中央教育審議会初等中等教育分科会の教育課程部会は10月5日、次期学習指導要領等に向けた「審議まとめ」をとりまとめた。小中学校で、各教科の授業時数を国が定める標準より下回って教育課程を編成できる「調整授業時数制度」の創設が柱の一つで、下回ってよい上限は対象教科の15%程度を想定する。現行の標準授業時数をもとに試算すると、小学校5年で138コマ程度、中学校2年で128コマ程度にあたる。文部科学省は10月6日午後2時から11月5日午後11時59分まで、この審議まとめへのパブリックコメント(意見公募手続)を募っている。

国の審査・指定をなくし「常に利用可能な選択肢」に

学校教育法施行規則は、年間の標準総授業時数と各教科等の標準授業時数を定めている。学校は年度当初の計画段階でそれを確保したうえで教育課程を編成する決まりで、審議まとめは、児童生徒の個性や特性に応じた学びの充実や、学校・地域の実態を踏まえた学びの展開が難しいとの指摘があるとした。

いまも「教育課程特例校制度」と「授業時数特例校制度」を使えば独自の編成はできる。ただし国の審査・指定が要るため「時間や手間がかかり活用しにくい」との声があり、学校や地域の創意工夫の発揮が「特別なこと」になっている実態がある、と審議まとめは記した。標準総授業時数の範囲内で各教科等以外の内容を教育課程に含められない点も制約として挙げた。

調整授業時数制度は、この特例校制度について国への申請を不要とし、各学校の判断で実施できるようにする。審議まとめは「特別な選択肢」ではなく「常に利用可能な選択肢」とする方向を示した。そのうえで、単なる受験対策への傾倒や、教育の質の向上と関連のない教師の活動といった不適切な取組を防ぎ、あった場合には改善を図れるよう担保する仕組みも設ける必要があるとした。

減らせるのは週1コマ超の教科 内容はすべて扱うのが前提

減らしてよいのは、標準授業時数が35コマ(週1コマ相当)を超える教科等に限る。学習の継続性などの観点から週1コマ程度の確保は重要だとして、35コマ以下の教科等は減らせず、減らした結果35コマ未満になる組み方も認めない。授業時数特例校制度では対象外だった総合的な学習の時間は、多様性の包摂という幅広い制度趣旨から調整の対象に加える。

重要なのは、時数を減らしても学習指導要領に示す内容はいずれも取り扱うことが前提である点だ。内容を削るのではなく、同じ内容をより短い時間で扱うことになる。審議まとめは、先行して取り組む学校の多くが、デジタル学習基盤の活用や教師の発話テンポの改善といった授業改善によって「特段の問題を生じさせることなく、1コマ45分を40分に短縮するなどして調整授業時数を生み出している」と説明している。

生み出した時間は他教科の上乗せ、新教科、研究・研修に

生み出した時数(調整授業時数)の使い道は三つある。別の教科等への上乗せ、特に必要な新教科の開設、そして「裁量的な時間」への充当だ。裁量的な時間はさらに、教科等に当てはまらない学習支援などを行う「学習枠」と、授業や指導の改善に直結する組織的な研究・研修等に充てる「研究・研修等枠」の2類型に分ける。児童生徒の学習時間の一部を教職員の研修に振り向けられるようにする点が、現行制度にない特徴になる。

上限は、研究・研修等枠が週1コマ(最大35コマ)程度、裁量的な時間全体で週2コマ(最大70コマ)程度を想定する。減らせる幅を10%とした場合に生み出せる総量は小学校5年で93コマ、中学校2年で86コマで、15%なら小学校5年138コマ、中学校2年128コマになる。小中共通で15%と仮定すると、裁量的な時間に70コマを充ててもなお、小学校で最大68コマ程度、中学校で最大57コマを教科等の上乗せや新教科に回せる計算だ。15%は教育課程全体の約13%にあたる。具体の数字は教育課程企画特別部会で精査を続け、適切なタイミングで決めるとしている。

審議まとめは、こうした余白づくりを週あたりのコマ数の縮減にもつなげたい考えを示す。40週での実施を前提にすれば週28コマの時間割が実現しやすくなり、さらに研究・研修等枠を週1コマ確保することで「週27コマの授業+研究・研修1コマ」を無理なく一般化できる、としている。

先行する68校が下敷き 令和10年度から使えるように

制度設計の下敷きになったのは、研究開発学校制度のもとで先行して取り組んできた学校の実績だ。令和8年4月時点で9都道府県68校あり、標準を下回って編成している調整授業時数の総量は平均で小学校124コマ(14%相当)、中学校126コマ(15%相当)だった。市町村レベルで知見を広げる「サキドリ研究校」は全国332校で、両方を合わせて400校が指定されている。サキドリ研究校では、研究・研修等枠と学習枠の双方に取り組む学校が全体の72%を超え、そのうち55%が週1回以上、学習枠の取組を実施しているという。

全面実施は小学校が令和12年度、中学校が令和13年度からを想定する。ただし早期活用を望む声が大きいとして、令和10年度からの先行実施期間でも、現行の標準授業時数を基礎に調整授業時数制度を使えるようにする方向を示した。サキドリ研究校も今年度中に追加募集し、令和9年度に大幅に増やす。

今回の改訂では、校内外の教育支援センターに通う不登校の児童生徒や、特定分野に特異な才能のある児童生徒を対象とした特別の教育課程(いわゆる「2階部分」)の創設も検討されており、これも先行実施期間から使えるようにすべきだとした。審議まとめは、令和6年度の小中学校の不登校児童生徒数が約35万人と過去最多である点を挙げ、「極めて憂慮すべき状況」と記している。少子化により児童生徒の数が減少する一方で、学校が抱える実態は多様になっている(小学生は565万4461人で過去最少、中学生も306万31人で過去最少 1958年のピーク1349万2千人の42%に 大学生は300万542人で過去最多)。

授業時数をめぐっては、情報活用能力を高めるため、中学校に「情報・技術科」、小学校の総合的な学習の時間に「情報の領域」を新設する方向も示されている。文部科学大臣の諮問が「年間の標準総授業時数を現在以上に増加させない」ことを前提としているため、新教科・領域の分をどう確保するかが同時に問われることになる。諮問は令和6年12月に行われ、次期学習指導要領は令和10年度以降に順次実施される予定だ。