外国や日本で1年以上の拘禁刑などに処せられた前科があることを理由に上陸を拒否された外国人は、令和7年(2025年)に437人だった。政府が10月23日付の答弁書で明らかにした。葬儀への出席や病気の親族の見舞いといった入国の目的によっては拒否できないようにする例外規定を設けるべきだとの質問には、法務大臣が個別に上陸を認められる規定が既にあるとして「設ける必要はないと考えている」と答えた。参議院の奥田ふみよ議員が10月14日に提出した「出入国管理及び難民認定法に基づく入国拒否理由に関する質問主意書」への回答で、内閣総理大臣の高市早苗氏の名前で参議院議長の関口昌一氏に送られた。
拒否は令和6年に454人、令和元年以前は「統計をとっていない」
答弁書の番号は「内閣参質二二二第九号」。参議院の質問主意書情報によると、質問主意書は10月14日に提出され、19日に内閣へ転送された。答弁書の受領日は23日だった。質問は三つで、答弁書はそれぞれに「一について」「二について」「三について」と答えている。奥田議員は10月5日にも、地方議会の傍聴環境などについて質問主意書を出している(政府答弁書、地方議会の傍聴環境「各議会が自主的に判断」 国の調査・財政支援は考えず)。
一つ目の質問は、入管法第5条第1項第4号を根拠にした入国拒否の年間件数について、2019年以降の推移を示すよう求めた。答弁書によると、同号の上陸拒否事由に当たるとして上陸を拒否された人は、令和2年が79人、令和3年が4人、令和4年が107人、令和5年が370人、令和6年が454人、令和7年が437人だった。
前科を理由に上陸を拒否された外国人(人)
数値で見る(単位: 人)
| 項目 | 人 |
|---|---|
| 令和2年 | 79 |
| 令和3年 | 4 |
| 令和4年 | 107 |
| 令和5年 | 370 |
| 令和6年 | 454 |
| 令和7年 | 437 |
人数は令和3年の4人から令和6年の454人まで増え、令和7年は437人だった。答弁書は増減の理由には触れていない。
上陸を拒否された外国人の全体は、これよりずっと多い。入管庁が公表した「令和7年における外国人の上陸拒否について」によると、令和7年に上陸を拒否された外国人は8,546人で、前年の7,879人から増えた。理由別では、観光や親族訪問を装って不法就労を図る疑いがあるなど「入国目的に疑義のある事案」が7,246人で、全体の84.8%を占めた。「一年以上の拘禁刑に処せられたことがあるなど」上陸拒否事由に該当すると認められた人は505人(5.9%)で、令和6年は520人、令和5年は493人だった。入管庁の資料は上陸拒否事由を号ごとには分けていない。答弁書は、このうち前科を定めた第4号に当たる人数を示した形だ。
質問が求めた2019年分については、答弁書は「平成三十一年及び令和元年における当該数については統計をとっていないため、お答えすることは困難である」と記した。2019年は4月30日までが平成31年、5月1日からが令和元年にあたる。
発端は那覇空港での韓国人の入国拒否
質問主意書は前文で、質問に至った経緯を書いている。2026年3月中旬、那覇空港に着いた韓国の国民1人が、韓国での前科を理由に出入国在留管理庁から入国を拒否された。到着の翌日に出国せざるを得なくなり、友人の葬儀に出席できなかったと訴えているという。
この経緯は奥田議員が質問主意書に書いたもので、答弁書は個別の事案には触れていない。入管庁がこの人をどの規定で拒否したのかや、口頭審理や異議の申出といった手続きを経たのかは、答弁書と質問主意書からは確認できない。
質問主意書が根拠の条文として挙げたのが、入管法第5条第1項第4号だ。同号は、上陸できない外国人として「日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の拘禁刑又はこれに相当する刑に処せられたことのある者」を掲げる。ただし書きで「政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない」とも定めている。日本の裁判所の判決に限らず、外国の法令による刑も対象になる。
「1年以上の拘禁刑」は上陸拒否の期間に定めがない
入管法第5条第1項は、上陸を拒否する事由を号ごとに並べている。第4号の前科は、その一つだ。入管庁のQ&Aは、不法残留などで退去強制された人の上陸拒否期間を、原則として退去強制の日から5年、過去にも退去強制や出国命令を受けた人は10年、出国命令で出国した人は出国の日から1年と説明している。
一方で、同じQ&Aは、日本や外国の法令に違反して1年以上の拘禁刑などに処せられた人や、麻薬・大麻・覚醒剤などの取締法令に違反して刑に処せられた人については「上陸拒否期間に定めはなく、日本に上陸することができません」と記す。前科による上陸拒否には、年数の経過で終わる期間が設けられていない。
上陸の審査で入国審査官が上陸の条件に合わないと判断した場合、外国人は特別審理官のもとでの口頭審理に回される(第7条・第10条)。特別審理官が条件に合わないと認定すれば、理由を示して本人に知らせ、法務大臣への異議の申出ができることも伝えなければならない(第10条)。異議は通知を受けた日から3日以内に、不服の理由を書いた書面で出す(第11条)。本人が認定に従えば、退去が命じられる。
人種差別撤廃条約「市民でない者との区別には適用しない」
二つ目の質問は、人種差別撤廃条約との関係を尋ねた。同条約第1条1は、人種差別を「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先」で、人権と基本的自由の享有を妨げる目的や効果を持つものと定義している。質問は、外国人にだけ適用される第5条第1項第4号は同条約に違反しないかと問うた。
答弁書は、同条約第1条2が「この条約は、締約国が市民と市民でない者との間に設ける区別、排除、制限又は優先については、適用しない。」と定めていることを挙げた。そのうえで、同号が「外国人にのみ適用される」ことをもって「同条約の違反に当た」るとは考えていない、と答えた。答弁書は同条約を「平成七年条約第二十六号」と記している。
答弁書は、第4号の中身が人種差別の定義に当たるかどうかを論じていない。市民と市民でない者との区別は条約の適用外だとする第1条2を根拠に、違反ではないと結論づけた。
例外規定は設けず、法務大臣が入国の目的も考慮
三つ目の質問は、葬儀への出席や病気の親族の見舞いなど入国の目的によっては、第5条第1項第4号による入国拒否を行えないようにする例外規定を設けるべきではないかと問うた。
答弁書はまず、国際慣習法上、外国人の入国を認めるかどうかや、認めるときにどんな条件を付けるかは「主権国家の裁量に任されている」とした。そのうえで、入管法にある二つの規定を挙げた。
一つは第5条の2だ。法務大臣は、第4号などの事由がある外国人でも、再入国許可を与えた場合など法務省令で定める場合に「相当と認めるときは」、その事由だけでは上陸を拒否しないことができる。もう一つは第12条第1項で、法務大臣は異議の申出に理由がないと認める場合でも、再入国の許可を受けているとき、人身取引などにより他人の支配下に置かれて日本に入ったとき、「その他法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」は、上陸を特別に許可できる。
答弁書は、これらの規定を踏まえ「当該外国人の入国の目的等も考慮し、上陸の許否を適切に判断している」と記した。そのため、質問のいう「例外規定」を設ける必要はないと結論づけた。葬儀や見舞いといった目的は、法律で拒否の例外として定めるのではなく、法務大臣が個別の事案で考慮する事情の一つとして扱うという考え方だ。ただし、答弁書は、この二つの規定によって上陸が認められた人数は示していない。
