政府は10月27日の閣議で、令和8年度一般会計予備費から533万8000円を使うことを決めた。使途は「彬子女王殿下に対して支出する年額による皇族費に必要な経費」で、皇室費に計上する。3日前の10月24日には皇室典範等の一部を改正する法律(令和8年法律第66号)が施行され、皇室経済法が定める女性皇族の皇族費が男性皇族と同じ算式に改められていた。
皇室費に533万8000円、事項は1件だけ
財務省が公表した閣議決定の文書は1ページで、事項は「皇室費」の1件だけだった。彬子女王殿下に支出する年額による皇族費に必要な経費として、533万8000円を予備費から使う。官邸の定例閣議案件では、財務省所管の一般案件「令和8年度一般会計予備費使用について(決定)」として載った。
文書は金額と事項名を示すだけで、算定の内訳や、当初予算で足りなくなった理由の説明は付いていない。
皇族費は皇室経済法第3条が定める皇室の費用の一つで、ほかに天皇・上皇や内廷にある皇族の日常の費用に充てる内廷費(令和8年度の定額は3億2400万円)と、宮廷費がある。宮内庁によると、皇族費は「皇族としての品位保持の資に充てる」ために各皇族に年額で支出するもので、支出された分は各皇族の御手元金となり、宮内庁の経理する公金ではない。令和8年度の当初予算での総額は2億5529万円だった。
改正法で内親王の額が倍に、女王も同じ割合で増える
年額の皇族費は、法律で定める「定額」に、皇族の身分と独立の生計を営むかどうかに応じた割合を掛けて決まる。定額は皇室経済法施行法第8条で3050万円と定められている。
改正前の皇室経済法第6条第3項は、独立の生計を営む親王には定額相当額を、独立の生計を営む内親王には「定額の二分の一に相当する額」を支出すると定めていた。同じく独立の生計を営む皇族でも、女性は男性の半額だった。改正後の同項第1号は「独立の生計を営む親王及び内親王に対しては、定額相当額の金額とする」となり、内親王の区分は親王と同じ号にまとめられた。
王・王妃・女王の年額は、親王・親王妃・内親王に準じて算出した額の10分の7とする規定で、この割合は改正の前後で変わらない。このため、独立の生計を営む女王の年額も内親王の引き上げに連動して倍になる。独立の生計を営まない成年の皇族は男女とも定額の10分の3(王・女王はさらに10分の7)で、改正の影響を受けない。
| 区分(独立の生計を営む皇族) | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 親王 | 3050万円 | 3050万円 |
| 内親王 | 1525万円 | 3050万円 |
| 王 | 2135万円 | 2135万円 |
| 女王 | 1067万5000円 | 2135万円 |
出典: 皇室経済法第6条第3項(改正前・改正後)、皇室経済法施行法第8条
改正法は、内親王と女王が天皇・皇族以外の男子と結婚しても皇族の身分を離れないことと、旧皇族の男系男子の子孫を養子に迎えられることを柱としている。皇族費の算式の改正は、同じ法律の第2条による皇室経済法の改正として行われた。改正までの経緯は改正皇室典範、10月24日に施行 木原官房長官が令和3年の有識者会議に結果報告 「79年ぶりの本格改正」で伝えた。
当初予算は改正前の算式で計上
宮内庁が4月に公表した「皇族費の各宮家別内訳(令和8年度)」は、改正前の算式によっている。「独立の生計を営む女王」の欄は「定額×1/2×7/10」で、1人当たり年額1067万5000円。この欄に計上されているのは三笠宮家の1人分だけだった。三笠宮家にはこのほか、「独立の生計を営まない王及び女王(成年)」の欄で640万5000円が計上され、家としての計は1708万円だった。内訳表に個人名は載っていない。
改正後の算式では、独立の生計を営む女王の年額は定額の10分の7にあたる2135万円になる。当初予算の1067万5000円との差は、年1067万5000円。今回の533万8000円は、この差の半分(533万7500円)を千円単位に丸めた額と一致する。ただし財務省の文書は算定根拠を示しておらず、施行日以降の何か月分として計算したのかは、公表資料では確認できていない。
なお、宮内庁の内訳には「独立の生計を営む内親王」の欄自体がなく、改正で年額が上がる区分に計上されていたのは、この女王の欄の1人分だけだった。今回の閣議決定の事項も、彬子女王殿下に対する皇族費の1件に限られている。
独立の生計の認定は皇室経済会議が担う
皇族が独立の生計を営むかどうかは、本人や宮内庁の判断だけでは決まらない。皇室経済法は、皇族が初めて独立の生計を営むことの認定に「皇室経済会議の議を経ることを要する」と定めている。皇室経済会議は衆参両院の議長・副議長、内閣総理大臣、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長の8人で構成し、内廷費・皇族費の定額の変更もここで扱う。
皇族が初めて独立の生計を営む際には、年額とは別に、その年額の2倍にあたる一時金も支出される。皇族の身分を離れる際の一時金は、独立の生計を営む皇族の年額の10倍を超えない範囲で、皇室経済会議の議を経て定める。改正法の附則は、施行の時点で内親王・女王である人が結婚と同時に皇族の身分を離れる場合の一時金について、改正前の規定を引き続き適用するとしている。
予備費の残額は7089億円
令和8年度一般会計の予備費は1兆5135億462万5000円で、今回の閣議決定までの使用累計は8045億8497万8000円だった。今回の533万8000円を差し引いた残額は7089億1430万9000円となる。予備費は憲法第87条に基づき、予見し難い予算の不足に充てるために設けられ、内閣の責任で支出して事後に国会の承諾を得る。今年度は10月6日にも予備費32億円、全額がクビアカツヤカミキリの防除 10月6日に閣議決定 環境省27億円・農水省5億円 被害は22都府県・300超の市町村へを決めている。
今回の決定は、法改正で額が変わった皇族費を、年度の途中で予備費から補ったものだ。
