目は「Aleph」が報告書を出したため撤回し、2回目から8回目はいずれも期間を6か月とする処分が決まった。

9回目の請求(2026年7月24日)にも、公安審査委員会は9月4日に処分を決めた。「Aleph」に対する再発防止処分は8回目となる。「Aleph」は9月21日から6か月間、所有したり管理したりする特定の土地や建物の全部か一部を使えず、金品などの贈与を受けることも禁じられている。公安調査庁によると、この決定で公安審査委員会は、麻原の二男と妻がいずれも団体の役職員と構成員であると認めた。二男は自らの地位や役割を明かさないまま、人事や経理を含む組織運営の重要事項について幹部構成員に意向を伝え、「Aleph」がそれに沿って活動してきたとされ、妻は団体から送られた資金を管理していたとされた。

前回の更新以降、立入検査106回 今後は公安審査委員会が審査

公安調査庁によると、前回2024年1月12日の更新決定から今年10月末までに、教団の施設への立入検査を106回、15都道府県の延べ129か所で実施した。教団からは団体報告を11回受け取った。22の関係地方公共団体の長には、延べ110件の調査結果を提供した。事件の被害者や遺族、地域住民、関係する自治体などからは、法相や公安調査庁長官に対し、処分の更新や規制の強化を求める要請が計12回あった。

立入検査は警察当局の協力を得て行っている。直近の10月27日には「Aleph」の横浜施設(横浜市神奈川区)に入った。動員した公安調査官は12人で、そのうち施設に立ち入ったのは9人。検査は午前9時21分から午後4時39分まで続いた。この施設への検査は通算27回目で、麻原の写真や麻原の説法を収めた教材などが多数保管されていることを確かめたという。

更新を認めるかどうかは、公安審査委員会が請求書と証拠、団体側の意見を審査して決める。これまでの8回の更新の決定は、いずれも1月に出ている。

公安調査庁は、更新が決まれば警察当局と連携して立入検査などを続けるとしている。コメントでは、観察処分を適正かつ厳格に行うことで、両サリン事件などの被害者や遺族、地域住民をはじめ国民の「不安感の解消・緩和」に努めると述べた。