総務省は10月15日、データセンターなどを東京圏・大阪圏の外に整備する民間事業者を支援する2026年度予算の事業で、補助金の管理を担う「執行団体」を一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)に決めたと発表した。事業費は2026年度から30年度までの5年間で総額209億3800万円。データセンターやインターネット接続点(IX)の施設・設備をそろえる費用の2分の1を助成する。実際に整備する事業者の公募は、協会の準備が整い次第始まる。

執行団体を選び、事業者の公募へ

総務省の発表によると、執行団体は7月31日から8月21日まで公募した。応募者の申請内容を外部有識者が評価し、それを踏まえて総務省が審査した結果、CIAJに決めた。

この事業は二段構えになっている。国はまず、補助金の管理や審査を担う団体に補助金を出す。その団体が、実際にデータセンターなどを建てる民間事業者(「間接補助事業者」と呼ぶ)を公募し、助成先を選んで資金を渡す。今回決まったのは前段の団体で、助成を受けたい事業者にとっての窓口にあたる。

後段の事業者の公募について、総務省は「今後、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会において準備が整い次第行われる予定」とし、総務省のウェブサイトでも知らせるとしている。公募の時期や締め切りは、今回の発表には書かれていない。

CIAJは、同じ名前を冠した前身の事業でも助成の窓口を務めてきた。2021年度補正予算の事業で総務省から基金設置法人に選ばれ、「デジタルインフラ整備基金」を設けて、データセンターや海底ケーブルを整備する事業者に助成している。

東京・大阪圏の外が対象、整備費の半分を助成

執行団体の公募要領と交付要綱によると、助成の対象は、埼玉、千葉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の7都府県以外の地域に、データセンターやIXの設備を設ける事業だ。民間事業者のほか、複数の民間事業者が組んだ連携体も申請できる。他社が持つデータセンターの建物にIX設備などを置く事業も対象に含まれる。

IXは、通信会社やネット企業の回線が互いに接続し、データをやり取りする中継点を指す。データセンターとIXはどちらも、インターネットの通信を支える拠点にあたる。今回の事業は、データセンターの建物だけでなく、そこに置くIXの設備も助成の対象にしている。

助成の対象になる経費は幅広い。建物や局舎、鉄塔、受電設備、非常用発電機や予備電源、空調、耐震・免震の設備、消火設備、セキュリティ設備に加え、サーバやネットワーク機器、記憶装置も含まれる。施設を建てるための用地取得や道路整備の費用も対象となる。助成率はこれらの経費の2分の1で、1件あたりの交付決定額は100万円以上とされている。

助成先を選ぶ際の基準も交付要綱に書かれている。通信ネットワークの強靱化を目的とし、助成によって整備が進むと見込まれること、工事の価格が必要かつ適正であること、サプライチェーン(部品や機器の調達網)のリスク対策やセキュリティ対策を通じて安全性が確保されていることの3点だ。執行団体は必要に応じて外部有識者の協力を得て審査する。

基金から複数年度の予算へ、総額209億円

今回の事業は、資金の出し方がこれまでと異なる。これまでの助成は、CIAJに設けた基金から行われてきた。基金は、補正予算などで先にまとまった資金を積み、その中から複数年にわたって使う仕組みだ。

これに対して今回は、2026年度の当初予算で「国庫債務負担行為」という形をとった。国庫債務負担行為は、国が将来の年度にわたって支払いを約束することを、あらかじめ予算で決めておく仕組みである。公募要領によると、2026年度から30年度までの総額は209億3800万円で、このうち2026年度分は2500万円にとどまる。事業者の公募と審査、工事に時間がかかるため、支払いの多くは翌年度以降になる。

執行団体への支払いも、原則として事業完了後の精算払いとされる。個々の事業が終わった後、実績報告書や必要に応じた現地調査で費用を確かめ、助成額を確定する。総務省や会計検査院が対象外と判断した費用は、支払った後でも返還を求めるとしている。

総務省の事業概要の資料は、データセンターの地方分散に向けた予算として、2026年度当初の0.3億円(国庫債務負担行為の総額209.4億円)と並べて、2024年度補正予算の120.0億円も挙げている。

これまでに14件を採択

総務省が公表している基金の採択実績によると、これまでの助成先は3回の補正予算分で計14件にのぼる。2021年度補正分は2022年6月に7件、2023年度補正分は2025年7月に3件、2024年度補正分は同年9月に4件が採択された。

予算 事業者 事業実施場所
2021年度補正 合同会社石狩再エネデータセンター第1号 北海道石狩市
2021年度補正 LINEヤフー 福島県白河市
2021年度補正 NTTグローバルデータセンター 京都府相楽郡
2021年度補正 オプテージ、合同会社KS東梅田 大阪府大阪市
2021年度補正 ソフトバンク、BBIX 奈良県生駒市
2021年度補正 インターネットイニシアティブ 島根県松江市
2021年度補正 Qtnet 福岡県福岡市
2023年度補正 ソフトバンク 福岡県糸島市・糸島沖、北海道苫小牧沖
2023年度補正 ユーラスエナジーホールディングスほか2社 北海道稚内市
2023年度補正 ハイレゾ 秋田県男鹿市
2024年度補正 NTTグローバルデータセンターTCG-1合同会社 栃木県栃木市
2024年度補正 オプテージ 福井県三方郡美浜町
2024年度補正 ELEMENTS CLOUD四国 香川県坂出市
2024年度補正 デジタルダイナミック薩摩DC合同会社 鹿児島県薩摩川内市
デジタルインフラ整備基金の採択実績(データセンター・海底ケーブル関連)出典: 総務省「デジタルインフラ整備基金の採択実績」

この一覧には、データセンターのほか海底ケーブルの陸揚げに関わる事業も含まれる。基金による助成は海底ケーブルの陸揚げ地の分散にも使われている(海底ケーブルの陸揚げ、房総・志摩以外へ 総務省基金が苫小牧・和歌山・阿南の4社を採択)。

災害への備えと電力の確保が背景に

総務省は事業の目的について、大規模震災の発生などが予測される日本が、経済安全保障の観点などから国内外のデータを「安全・安心」に蓄積・処理できる「データ・ハブ」となるため、地方分散による強靱な通信ネットワーク拠点を整えると説明している。データセンターや通信の拠点が特定の地域に集中していると、その地域が被災したときに国内のデジタルサービスがまとめて止まりかねないためだ。

もう一つの柱が電力との関係だ。事業概要の資料は、電力と通信を効果的に連携させる「ワット・ビット連携」を掲げ、電力インフラから見て望ましい地域や、脱炭素電力が豊富な地域、大規模災害時にデジタルサービスを維持しやすい地域へデータセンターを誘導するとしている。総務省は別の事業で、地方に分散したデータセンターをつないでAIの処理を融通する実証も始めている(AIの計算を電気の余る地方へ 総務省の分散データセンター実証7件が始動 三鷹・札幌・広島を光で結ぶ検証も)。

今後の焦点は、CIAJが始める事業者の公募にどれだけの計画が集まるかだ。5年間で209億円の枠を使い、どの地域にどれだけの施設が整うかが、地方分散の進み具合を測る目安になる。