茂木敏充外相は10月15日午後5時30分から約20分間、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相と電話で会談した。外務省が同日発表した。茂木氏は、10月以降、イエメンのホーシー派の攻撃でサウジアラビア国民をはじめ多くの犠牲者が出ていることに哀悼の意を表し、サウジ国内にいる日本人の保護への協力を要請した。ファイサル外相は、日本がホーシー派に厳しく対応し、サウジへの連帯を示していることに謝意を述べ、邦人保護に協力する意向を示した。

外務省は会談の前日にあたる14日、サウジアラビアの危険情報を引き上げ、同国全土を「不要不急の渡航は止めてください」とするレベル2以上に指定している。

冒頭で哀悼、攻撃を「決して容認できない」

外務省の発表によると、茂木氏は会談の冒頭で犠牲者への哀悼とともに、負傷者の一刻も早い回復を祈念すると述べた。続けて、民間人や民間施設への攻撃は決して容認できないとの立場を示し、日本の取り組みを説明した。説明の中身は三つある。ホーシー派による一連の攻撃を強く非難していること、ホーシー派に事態のエスカレーションを直ちに控えるよう強く求めていること、そしてイランに対しても、ホーシー派に自制を働きかけるよう直接要請していることだ。

茂木氏はまた、サウジアラビアがイエメンを含む中東地域の平和と安定のために最大限の努力をしていることに敬意を表した。そのうえで、イエメンの安定と平和は政治的解決によってのみ実現できるとし、ホーシー派が一刻も早く国連主導の政治プロセスに戻るよう、日本としても外交努力を重ねていくと伝えた。

ファイサル外相からは、今回の事態を踏まえたイエメン情勢へのサウジ側の対応と、米国とイランの協議を含むイラン情勢の見通しについて説明があった。両外相は、中東地域全体の中長期的な平和と安定の確保に向けて緊密に連携していくことで一致した。

9月から続く攻撃、10月は空港が標的に

サウジアラビアは南部でイエメンと国境を接し、その国境地帯には以前から渡航中止勧告が出ている。外務省の海外安全ホームページが出してきた注意喚起をたどると、今回の会談に至るまでの経過が見えてくる。

9月16日の注意喚起によると、ホーシー派は9月8日から9日にかけて、同派の拠点への空爆に対する報復として、サウジ南部各地のエネルギー関連施設などの民間施設や軍事施設を攻撃した。ホーシー派は11日までに、イエメンの紅海沿岸部一帯を制圧した。

10月に入ると攻撃の範囲が広がった。10月5日時点の注意喚起では、ホーシー派が4日と5日に首都リヤドを含む各地のエネルギー関連施設を攻撃したとする声明を出した。同じ5日には、イエメン正統政府がホーシー派の支配地域の奪還を目的とする軍事作戦の開始を発表している。

その後は空港への攻撃が続いた。10月9日時点の注意喚起によると、サウジ政府は7日、南部アブハーとリヤドの国際空港が攻撃され、両空港で外国人計3人の死亡を含む死傷者が出たと発表した。リヤドの国際空港では8日以降、多くの航空便が欠航や遅延となった。さらに14日の危険情報によると、10日にはリヤドのキング・ハーリド国際空港への攻撃で外国人を含む12人が死亡し、300人以上が負傷した。翌11日にも同空港と東部ダンマームの国際空港が攻撃され、リヤドの空港で外国人1人が死亡、11人が負傷した。

日付 外務省の注意喚起・危険情報に記された出来事
9月8〜9日 ホーシー派がサウジ南部のエネルギー関連施設などを攻撃
10月4〜5日 ホーシー派がリヤドを含む各地のエネルギー関連施設を攻撃したと声明
10月5日 イエメン正統政府がホーシー派支配地域の奪還作戦の開始を発表
10月7日 サウジ政府、アブハーとリヤドの空港への攻撃で外国人計3人が死亡と発表
10月10日 リヤドのキング・ハーリド国際空港への攻撃で12人死亡、300人以上負傷
10月11日 リヤドとダンマームの空港を攻撃、リヤドで外国人1人死亡・11人負傷
10月14日 外務省がサウジの危険レベルを引き上げ、全土がレベル2以上に

外務省、サウジ全土を「レベル2以上」に

外務省は10月14日、それまで危険レベル1(十分注意してください)だった北部国境州、ジャウフ州、タブーフ州、ハーイール州、カシーム州、西部のマディーナ州とマッカ州、南部のバーハ州をレベル2(不要不急の渡航は止めてください)に引き上げた。これでサウジアラビア全土が危険レベル2以上になった。リヤド州と東部州の全域などは以前からレベル2で、東部州・アシール州・ナジュラーン州・ジャーザーン州のイエメンとの国境地帯はレベル3(渡航は止めてください。渡航中止勧告)が続いている。

危険情報は、当面の間、真に必要な場合を除いてサウジ国内の空港の利用や空港に近づくことを厳に避けるよう求めている。渡航を予定している人には、渡航の延期も含めて必要性を慎重に検討するよう呼びかけた。エネルギー関連施設や軍事施設には近づかず、遠くからでも写真や動画を撮らないよう注意している。

外務省の基礎データによると、サウジアラビアに住む日本人は2026年2月時点で723人いる。危険情報は、困ったことや支援が必要なことがあれば、在サウジアラビア日本大使館、在ジッダ日本総領事館、外務省領事局に連絡するよう呼びかけている。

海峡の安定とイラン、湾岸への協力計画

会談では、中東の海上交通にも話が及んだ。茂木氏は、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の早期の安定回復に向けて、サウジを含む国際社会と緊密に連携していきたいと述べた。イラン情勢については、外交的解決の実現に向けて関係国と連携し、環境づくりに努めていく考えを伝えた。

日本は10月に入り、同じ方向の働きかけを重ねている。茂木氏は1日のイランのアラグチ外相との電話会談で、両海峡での自由で安全な航行の回復の重要性を強調し、イランに建設的な対応を求めた。6日には、イエメンの人道状況の悪化と周辺国への影響を受けて、イエメンとジブチに合計1,000万米ドルの緊急無償資金協力を行うと決めた(イエメンとジブチに緊急無償資金協力1,000万ドル 外務省が決定 内訳はイエメン800万・ジブチ200万、WFPなど国連4機関経由で食料と保健)。外務省はこの決定の理由に、日本を含む国際社会のエネルギー安全保障の観点から極めて重要なバブ・エル・マンデブ海峡を含む中東の平和と安定を挙げている。

茂木氏は15日の会談で、日本がまとめている湾岸協力会議(GCC)諸国の経済・エネルギー強靱(きょうじん)化に向けた包括的な協力計画の進み具合も説明した。この計画は、2日に来日したカタールのムハンマド首相兼外相との会談でも、イラン情勢を受けて取りまとめていると伝えていたものだ。ファイサル外相は、GCC諸国の経済・エネルギー強靱化に向けて日本と緊密に協力していきたいと応じた。

原油の約4割を頼る相手国

サウジアラビアは、日本のエネルギー調達でも大きな位置を占める。外務省の基礎データによると、サウジアラビアは日本にとって最大の原油供給国で、日本は輸入原油の約4割をサウジから調達している。財務省の貿易統計に基づく2024年のサウジから日本への輸出は約4兆5,157億円で、主な品目は原油とその製品、化学製品など。日本からサウジへの輸出は約9,178億円で、輸送用機器や一般機械、鉄鋼が中心だ。

サウジ側から見ても、石油は国の土台にあたる。基礎データは、サウジアラビアを世界最大級の石油埋蔵量・生産量・輸出量を持つエネルギー大国と位置づけ、輸出総額の約7割、財政収入の約6割を石油に頼っていると記す。原油の生産量は2025年に日量912万バレル(国際エネルギー機関=IEAの石油市場報告による)。外務省の注意喚起によると、ホーシー派は9月8〜9日にサウジ南部のエネルギー関連施設などを攻撃し、10月4〜5日にもリヤドを含む各地のエネルギー関連施設を攻撃したとする声明を出している。

外務省の危険情報は、ホーシー派によるサウジへの攻撃やイエメン国内の戦闘は今後も続く可能性があり、情勢の先行きは依然として不透明だとしている。