農林水産省は10月9日、ドイツ・ベルリンの百貨店「KaDeWe(カーデーヴェー)」で日本産米の試験販売を行うと発表した。期間は10月12日から24日まで(18日の日曜日を除く)で、北海道産「ゆめぴりか」や新潟県産「コシヒカリ」など6銘柄を店頭に並べる。同省は、これを契機にドイツ国内で日本産米の輸出拡大に向けた取り組みを続けるとしている。

6道県の銘柄を12日間販売

発表によると、試験販売を決めたのは「EU農林水産物・食品輸出支援プラットフォーム」で、在ドイツ日本国大使館と日本貿易振興機構(ジェトロ)ベルリン事務所が協力する。会場はベルリンの老舗百貨店KaDeWe Berlinの6階。販売時間は各日午前10時から午後8時まで(現地時間)で、日曜日の18日を除く12日間にわたる。

並べるのは次の6銘柄だ。

  • 北海道産「ゆめぴりか」
  • 秋田県産「あきたこまち」
  • 宮城県産「ひとめぼれ」
  • 山形県産「つや姫」
  • 新潟県産「コシヒカリ」
  • 熊本県産「森のくまさん」

産地は北海道、東北、北陸、九州にまたがる。発表資料は販売価格や販売量には触れていない。

試験販売の主体の大もとにあたる「農林水産物・食品輸出促進プラットフォーム」は、ジェトロ、在外公館、日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)を主な構成員とする組織だ。輸出先の国・地域で、輸出事業者などの食品関連事業者を包括的・専門的・継続的に支援する目的で2022年(令和4年)以降に設置が進み、10か国・地域の16拠点にある。EU担当のプラットフォームは2022年5月、フランス・パリとベルギー・ブリュッセルに拠点を置き、オールジャパンでの日本産農林水産物・食品のプロモーションや、EUの規制情報の収集・発信を担っている。

米の輸出は過去最高、2026年も2割近い伸び

農林水産省が財務省の貿易統計を基にまとめた資料によると、2025年の米(援助米を除く)の輸出額は138.8億円で、前年の120億円から15.4%増えた。輸出量は4万6573トン。同省は2025年の品目別の状況で、牛肉や緑茶、ぶりなどと並び、米を過去最高を記録した品目に挙げている。

米の加工品も伸びた。パックご飯・加工米飯・米粉・米粉製品を合わせた「パックご飯等」の2025年の輸出額は20.2億円で、前年比31.0%増。最大の輸出先は米国で、8.6億円と全体の42.6%を占めた。

2026年に入っても増加は続いている。1〜8月の米(援助米を除く)の輸出額は102億4100万円で、前年同期より16.2%多い。8月単月では12億8700万円で、前年同月比31.2%増だった。一方、1〜8月のパックご飯等は13億6800万円で、伸びは3.3%にとどまる。

農林水産物・食品全体の輸出額は2025年に1兆7005億円(前年比12.8%増)で、2026年1〜8月は1兆1786億円と前年同期を11.4%上回っている。米は全体の1%に満たないが、伸び率では全体を上回って推移している。

EU向けは全体の1割に満たない

米の輸出先は、香港などアジアと米国に偏る。2025年の国・地域別では、香港が35.7億円(1万3522トン)で全体の25.7%を占めて首位。米国が31.4億円(9896トン)、シンガポールが15.5億円(6361トン)、台湾が10.4億円(3329トン)、タイが8.1億円(2862トン)と続いた。EU全体は11.4億円(3186トン)で、前年から16.9%増えたものの、構成比は8.2%にとどまる。パックご飯等のEU向けは0.5億円だった。

ドイツ向けの農林水産物・食品全体をみると、2025年の輸出額は181億円(前年比12.2%増)で、国・地域別では世界15位。EU加盟国の中では、12位のオランダ(303億円)に次ぐ。品目別の上位は緑茶、ソース混合調味料、ラノリンの順で、米は上位10品目に入っていない。

EU向けの農林水産物・食品全体は2025年に997億円(前年比16.2%増)だった。2026年1〜8月は778億円で、前年同期から26.1%増と、輸出全体(11.4%増)を上回るペースで伸びている。

目標は2030年に35.3万トン、課題は生産コスト

政府が2025年4月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画は、輸出重点品目である「米・パックご飯・米粉及び米粉製品」について、目標年の2030年に35.3万トン(原料米換算)の輸出量を目指すと定めた。計画によると、2024年の輸出量は前年比22%増の4.6万トン(同)で、目標はその7倍超にあたる。

計画は、これまでの取り組みとして、輸出促進法に基づく認定品目団体と連携したプロモーションや、海外の需要・規制情報の提供を挙げる。年間1000トン超の輸出を目標とする「モデル輸出産地」は2023年末時点で30産地となった。その結果、米の輸出は近年、年率10%を上回るペースで増えているとする。

一方で、最大の課題には生産コストを挙げる。輸出業者からの聞き取りでは、輸出米の採算ラインは60キロあたり約9500円だが、国内農家の平均生産コストは約1万6000円だという。海外での需要開拓には、海外市場が求める品質や数量、価格への対応が必要になるとしている。

このため計画は、経営規模15ヘクタール以上の経営体への農地の集積・集約化や、1ヘクタール以上の区画への大区画化、多収品種の作付け拡大、スマート農業技術の活用を進め、大規模な輸出に取り組む産地を30産地形成するとしている。需要面では、日本食のプロモーションや商流の構築、おにぎり店や日本食レストランなど日系外食企業の海外進出の後押し、インバウンド(訪日客)と輸出の好循環づくりを掲げ、パックご飯の輸出拡大も図る。

アジア・米国以外の市場づくり

今回の試験販売は、EUのプラットフォームが在ドイツ大使館やジェトロのベルリン事務所と組み、首都の百貨店で日本産米を直接消費者に売る取り組みだ。EU向けの米輸出は伸び率では全体を上回るが、金額はアジアや米国に比べてまだ小さい。農林水産省は、今回の販売を契機としてドイツ国内での日本産米の輸出拡大に向けた取り組みを続けるとしている。

国内では米の生産コストの引き下げが課題として残り、海外では価格や品質、数量への対応が求められる。2030年の輸出目標に向けて、アジアと米国以外の市場をどこまで広げられるかが焦点となる。