立憲民主党の斎藤嘉隆参院国会対策委員長は10月5日、国会内で記者団の取材に応じ、衆院選で自身を支援しなかった自治体の補助金を「大幅カットした」と述べたと一部で報じられた簗和生農林水産相について「閣僚の資質の問題だ」と指摘し、辞任を要求していく方針を示した。簗農水相は翌6日の記者会見で、問題の発言を撤回して謝罪したと説明した一方、予算の配分に働きかけをした事実はないと否定した。

立憲「公的な予算の私物化、政治的利用」

斎藤国対委員長は、参院の野党国会対策委員長会談を終えた後の取材で、簗農水相に説明責任を求める方針を示した。そのうえで「閣僚の公的な予算の私物化、政治的利用という面があり大きな問題だ。有権者や地方自治体に対するハラスメント、パワハラだ」と断じた。

今後の国会運営については「代表質問でも総理には厳しく任命責任を問う」と述べ、予算委員会の持ち方を含めて辞任を要求していく考えを示した。同じ取材では、消費減税や支援金給付の関連法案の審議方法について「特別委員会での実施も含めて検討していく必要があると申し上げた」として、与党側と協議を続けていることも明らかにしている。消費税をめぐっては党内でも立憲民主党、参院選公約「食料品消費税0%」の転換を議論 政府案は2027年4月から2年間1% 熊谷税調会長「しっかりと議論をした上で」という経過があり、臨時国会の主要な争点になっている。

簗農水相「私の不徳」 撤回・謝罪と、働きかけの否定

簗農水相は10月6日午前の記者会見で、「衆院選で御自身を支持しなかった首長の自治体について、予算を自分でカットしたというような発言」を踏まえて今後の公平な予算編成を約束できるかと問われ、「それぞれの現場の実情というものを、丁寧に把握をさせていただいて、各事業担当において、そうした事業要件に照らして適切に判断をして」執行していくと答えた。支持者かどうかにかかわらず公平かと重ねて問われると、「行政として、当然の在り方」であり「選挙の結果云々ということではなくて、現場の実情に応じて、公平という言葉を使いますけれども、適切に、しっかり対応していく」と述べた。

発言の場については「自民党の党員の関係者の集まりの場であった」として、「そうした党員の方々に、支援に感謝をするといった思いもあって、お話をした」と説明した。そのうえで「私の不徳によりまして、広く皆様に、様々な思いをさせてしまった」と述べ、発言を撤回して謝罪したとした。建設業協会の関係者に「自分の取ってきた予算を何故受注するのか」と述べたとされる点については、「自分で取ってきたということではなくて」「少し行き過ぎたような表現もあったのかなというふうに考えて」いるとした。

一方で、予算の配分そのものへの関与は一貫して否定した。「私から国土交通省に、そういった働きかけをしたという事実はございません」「あくまでも、その予算の箇所付けの状況を確認したということ」と述べ、報じられた交付金の増減は「国土交通省において、適切に判断されている」として、自身は答える立場にないと繰り返した。

4日前は「コメントは控えたい」

簗農水相がこの問題に答えるようになったのは、報道の直後からではない。10月2日の記者会見では、同じ趣旨の質問に対し「大臣就任前の、一議員としての活動に関する事柄については、コメントは控えたい」と繰り返していた。選挙への協力の有無を予算配分の判断材料にしてよいかという一般論の質問にも、「農林水産政策の所管外の話については、回答は控えたい」と答えていた。農水省自身が自治体や農業団体に補助金・交付金を配っている点を重ねて問われた際には、「行政においての様々な事業の執行というものについては、行政の判断において、それはなされている」とだけ述べ、自身の考えには踏み込まなかった。

その後、簗農水相の説明によれば10月5日に発言を撤回・謝罪し、6日の会見では経緯や意図についての質問に応じた。答弁拒否から撤回・謝罪への変化が、数日のうちに起きたことになる。

焦点は「箇所付け」との距離

簗農水相が使った「箇所付け」は、予算を実際に動かす段階の言葉である。予算は国会の議決で総額と項目が決まるが、公共事業や交付金のように「どの地域のどの事業にいくら配るか」は、成立後に所管省庁が割り振る。この作業が箇所付けで、個別の配分先は国会の議決そのものには現れない。だからこそ、政治家が影響力を及ぼす余地がないかという点が過去にも繰り返し国会で問題にされてきた。

今回、簗農水相の説明は「箇所付けの状況を確認した」にとどまり、増減を求める働きかけはしていない、という線を引くものだ。これに対し立憲側は、確認したこと自体ではなく、選挙結果と予算を結びつけて語った点を「予算の私物化」と呼んでいる。報じられた交付金は国土交通省の所管で農林水産省の予算ではないが、農水省も自治体や農業団体に補助金・交付金を配る立場にあり、10月2日の会見でもその点を踏まえた質問が出ていた。

第222回臨時国会は臨時国会は10月5日召集 9月29日の持ち回り閣議で決定し召集詔書を公布 衆院の選挙制度改革と比例定数削減が焦点のとおり10月5日に召集され、高市首相は同日に「人口総合戦略」を年末に策定 高市首相が所信表明演説 人口減少を「静かに進む国難」と位置づけ 「外国人の受入れの基本的な在り方」も検討という所信表明演説を行った。斎藤国対委員長が任命責任を問うとした代表質問は、この演説を受けて行われる。

なお、首相官邸が公開している10月5日から7日までの内閣官房長官記者会見のページには冒頭発言のみが掲載されており、この問題への政府の受け止めは本稿の執筆時点で文字では確認できていない。