情報通信審議会電気通信事業政策部会の接続政策委員会は10月27日、オンラインで第86回会合を開き、電話の「音声接続料」を通信会社どうしで払い合わない「ビル&キープ方式」に移す際の移行期間と、移行するまでの接続料の算定方法について、NTT東日本・西日本、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクから意見を聴いた。総務省が同日、各社の説明資料を公表した。原則化の時期では、ソフトバンクが2029年度の導入は可能だとしたのに対し、NTT東西は2031年度頃になると想定するなど、各社の主張は分かれた。

「遅くとも2031年度」から前倒しできるか

電話をかけると、発信側の通信会社は、着信側の会社の網を使った費用を音声接続料として支払い、その費用を利用者からの通話料で回収している。ビル&キープ方式は、この精算をやめ、各社が自社の網の費用をすべて自分で負担する仕組みだ。

審議会は9月の第一次答申で、ビル&キープ方式を原則とし、全事業者一律に「遅くとも2031年度に係る接続料から」適用することを目処として検討を続けるのが適当だとした(通話の「接続料」廃止へ 通信会社が互いに払い合う仕組み、2031年度をめどに全社一律で終了 情報通信審議会が答申)。答申は、移行期間を設け、必要に応じて「激変緩和措置」を取ることも適当としていた。

委員会の事務局は今回の資料で、一部の事業者から可能な限り速やかに導入すべきだとの意見が出ていることを挙げ、「適用時期を必要以上に後ろ倒しする合理的理由は無く、可能な限り早期に実施することが適当」との考えを示した。そのうえで、移行期間を求める事業者には、料金戦略の見直し、精算システムの改修、事業者間の接続協定の変更、利用者への周知のそれぞれに何年かかるのかを、定量的に説明するよう求めた。精算システムについては、一般的なソフトウェアの耐用年数が5年であることを踏まえれば、システムを捨てる損失の影響は大きく減っているとの指摘があることにも触れている。

導入時期、2029年度と2031年度頃に分かれる

最も早い時期を示したのはソフトバンクだ。資料で、片務的な通話(一方からしか発信されない構造の通話)の精算方法は2026年度中に、移行期間中の接続料の算定方法は2027年度の早い時期に委員会で取りまとめられる予定だと指摘。その後1〜2年でシステム対応や接続協定の変更を進めれば「2029年度の導入が可能」とした。

KDDIは「移行期間は不要(激変緩和措置も不要)で直ちにB&K方式の原則化を進めても問題ない」と主張した。片務的な通話の精算方法が、システム改修を要しない形で整理されれば、各社とも速やかに対応できるとしている。

これに対しNTT東西は、法制度の整備、料金戦略の見直し、精算システムの改修、接続約款・接続協定の変更、利用者への周知のそれぞれに一定の期間が要るとして、原則化は「順調に各プロセスが進捗した前提で2031年度頃」になると想定した。工程表では、法改正に審議会の二次報告書の取りまとめ以降1年程度、システム改修に法整備後1〜2年程度、料金を変える場合の周知に約1年をそれぞれ見込んだ。ビル&キープ方式は接続料の請求権を放棄させる強い規制だとして、反対する事業者にも一律に適用されるよう、電気通信事業法で措置することを前提条件に挙げた。

ドコモは、システムの改修・開発に1〜2年程度、利用者への周知とシステム改修に最大1年程度などの見込みを示した。ただ、表に記した期間は「大胆な見込み」で、事業者間で議論する精算の仕様によって変わるとしている。

接続料を段階的に下げるか

移行期間中に接続料を少しずつ下げていく激変緩和措置についても、各社の考えは異なった。

NTT東西は導入すべきではないとした。ビル&キープ方式は現行の仕組みの延長線上にはなく、両者の間の「中間解としてなじまない」と説明。着信が多く、方式の導入で収支が悪化する事業者に配慮する目的であれば、段階的な引き下げはその悪化を前倒しで生じさせ、かえって事業の継続を妨げかねないとも指摘した。

ドコモも、段階的な引き下げは事業者間の接続料収支への影響を広げ、公平性を損なうおそれがあるとした。収支が悪化する事業者への配慮が目的なら、十分な移行期間を設ける方が有効だとし、措置を求める事業者が内容と効果を明らかにしたうえで議論すべきだと求めた。

ソフトバンクは、激変緩和措置を前提とせず早期の実現を最優先すべきだとしつつ、措置の必要性が具体的に示された場合には、導入時期を遅らせない範囲で「グライドパス方式」のような手法なら実施できるとした。2026年度に適用する接続料を起点に、導入年度に0円となるよう引き下げ幅をあらかじめ決めておく方式で、毎年度の接続料の算定が要らなくなる利点を挙げた。

KDDIは独自の案を出した。原則化までの間、携帯・固定を問わず全事業者の音声接続料を、現行で最も低いNTT東西の統一単金の水準にそろえ、2027年度から固定するというものだ。規制のコストをかけずに原則化後の環境に近づけられ、中小事業者への悪影響もないと説明した。

事務局は、仮に激変緩和措置を実施する場合は、特定の事業者だけを対象とせず、全事業者に一律に適用するのが適当だとの考えを示している。

移行までの算定方法、LRICを巡り対立

激変緩和措置を取らない場合に、原則化までの接続料をどう算定するかも論点になった。答申は、現行の長期増分費用(LRIC)方式を続ける案、実際にかかった費用に基づく「実績原価方式」へ速やかに移る案、段階的に引き下げる案の3つを示していた。LRIC方式は、現時点で利用できる最も低廉で効率的な設備と技術を使うと仮定して費用を計算する方式だ。

各社の主張を整理すると、次のとおりになる。

会社 原則化の時期 激変緩和措置 移行までの算定方法
NTT東西 2031年度頃と想定 導入すべきでない LRICを直ちに廃止し実績原価へ
ドコモ 期間は精算の仕様次第 慎重に議論。移行期間の方が有効 実績原価が適当
KDDI 移行期間は不要 不要。置くなら全社の接続料を統一・固定 統一単金で固定を提案
ソフトバンク 2029年度に導入可能 前提とせず。置くならグライドパス LRICを維持
接続政策委員会(第86回)での各社の主な主張出典: 総務省「接続政策委員会(第86回)配布資料」(各社説明資料)

NTT東西は、LRIC方式は「既にその役割を終えている」として、ビル&キープ方式の導入とは関係なく直ちに廃止するよう求めた。加入電話の通話時間はLRIC方式の導入時から97%減り、2000〜2025年度の26年間で実際の費用に比べ累計8385億円を回収できずに負担してきたと説明。固定電話の設備(メタル収容装置)の維持・運営費は25年間で92.0%(約1.2兆円)減らしたとして、実績原価方式に移る際には、将来の効率化分を先取りして接続料から差し引く案も示した。

ドコモも実績原価方式が適当だとした。実績原価に移るとNTT東西の接続料は上がる試算があり、収支が悪化する事業者もいる一方で改善する事業者もあるため、円滑な移行の観点からどちらが有効かを一概に言うのは難しいとも述べている。

ソフトバンクは、原則化までの限られた期間に新しい算定方式を導入せず、LRIC方式を維持すべきだと主張した。LRIC方式による接続料が他社との協議で「ベンチマーク機能」を果たしているとして、実績原価方式に移ればその機能が失われると指摘した。

片務的な通話の扱いが前提に

会合ではもう一つの議題として、「接続等に関し取得・負担すべき金額に関する裁定方針」の第3項で使われているLRIC方式に代わる手法の在り方についても意見を聴いた。

KDDIは、片務的な通話の精算方法について、有志の事業者による協議の場で2027年3月末ごろまでに一定の結論を得ることを目指して検討中だと説明した。精算方法が決まる前に想定される課題を整理しても、決まった精算方法の内容次第では裁定に至る可能性が極めて低くなり、検討に要した事業者・行政のコストが無駄になりかねないとして、精算方法が確定した段階で検討する進め方が望ましいとした。

事務局は、各社の意見を踏まえ、移行期間の有無と必要な長さ、激変緩和措置の要否と手法、措置を取らない場合の算定方法について、必要性と合理性を検討するとしている。移行期間を長く求める側には、その理由を数字で示すことが求められる。ソフトバンクの2029年度とNTT東西の2031年度頃との間には2年ほどの開きがある。