国民生活センターは10月7日、トレーナーから一対一で指導を受ける「パーソナルトレーニング」の契約トラブルについて、消費者に注意を呼びかけた。全国の消費生活センター等に寄せられた相談は2025年度に1457件で、前年度の885件から大きく増え、2021年度以降で最も多くなった。無料体験の後に長時間の勧誘を受けたり、エステやサプリメントといった関連商品まで契約させられたりする事例を挙げ、契約総額や中途解約の精算方法を契約前に確かめるよう求めている。

相談件数は5年で3倍近くに

国民生活センターが全国の消費生活相談を集めたデータベース「PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)」によると、パーソナルトレーニングに関する相談は2021年度が495件だった。その後、2022年度722件、2023年度861件、2024年度885件と増え続け、2025年度は1457件に達した。2021年度と比べると3倍近い水準になる。

2026年度も増加傾向は続いている。8月31日までに登録された相談は537件で、前年同期(2025年8月31日までの登録分)の468件を上回った。件数には、消費生活センター等から国民生活センターに回されてきた「経由相談」は含まれていない。

ここでいう「パーソナルトレーニング」は、痩身や体型管理といった美容目的などで、トレーナーから一対一など少人数で指導を受けながら筋力トレーニング等の運動をするものを指す。スポーツの技能を高めるための個別指導は集計から除いており、パーソナルトレーニングを主に契約したと判断された相談を数えている。

2025年度の相談(2026年8月31日までの登録分)から相談者の属性を見ると、性別が分かる1443件のうち女性が1229件(85.2%)、男性が214件(14.8%)だった。平均年齢は36.7歳で、年代別では20歳代以下が36.2%と最も多い。職業では給与生活者が1005件(72.5%)と大半を占めた。

契約・購入金額が分かる991件では、10万円以上50万円未満が428件(43.2%)で最も多く、5万円未満が224件(22.6%)、5万円以上10万円未満が180件(18.2%)と続いた。50万円以上の契約も115件(11.6%)あった。

無料体験の後に2時間勧誘、エステも「本日なら特別価格」

公表資料は、寄せられた相談から6つの事例を紹介している。

SNS広告を見て無料体験に行った30歳代の女性は、約1時間の体験の後、トレーナーから約2時間にわたって契約を勧められた。「いったん考えたい」と何度伝えても引き下がらず、「この金額で入会できるのは今日だけだ」などと言われ、帰りたい一心で月2回・月額1万円のコースを契約した。翌日に解約を申し出ると、入会手数料と月会費1万円の支払いを求められたという。

10歳代の女性は、無料体験で体重や体脂肪、筋肉量を測られた後、測定結果を基に「あなたにはこのプランがいいですよ」と食事管理付きのプラン(約50万円)を勧められた。高額なので断ったが、「家に帰ったら絶対契約しないから」と勧誘が続いた。狭い店舗で担当の男性と二人きりだったため怖くなり、契約すると言ってしまった。

40歳代の女性は、サイトに「入会金無料期間中」とあったため無料体験を申し込んだ。当日限りの特別金額(月額約3万円)だと説明されてトレーニングを契約すると、続けて「サプリメントやエステ等も本日であれば特別価格で申し込める」と勧められた。断りづらい雰囲気の中でこれらも契約し、総額は約12万円になった。契約内容や解約条件は、渡されたタブレット端末でよく確認しないままサインしたという。

このほか、1年契約を途中で解約しようとしたら割引の適用がなくなり、契約書面には記載が見当たらなかったという約2万円の入会金を含めて約8万5000円を請求された例、解約申請書をなかなか渡してもらえず、受理が契約終了日を過ぎてしまった例、代金3万円を一括で払った10回コースで3回目以降の予約が取れなくなり、返金の約束もうやむやになった例が紹介されている。

「自分に合ったトレーニング」と「自分に合った契約」は別

国民生活センターは、こうした事例から5つの問題点を挙げた。

1つ目は、トレーナーから個別に提案を受ける中で、長時間の勧誘や強引な勧誘が起きやすいことだ。SNS広告や無料体験をきっかけに来店し、「今日契約すれば割引になる」とその場での契約を迫られる例が目立つ。個別の事情を踏まえて「こちらのコースの方が向いている」と言われると、消費者は断りにくく感じるという。

2つ目は、個別のカウンセリングと提案が契約判断に影響することだ。パーソナルトレーニングは、身体の状態や生活習慣、運動経験、目標とする体型などを聞き取ったうえで、一人ひとりに合った内容を提案するのが特徴とされる。ただ、勧められた「自分に合ったトレーニング」が、経済状況や通える頻度を踏まえた「自分に合った契約」と一致するとは限らない。「〇kg痩せる」と言われたのに痩せなかったという効果に関する相談もあり、資料は効果には個人差があって契約で保証されているとは限らないと指摘している。

3つ目は、エステやサプリメントなど、トレーニング以外の関連商品・サービスを勧められることだ。「痩せるためにはエステも必要」「初回は皆さんにエステを契約してもらっています」などと必要性を強調され、トレーニングに欠かせないものと受け止めて、条件をよく確かめないまま併せて申し込むケースがあるという。

4つ目は、中途解約の手続きや精算が複雑になりやすいこと。入会金、月会費、オプション料金、未利用分の料金、キャンペーン割引、解約料と多くの費用が絡むため、解約して初めて高額な請求を受けたり、請求額の計算方法が分からなかったりする例がある。5つ目は、希望する日時に実際に予約が取れるか、担当トレーナーが変わらないかといった利用のしやすさを、契約前に見極めにくいことだ。

ジムの解約トラブルとの違い

国民生活センターはこれまでにも、スポーツジム等の契約トラブルについて2018年10月と2024年1月に注意を呼びかけてきた。今回の資料は、パーソナルトレーニングでも「解約料が高額」「契約を急がされる」といった同じ種類のトラブルが起きていると説明する。そのうえで、一人ひとりへの聞き取りと提案が勧誘の入り口になる点や、関連商品の契約が上乗せされる点で、ジムとは異なる注意点があると位置づけた。

法律上の扱いも分かれる。特定商取引法は、長期間・高額になりやすいサービスを「特定継続的役務提供」として規制している。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、対象はエステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つで、パーソナルトレーニングはこの一覧に入っていない。

一方、エステティックは期間が1か月を超え、金額が5万円を超える契約であれば対象になる。対象の契約は、法律で定めた書面を受け取った日から8日以内なら、書面または電磁的記録でクーリング・オフ(無条件の契約解除)ができ、指定された関連商品の販売契約も一緒に解除できる。8日を過ぎた後の中途解約でも、事業者が請求できる額に上限がある。エステの場合、サービス開始前の解約なら2万円、開始後なら提供済みの分の対価に、2万円か契約残額の10%のいずれか低い額を加えた額までとされている。

国民生活センターの資料も、関連サービスのうち特定継続的役務提供に当たる契約をしている場合には、クーリング・オフを主張できる可能性があると付け加えている。トレーニングと一緒に申し込んだエステがどの契約に当たるのかで、使える救済の手段が変わることになる。

契約前に確かめたい項目

国民生活センターは消費者へのアドバイスとして、まずその場で判断できないときはすぐに契約せず、いったん持ち帰って、自分の経済状況や生活スタイル、無理なく通えるかを考えるよう求めている。

契約前に確認すべき項目として、契約総額、契約期間・回数、自動更新の有無、中途解約の可否と精算方法、解約料や違約金の有無、解約手続きの方法、未利用分の返金、キャンペーン割引が解約時にどう扱われるか、を挙げた。特に長期の契約では「途中でやめたらいくら返金されるのか」「中途解約はいつまでに申し出ればよいか」を具体的に確かめておくことが重要だとしている。

関連商品・サービスを勧められた場合は、本当に必要か、料金はいくらか、解約条件はどうなっているかを確認し、必要がなければきっぱり断るよう促した。予約の方法や変更・キャンセルの条件、利用期限、予約が取れないときの対応、担当トレーナーを変えられるかも事前に確かめておくべき項目に挙げている。

不安を感じたり、トラブルになったりした場合は、最寄りの消費生活センター等に相談するよう呼びかけている。消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、地域の窓口を案内してもらえる。国民生活センターは、国民生活センターが「消費者トラブル解決ナビ」開設 FAQで自主解決を支援、窓口へWebフォーム申し込みも 2025年度の消費生活相談は100.6万件のFAQページも案内している。今回の資料は、消費者庁、内閣府消費者委員会、経済産業省にも情報提供された。