経済産業省と日本貿易振興機構(JETRO)は10月27日、セルビアの首都ベオグラードで2027年に開かれる国際博覧会(ベオグラード万博)の開幕まで200日となったのに合わせて記者会見し、日本館のPRアンバサダーにセルビア出身の元サッカー選手・監督、ドラガン・ストイコビッチ氏が就任したと発表した。日本館に協賛する企業・団体の第1弾として15社も公表した。会見には駐日セルビア大使、経産省、ベオグラード万博日本政府代表らが出席した。

「ピクシー」が3組目のPR大使に

ストイコビッチ氏は「ピクシー」の愛称で知られる。経産省の発表によると、1994年にJリーグの名古屋グランパスエイトに加入し、Jリーグ草創期を代表する選手として活躍した。のちに同クラブの監督となり、2010年にクラブ初のJリーグ優勝に導いた。2015年には日本のサッカー界と日本・セルビア関係への貢献で旭日小綬章を受けている。セルビア代表監督としては、2022年のFIFAワールドカップと欧州選手権(EURO2024)の出場を果たした。

日本館のPRアンバサダーはこれで3組目になる。経産省は、スポーツ、音楽、文化を通じて日本とセルビア、日本と世界をつなぐ人を選んでいると説明している。6月10日の第1弾では、セルビア交響楽団の首席客演指揮者を務める指揮者の志村健一氏と、大阪・関西万博で「いのちの遊び場 クラゲ館」をプロデュースした音楽家・数学者の中島さち子氏が就いた。10月8日の第2弾では、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」とサンリオの「ハローキティ」が任命された。

会見ではストイコビッチ氏から寄せられたビデオメッセージが流された。同氏は日本を「特別な場所」と呼び、選手として、監督として人生で特に大切な年月を過ごしたと振り返った。そのうえで「サッカーは『遊び』から始まります」と述べ、国や文化、言葉が違ってもピッチの上では関係なく、「ともにプレーし、ともにつながることができる」と語った。日本館のテーマ「ともにあそび、つながる」に深い共感を覚えるとしている。

協賛は三菱商事・村田製作所など15社

協賛の第1弾として公表されたのは次の15の企業・団体(五十音順)。

協賛企業・団体(第1弾)
KAORUKO
Q-STAR(量子技術による新産業創出協議会)
京セラドキュメントソリューションズ
JTB
ZIZO
Studio
タカラトミー
TAフロンティア
どさんこしまんちゅプロジェクト事務局
TOYO TIRE
マキシン
三菱商事
村田製作所
LIXIL
ワイドレジャー
ベオグラード万博日本館の協賛企業・団体(第1弾)

出典: 経済産業省「ドラガン・ストイコビッチ・ピクシー氏の日本館PRアンバサダー就任、日本館協賛企業第一弾を発表しました」(2026年10月27日)

総合商社、電子部品、住宅設備、タイヤ、玩具、旅行と業種は幅広く、量子技術の業界団体も名を連ねる。経産省は、各社の技術や知見、ネットワークを生かして日本館の魅力発信や来場者の体験を高めるだけでなく、日本館への参加を通じて新たなネットワークの形成や事業機会、市場開拓につなげたいとしている。

運営には複数の省庁が関わる。農林水産省と国税庁が「特別協力」、外務省と文部科学省が「関連省庁」として名を連ねる。文科省は副幹事省を務める。

あそびの知恵と次世代技術を組み合わせた体験型展示

日本館のテーマは「ともにあそび つながる 日本のあそび心」。会見での説明によると、日本古来のあそびやからくりの知恵と次世代技術を組み合わせ、来館者が体験し参加できる展示にする。さらに週替わりで、協賛企業・団体や農林水産省による特別展示を開き、日本の伝統、文化、コンテンツ、技術、日本食などを紹介する。

テーマの考え方は、経産省が2025年10月27日に策定した日本館基本計画に示されている。計画は、ベオグラード万博のテーマ「人類のためのあそび」を、世界が分断の様相を深めるなかで普遍性を持つテーマだと位置づけた。そのうえで、大阪・関西万博に出展したセルビア館が、大阪のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を次のベオグラード博の「あそび」へつなぐ展示をしたことに触れ、日本館は大阪・関西万博のテーマと、そのレガシーとなった「多様でありながら一つ」のコンセプトを「あそび」の中に取り込むことで「セルビアへの返礼としたい」としている。

計画は「あそび」に余白や余裕という意味も含まれるとし、ユーモアやおかしみといった心のゆとりが、日本社会で世代を超えて習慣や知恵として受け継がれてきたと説明する。こうしたあそびの諸相を紹介する展示を、総称して「日本のあそび心」と名付けた。5月に決まった日本館のロゴ・シンボルマークも、1枚の紙から生まれる「切り絵の花」を図案にしたもので、切り離されているように見えて実はひとつにつながる構造が、テーマを表すとされる。制作したのはグラフィックデザイナーの小林一毅氏で、指名型のデザインコンペで選ばれた。

ベオグラード万博とは

ベオグラード万博は、博覧会国際事務局(BIE)が認定する「認定博覧会」で、テーマは「人類のためのあそび:すべての人のためのスポーツと音楽」。会期は2027年5月15日から8月15日までの3か月。PRアンバサダーの中島氏は6月の就任時のコメントで、ベオグラード万博を「万博史上初めて『あそび』をテーマとする」と表現した。

日本政府は経産省を幹事省、文科省を副幹事省とし、JETROを参加機関として公式参加する。基本計画は、大阪・関西万博の開催国だった日本が閉幕後に初めて参加する万博だと位置づけている。

準備はこの1年で段階を踏んで進んできた。

時期 出来事
2025年10月27日 日本館基本計画を策定、テーマを決定
2026年5月15日 開幕1年前に日本館のロゴ・シンボルマークを決定
2026年6月10日 ベオグラードで公式参加契約に署名、PRアンバサダー第1弾(志村氏・中島氏)就任
2026年10月8日 PRアンバサダー第2弾(ミャクミャク・ハローキティ)就任
2026年10月27日 開幕200日前の会見、第3弾のストイコビッチ氏就任と協賛第1弾15社を発表
ベオグラード万博日本館の準備の経過

出典: 経済産業省の報道発表(2025年10月27日、2026年5月15日、6月11日、10月8日、10月27日)

参加契約は6月10日、ベオグラード市内で開かれた署名式で、吉村佐知子・陳列区域日本政府委員と主催者のEXPO 2027 BELGRADE d.o.o.との間で結ばれた。セルビア政府のヤゴダ・ラザレビッチ通商相と堤尚広・駐セルビア大使が立ち会った。

日本館の運営は、大阪・関西万博の人材と発信の仕組みを引き継ぐ形で進んでいる。経産省によると、総合プロデュースチームには2015年のミラノ万博、2021年のドバイ万博、大阪・関西万博に参画してきたクリエイターが集まった。大阪・関西万博日本館のSNSアカウントも、今後の万博の日本館の情報発信用アカウントとして使い続けることになった。PRアンバサダーにミャクミャクを任命した際、経産省は、大阪・関西万博と同万博日本館で育んだ理念や取り組みを「一過性のものとせず」、ベオグラード万博日本館へ継承する象徴だと説明している。

日本館は、3組のPRアンバサダーと協賛企業の発信を通じて、日本とセルビア両国へ日本館と万博の魅力を伝えるとしている。経産省は具体的な出展計画をSNSや報道発表で順次公表するとしており、開幕までの約200日で、展示の詳細や追加の協賛先がどう固まるかが次の焦点になる。