農林水産省は10月22日、50歳未満の就農希望者を新たに雇った農業法人などに資金を交付する「雇用就農資金」について、令和8年度第3回の募集を始めたと発表した。対象は令和8年2月1日から10月1日までの間に就農希望者を雇った農業法人などで、締め切りは11月25日。基本の交付額は雇った1人につき年60万円で、最長4年間受け取れる。事業を実施するのは一般社団法人全国農業会議所(全国新規就農相談センター)で、申請は農業法人などが所在する各都道府県の農業会議などで受け付ける。
3つのタイプと交付額
雇用就農資金は、農業法人などが就農希望者を雇い、仕事を通じた実践的な研修で技術や経営の知識を身に付けさせる場合に、その費用を国の資金で支える制度である。今回募集するのは次の3つのタイプだ。
「雇用就農者育成・独立支援タイプ」は、雇った人に、その法人での農業就業や独立して就農するために必要な技術・経営ノウハウを習得させる研修を行う場合に交付する。交付額は年間最大60万円(月額5万円)で、期間は最長4年間。1つの経営体で同じ年度に新たに採択される人数は5人までで、3人目以降は年間最大20万円となる。
「新法人設立支援タイプ」は、新しい農業法人を設立して独立することを目指す人を一定期間雇い、独立に必要な技術や経営ノウハウを習得させる場合に交付する。交付額は年間最大120万円(月額10万円)で、最長4年間。ただし3年目以降は年間最大60万円に下がる。
この2つのタイプでは、雇った人が障害者、生活困窮者、刑務所出所者などの場合、年間最大15万円(月額1万2500円)が加算される。募集期間はいずれも10月22日から11月25日まで。
3つ目の「次世代経営者育成タイプ」は、農業法人などが職員を将来の経営者として育てるため、国内外の先進的な農業法人や異業種の法人に派遣して研修させる場合に支援する。月最大10万円で、期間は最短3か月から最長2年間。このタイプは令和9年1月29日まで随時募集しており、申請した日の翌々月から事業が始まる。
対象は2月〜10月に雇った人 支援は来年2月から
今回の募集で対象となるのは、2月1日から10月1日までに雇われた人である。募集要領によると、雇われた人は、支援が始まる時点で採用(勤務開始)から4か月以上12か月未満でなければならない。第3回の支援期間は令和9年2月1日に始まり、最長で令和13年1月31日までとなる。
雇われた人にはこのほか、採用時点で50歳未満であること、支援が終わった後も農業を続けるか独立する強い意欲があること、過去の農業就業期間が5年以内であることが求められる。原則として農業法人などの代表者の3親等以内の親族は対象にならない。就農準備資金や農業次世代人材投資資金(準備型)などで同様の研修を受けたことがある人も対象外となる(道府県の農業大学校などは除く)。
今年度は3月4日から4月7日までの第1回(支援は6月1日から)、6月18日から7月22日までの第2回(同10月1日から)に続く3回目の募集となる。
雇う側に求められる労働条件
交付を受ける農業法人などには、労働条件についての要件が多く課されている。雇った人とは、正社員として期間の定めのない雇用契約を結ぶ必要がある。支援が終わった後に独立することが前提の場合に限り、期間の定めのある契約でもよい。1週間の所定労働時間は原則として年間平均35時間以上(障害者の場合は20時間以上)とされ、雇用保険と労災保険への加入も求められる。法人の場合は厚生年金保険と健康保険にも加入させなければならない。
研修については、習得させる技術を明記した研修計画を作り、おおむね年間を通じて行う。作物の栽培管理や家畜の飼養の技術に関する研修は必須で、独立を前提とする人には経営ノウハウの研修も加わる。指導にあたる「研修指導者」は、役員か従業員で5年以上の農業経験がある人、または認定農業者でなければならない。
募集要領は、休憩時間や休日、有給休暇の付与を就業規則などで定めることも求めている。さらに、年間総労働時間を2445時間以内とする規定を設けること、産前産後休業や育児・介護休業などの規定を設けること、人材育成と評価の仕組みを整えることなど6項目のうち、2つ以上に既に取り組んでいるか、支援開始から1年以内に取り組まなければならない。期限までに取り組まなかった場合は採択が取り消される。
過去5年間にこの事業や「農の雇用事業」などの対象となった人を2人以上雇っていた経営体は、その人たちの農業への定着率が2分の1以上であることも条件となる。採択後に法人の都合で研修を中止した場合などには、交付済みの資金に加算金を付けて返還を求めるとしている。事業の実施期間が3か月に満たない場合は交付されない。
過去の募集では応募者の9割前後を採択
全国農業会議所が公表している採択結果によると、雇用就農者育成・独立支援タイプでは、令和7年度以降の5回の募集で、応募した人数の9割前後が採択されてきた。9月30日に決まった今年度第2回では、772経営体が962人分を申請し、704経営体の855人が採択された。1経営体の1人分は審査結果が保留となっている。
| 募集回 | 応募経営体(人数) | 採択経営体(人数) |
|---|---|---|
| 令和7年度第1回 | 324(375人) | 286(326人) |
| 令和7年度第2回 | 638(793人) | 580(714人) |
| 令和7年度第3回 | 533(665人) | 491(608人) |
| 令和8年度第1回 | 365(425人) | 321(370人) |
| 令和8年度第2回 | 772(962人) | 704(855人) |
令和7年度の3回を合わせると、採択されたのは1648人だった。一方、新法人設立支援タイプの採択は各回0〜1経営体にとどまる。
ただし、採択は予算の範囲内で行われる。募集要領は、要件を満たす申請が予算を超えた場合には審査会で優先順位を付けるとし、「応募状況によっては要件を満たしていても不採択になる可能性があります」と明記している。
新規雇用就農者は1万250人 49歳以下では自営を上回る
農水省の「令和7年新規就農者調査」(8月25日公表)によると、令和7年(令和7年2月1日〜令和8年1月31日)に新たに農業に就いた人は4万2850人で、前年から1.5%減った。このうち49歳以下は1万4410人で、前年から8.3%減った。
就農の形別にみると、家業の農業に就いた「新規自営農業就農者」が2万9240人、農業法人などに雇われた「新規雇用就農者」が1万250人、自ら土地や資金を用意して農業を始めた「新規参入者」が3360人だった。新規雇用就農者は前年から0.7%増え、5年前の令和3年(1万1570人)以降で最も少なかった令和5年の9300人からは2年続けて増えている。
雇用就農資金の対象年齢に重なる49歳以下に絞ると、新規雇用就農者は7030人で、前年の7050人とほぼ同じだった。これに対し、49歳以下の新規自営農業就農者は前年の6110人から5080人に減った。49歳以下で新たに農業に就いた人のうち、ほぼ半数が雇用就農者だったことになる。
49歳以下の新規就農者(雇用と自営)(人)
新規雇用就農者新規自営農業就農者
数値で見る(単位: 人)
| 項目 | 新規雇用就農者 | 新規自営農業就農者 |
|---|---|---|
| 令和3年 | 8,540 | 7,190 |
| 令和4年 | 7,710 | 6,500 |
| 令和5年 | 6,880 | 6,420 |
| 令和6年 | 7,050 | 6,110 |
| 令和7年 | 7,030 | 5,080 |
申請の様式と募集要領は、全国新規就農相談センターのウェブサイト「農業をはじめる.jp」か各都道府県の農業会議などで入手できる。問い合わせは各都道府県の農業会議などのほか、全国新規就農相談センター(03-6265-6891)でも受け付けている。
