日立製作所は10月28日、2026年4〜9月期(中間期)の連結決算(国際会計基準)を発表した。売上収益は5兆6140億2800万円で前年同期比17.3%増、調整後営業利益は6432億6000万円で26.6%増だった。同社が業績の物差しにしているAdjusted EBITAは6996億5100万円で24.5%増えた。デジタルシステム&サービス(DSS)、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズ(CI)の4部門すべてが増収増益となった。一方、親会社株主に帰属する中間利益は4166億2100万円で11.9%減った。前年同期に計上した空調事業の合弁会社の売却による利益がなくなったためだ。同社は通期の業績予想と中間配当を引き上げた。

本業の利益は伸び、純利益は前年の売却益の反動で減る

調整後営業利益は、売上収益から売上原価と販売費及び一般管理費を差し引いたもので、同社は「営業利益」に代えてこの指標を使っている。Adjusted EBITAは、調整後営業利益に企業買収で計上した無形資産などの償却費を足し戻したもので、買収の多い同社が事業の稼ぐ力を比べるために示している。中間期の売上収益に対するAdjusted EBITAの比率は12.5%で、前年同期の11.7%から上がった。

7〜9月期だけを見ると、売上収益は2兆9044億円で前年同期比15%増、Adjusted EBITAは3761億円で518億円増え、いずれも第2四半期として過去最高だった。説明会資料によると、為替の影響を除いた売上収益の伸びは10%程度になる。7〜9月期の平均為替レートは1ドル=159円、1ユーロ=183円で、前年同期の147円、172円から円安が進んだ。

純利益が減ったのは一時的な要因による。7〜9月期の親会社株主に帰属する四半期利益は2271億円で、前年同期から534億円減った。この減少には、前年の空調事業合弁会社の売却影響917億円が含まれており、これを除けば383億円の増益になると同社は説明している。中間期の税引前中間利益は6299億円で7.4%減、基本1株当たり中間利益は93円20銭で、前年同期の103円63銭を下回った。

送電の受注が66%増、受注残は10兆円超

部門別では、送電機器や電力網を手がけるエナジーの伸びが最も大きかった。中間期の受注高は3兆4725億円で前年同期比66%増、売上収益は1兆8723億円で32%増えた。Adjusted EBITA率は14.7%で、前年同期の12.2%から上がった。説明会資料は、欧州での複数の大型の高圧直流送電(HVDC)案件、データセンター関連の需要、堅調な送電機器の需要が受注と売上を押し上げたと説明している。9月末の日立エナジーの受注残高は10.5兆円で、前期末から14%増えた。

日立の部門別売上収益(2026年4〜9月期)(億円)

エナジー18,723CI15,866DSS15,331モビリティ6,929
出典: 日立製作所「2027年3月期 第2四半期連結決算の概要」
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項目億円
エナジー18,723
CI15,866
DSS15,331
モビリティ6,929

ITサービスのDSSは、受注高が1兆8220億円で10%増、売上収益が1兆5331億円で10%増だった。金融や公共分野で、古いシステムの刷新やAIを使った業務変革の案件が国内で伸びた。7〜9月期には一部の国内案件のコスト増など一時的な要因で90億円の減益影響が出た。

鉄道車両や信号を扱うモビリティは、売上収益が6929億円で18%増えた。欧州での鉄道車両や信号・制御の大口案件を受注し、受注高は9731億円で40%増。買収したタレスGTS事業の収益性も上がった。CIは、半導体の製造装置や計測・検査装置、配電用の変圧器の販売が伸び、売上収益が1兆5866億円で11%増えた。

通期予想を上げ、中間配当は32円に

同社は通期(2027年3月期)の業績予想を見直した。売上収益は前回予想の11兆7000億円から12兆円に、Adjusted EBITAは1兆5200億円から1兆5600億円に引き上げた。親会社株主に帰属する当期利益は9000億円から9200億円とし、前期の8023億円を14.7%上回る見通しだ。売上収益はDSSとCIを中心に3000億円、Adjusted EBITAはエナジーとCIを中心に400億円上積みした。

項目 前回予想 今回予想
売上収益 11兆7000億円 12兆円
Adjusted EBITA 1兆5200億円 1兆5600億円
当期利益(親会社株主帰属) 9000億円 9200億円
基本1株当たり当期利益 201円14銭 206円41銭
日立製作所の2027年3月期の通期業績予想

出典: 日立製作所「2027年3月期 第2四半期連結決算の概要」

下半期の為替は1ドル=160円、1ユーロ=185円を前提に置いた。前提より1ドル当たり1円の円安になると、売上収益は80億円、Adjusted EBITAは11億円増える計算になる。説明会資料は、地政学リスクや金利上昇が受注や顧客の需要に及ぼす影響を「引き続き注視」すると記した。

中間配当は1株32円で、従来予想の28円から4円増やした。前期の中間配当は23円だった。期末配当の予想は未定としている。通期の自社株買いは5500億円を見込み、上半期に2903億円分を取得した。配当と自社株買いを合わせた株主還元の総額は8140億円の見通しだ。

事業の入れ替えとLumadaの拡大

同社は事業の入れ替えを続けている。説明会資料によると、日立建機株式の譲渡を8月21日に完了した。ATM事業の日立チャネルソリューションズは10月1日に沖電気工業との合弁会社となり、新会社「OHチャネルイノベーションズ」が発足した(統合の審査の経緯は「ATM統合、公取委が条件付きで容認 紙幣入出金部と通帳記帳部は統合後シェア100% OKIと日立に5年間の供給確約を課す」)。家電事業は新会社「KADENOVA」を設立して株式を譲渡する計画で、今期中に新会社が発足する予定だ。

持分法適用会社だったAstemoについては、本田技研工業に保有株の一部を譲渡する手続きを10月1日に終えた。売却の対価は1522億7500万円で、日立の持ち分は40.0%から19.0%に下がり、Astemoは持分法適用会社から外れた。決算短信は、この譲渡が今期の純利益に与える影響は「重要ではありません」としている。

伸ばす側の柱は「Lumada(ルマーダ)」事業だ。中間期のLumada事業の売上収益は2兆4280億円で前年同期比31%増え、全体の44%を占めた(一部の構造改革事業を除いた売上に基づく比率)。通期の見通しは5兆2000億円に上げた。このうち、同社がフィジカルAI関連の需要を取り込む中核と位置づける「HMAX」の売上収益は中間期に2380億円で、通期では前期比70%増の5100億円を見込む。説明会資料は、Lumada事業とHMAXの拡大がグループ全体の業績予想の引き上げを主導したと位置づけている。