外務省は10月6日、イエメンの人道状況の悪化と周辺国への影響の拡大を受け、イエメンとジブチに対して合計1,000万米ドルの緊急無償資金協力を実施することを決めたと発表した。世界食糧計画(WFP)、赤十字国際委員会(ICRC)、国際移住機関(IOM)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の4機関を通じ、食料や保健などの分野で人道支援を行う。
内訳は国別・機関別・分野別に明示
発表文の末尾に付いた参考資料によると、イエメン向けが計800万米ドル、ジブチ向けが計200万米ドルだ。イエメン分はWFPが食料に300万米ドル、ICRCが保健と水・衛生に300万米ドル、IOMがシェルターと生活必需品に200万米ドル。ジブチ分はUNHCRが保護・シェルター・生活必需品に充てる。担当部局として中東アフリカ局中東第二課、アフリカ部アフリカ第二課、国際協力局緊急・人道支援課の3部局が挙げられている。
緊急無償資金協力は、紛争や災害で生じた緊急の人道ニーズに対し、日本政府が国際機関などを通じて資金を出す政府開発援助(ODA)の枠組みだ。相手国政府に渡すのではなく、現地で動いている機関の事業費に充てる形をとるため、分野と実施主体を決めたうえで比較的早く支援に着手できる。
発表の前日、UNHCRは「8月以降17万4千人超が新たに避難」
UNHCRが10月5日付で公表したイエメン情勢の緊急更新(第3号。ジブチ・ソマリア・イエメンを対象)によると、8月1日以降にイエメン国内で17万4千人を超える人が新たに家を追われた。東アフリカへは3,986人が到着し、うち3,799人がジブチ北部オボックの難民、187人はUNHCRの自主的帰還支援でイエメンからソマリアへ戻ったソマリア難民だった。新たに到着した人の75%は女性と子どもで、1世帯の平均人数は3.8人。イエメン国内の避難世帯の6人より小さく、UNHCRは家族の一部を残して離れざるを得なかった人が多いことを示すとしている。
戦線が紅海の要衝に及んだ経緯はイエメンの戦線、紅海の要衝バブエルマンデブ海峡へ 国連「情勢は不安定さを増している」 2週間で子ども5万7千人が避難、243校が閉鎖で、避難の立ち上がりの速さはイエメンの避難民12万9438人に IOM集計 18日からの3日間で1万1352人増 タイズ県だけで7万3494人で扱った。
受け入れ側の負荷も続いている。オボックでは9月29日から10月3日までに78人が新たに到着した。燃料不足で移動と家族の再会が妨げられており、県知事は世帯主が一度イエメンに戻って扶養家族を連れ帰れる仕組みを近く設けると表明したという。マルカジ難民キャンプでは985世帯に284のテントが提供され、水道の接続工事が続いている。ジブチでは政府が対応を主導し、UNHCRが支援に回る形をとっている。
資金の充足率は2割前後
UNHCRは同じ更新で、2026年10月から2027年3月までのイエメン・ジブチ・ソマリアでの地域対応と備えに3,240万米ドルを求めているとした。イエメンでの2026年の所要額1億9,360万米ドルに対する充足は19%で、現金給付と保護活動が制約を受けている。より広いイエメン人道対応計画(YHNRP)2026も、必要額21億6,000万米ドルに対し22%近くにとどまる。ジブチは所要額1,260万米ドルに対し27%、ソマリアは1億1,000万米ドルに対し13%だ。今回のジブチ向け200万米ドルは、ジブチの年間所要額1,260万米ドルの6分の1強に当たる規模になる。
食料の状況は深刻だ。WFPは国別ページで、イエメンでは1,830万人が深刻な食料不安に直面し、5歳未満の子ども220万人が急性栄養不良にあるとしている。国内避難民は520万人で、総人口4,180万人のうち2,200万人が長引く紛争と気候災害、感染症の流行、経済の悪化が重なった影響下にあるとする。一方でWFPは、国連事務総長の指示による国連活動の一時停止に沿い、フーシ派が事実上支配する地域での活動を停止している。支援を届ける経路そのものが限られている。
外務省はエネルギー安全保障にも言及
外務省は今回の支援の理由として、イエメンとジブチで生じている緊急人道ニーズと並べて、「我が国をはじめとする国際社会全体のエネルギー安全保障の観点からも極めて重要なバブ・エル・マンデブ海峡を含む中東地域の平和と安定のため」と記した。人道支援の文脈に、海上輸送路の安定という日本自身の利害を明示した書き方になっている。
イエメンとジブチはこの海峡を挟んで向かい合う。UNHCRの集計が示すとおり、避難はすでに海峡を越えてジブチ側に及んでおり、今回の支援が両国を一体で対象にしたのはその現状を反映している。外務省は「引き続き、関係国や関係機関と緊密に連携して、中東及びジブチを含めたアフリカの角地域における人道状況の改善及び平和と安定に向けて貢献していく考えです」としている。
