政府は10月27日、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる法案について、共産党の田村智子衆院議員ら4人が出した質問主意書に答弁書で答えた。2年間の減税期間中に先行して配る「就業者負担軽減支援金」の対象にならない人に、税率1%相当分の支援をすることは「検討していない」と明記した。支援金の対象者数や所得の線引きは政令で定めるとして、数字は示さなかった。

質問主意書と答弁書の経過

質問主意書は10月15日に衆議院へ提出された。提出者は田村氏と辰巳孝太郎、畑野君枝、塩川鉄也の各氏で、会派は日本共産党。衆議院は10月21日に内閣へ転送し、内閣は10月27日付で答弁書を送った。答弁書は内閣総理大臣の高市早苗氏の名前で、衆議院議長の森英介氏に宛てている。

質問は10項目。冒頭で、党として消費税に一貫して反対し、当面の対策として全品目の税率を一律5%に下げる恒久減税と、インボイス(適格請求書)制度の廃止を主張してきたと述べた。そのうえで、減税を食料品に限り、期間を2年に区切る理由を問い、支援金の対象者、農家と外食事業者への影響、財政運営と財源までを尋ねた。

対象の法案は「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」。今国会の閣法1号で、10月9日に提出され、10月20日に衆議院財務金融委員会に付託された。衆議院の議案一覧では「衆議院で審議中」となっている。委員会での審議の様子は支援金法案の衆院財金委質疑、所得上限や支給額の明示求める質問相次ぐ 27日は参考人4人に詳しい。

法案は何を決めるのか

内閣官房と財務省がまとめた法案の概要によると、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を0.78%、地方消費税と合わせて1%にする。地方消費税が減る分は地方特例交付金で埋める。

就業者負担軽減支援金は、働いて得た所得が一定額を超え、合計所得が一定額以下などの要件を満たす人に毎年1回配る。本格的に導入するのは2029年度で、それまでの2027・2028年度は、飲食料品の消費税率1%相当分の範囲で先に配る。支給にかかる費用は3分の2以上を国が持ち、残りを都道府県と市区町村が半分ずつ負担する。財源は「特例公債に頼ることなく」歳出と歳入の見直しで確保するとしている。

ただし、所得の上限と下限、支援額はいずれも法案に書かれておらず、政令で定める。共産党の質問は、この「政令に委ねた部分」を数字で示すよう求めたものだった。

項目 質問の要旨 答弁の要旨
一 なぜ2年間に限るのか 支援金の本格導入までの「つなぎ」。2年後に「確実に税率を戻す」との首相答弁を引用
二 税率を戻したときの家計への影響 時限措置なので負担増との考え方は「馴染まない」との首相答弁を引用
三 支援金の所得の上限・下限、対象者数、1人あたりの額 政令で定める。現時点で答えるのは困難
四 2年後の支援金総額は税率8%分に相当するか そうした考えではない
五 支援金の対象外の人に1%分の支援をするか 2027・2028年度に行うことは検討していない
六 対象外の人の人数、同額の支援を考えるか 人数は答えられない。法案の検討規定に沿って検討
七 農家への給付で損失は全て補われるか 法案に規定なし。大綱に基づき予算編成で検討
八 外食事業者などへの支援 予算編成で具体化し、引き下げの時期までに示せる
九 円安を是正すべきではないか 為替への影響は答えられない
十 不公平税制を改めて財源を確保すべきでは 2027年度の予算編成の状況を踏まえて結論を得る
質問主意書の10項目と答弁書の要旨出典: 衆議院「政府提出の『消費税・支援金法案』に関する質問主意書」と同答弁書

支援金の対象外の人への扱い

最も踏み込んだ答えになったのは五と六だ。質問は、アルバイトなど所得の低い就業者や、病気や障害で働けない人、年金で暮らす人は支援金の対象外になるとして、これらの人にも1%相当分の支援を考えているかを尋ねた。

答弁書は高市首相の10月9日の参議院本会議での答弁を引き、税率を0%ではなく1%にしたのは事業者のシステム改修の期間を短くでき、2027年4月から実施できるからだと説明した。支援金を2027年度から先に配れるのは、公的機関が持つ所得情報を使えるためだとした。そのうえで、2027・2028年度に対象外の人へ「消費税率一%相当分の支援」を行うことは「検討していない」と書いた。

対象外の人が何人になるかについては、支給要件を「支給開始に間に合うよう政令で定める」ため「現時点でお答えすることは困難」とした。代わりに法案36条の検討規定を引いた。低所得の就業者や病気・障害で働けない人で支援金の対象にならない人について、生活困窮者の自立支援や障害者福祉などの制度と整理しつつ、給付と相談支援、就業支援を一体で行うことを含めて財源とあわせて検討する。働いていない高齢者などについても、年金や生活保護の制度と整理して必要な措置を検討すると定めている。答弁書は「今後、適切に検討してまいりたい」と結んだ。

四では、減税期間中の支援金が1%相当分である以上、2年後の本格導入時の総額は税率8%分に当たるのではないかとの問いに、総額は対象者の範囲と支援額を検討する中で決まるとの首相答弁を引き、「そうした考えではない」と否定した。

2年後の税率と、農家・外食業者への手当て

一の「なぜ2年間か」には、引き下げは支援金の2029年度の本格導入までの「つなぎ」だと答えた。10月14日の衆議院予算委員会で首相が「二年後には確実に税率を戻す」と述べたことも引いた。過去5年の食料品価格の上昇を挙げて、税率を戻せば家計の負担が増えるとただした二には、首相の「負担増になるとの考え方はそもそも馴染まない」との答弁を引いた。2年後の価格の見通しは「確たることをお答えすることは困難」とした。

七は農家への影響を尋ねた。税率が下がると、仕入れにかかった消費税を売り上げから回収しきれない農家が出るという指摘だ。答弁書は、法案には農家への給付の規定は無いと認めたうえで、9月15日に閣議決定した大綱に、簡易課税事業者や免税事業者の農林漁業者に「個別の売上高を踏まえた金額を給付する仕組みを導入する」とあると説明した。給付の中身と申請の方法は今後の予算編成で検討するとして、損失がすべて補われるかには答えなかった。

八は、内食・中食の税率が1%、外食が10%となる差の影響を尋ねた。答弁書は、影響は事業者の業態によって違うとし、予算編成の過程で支援の中身を具体化し、税率を下げる時期までに「お示しすることができる」と記した。外食業者への支援について、時期の見通しを示したのはこの項目だけだった。

十の財源について答弁書は、大綱の「特例公債に頼らず」「令和九年度の予算編成過程において行う予算編成改革の具体化の状況を踏まえて結論を得る」との記述を引くにとどめた。

法案審議で残る論点

答弁書は大半の項目で、首相が国会で述べた答弁をそのまま引いて答えている。新たに示した判断は、減税期間中に支援金の対象外の人へ1%分の支援を「検討していない」としたこと、2年後の支援金総額を税率8%分とみる考えを否定したこと、外食業者への支援を引き下げの時期までに示すとしたことの3点だった。

一方、所得の上限と下限、対象者数、1人あたりの額は、答弁書でも示されなかった。いずれも法案成立後に政令で決まる。2年後に税率を戻すときに誰の負担がどれだけ増え、支援金でどれだけ戻るのかは、この数字が出るまで試算できない。

同じ臨時国会では、参議院でも消費税率をめぐる質問主意書への答弁が出ている。将来の税率については政府答弁書、食料品減税後の増税案「提案されたことはない」 将来の税率「検討していない」で伝えた。法案は衆議院の財務金融委員会で審議が続いており、政令に委ねた数字をどこまで国会で示すかが、今後の審議で問われる。