厚生労働省は11月2日、市販されている防毒マスクの一部製品で、吸収缶を取り付けるための締め付けリングとマスク本体との接合部分のかみ合わせが固く、締め込みにくい場合があると発表した。製造したのは興研株式会社(東京都千代田区)で、同社は同日、2026年7〜9月に製造した一部ロットで締め付けリングの寸法にばらつきが生じていたと明らかにした。リングが適切に取り付けられていないまま使うと、マスク本体と吸収缶との間の気密性が確保されず、防毒マスクの性能に影響する可能性がある。興研は対象ロットのリングを正常品(対策品)に交換する。
吸収缶を留めるリングが締め込みにくい
防毒マスクは、有害なガスなどを吸収缶で取り除いた空気を吸い込む保護具だ。厚労省の説明によると、不具合が見つかった製品は、マスク本体に吸収缶を取り付けるとき、締め付けリングを締め込んで吸収缶を固定し、マスク本体のパッキンと吸収缶との間の気密を確保する構造になっている。
このリングと本体の接合部分のかみ合わせが固く、締め込みにくい場合があることが分かった。厚労省は、リングを適切に取り付けずに使用した場合はマスク本体と吸収缶との間の気密性が確保されず、「防毒マスクの性能に影響を及ぼす可能性があります」としている。
興研は調査の結果、2026年7月から9月に製造した一部ロットでリングの寸法にばらつきがあったと説明した。同社は、リングを奥までしっかり締め込めば気密性が確保できることは確認済みだとしつつ、「お客様の安全を第一と考え、万全を期すため」に、対象ロットのリングを対策品へ交換すると決めた。対象ロット以外の製品はすでに再発防止策を講じており、問題なく使えるとしている。
対象は「サカヰ式R-5」系の4製品、青色シールで見分け
厚労省の発表によると、回収などの対象は次の4製品。いずれも興研の製品で、検定合格番号は第TN421号または第TN422号だ。
| 型式名称 | 検定合格番号 | 製造期間 |
|---|---|---|
| サカヰ式R-5-08型 | 第TN421号 | 2026年7〜9月 |
| サカヰ式R-5-RA-08型 | 第TN421号 | 2026年8月 |
| サカヰ式R-5X-08型 | 第TN422号 | 2026年8月 |
| R-5箱入・交換部品セット | - | 2026年8〜9月 |
R-5-RA-08型はR-5-08型から、後頭部で支えるポリバンドの材質を変えたもの。R-5X-08型はR-5-08型の、マスクの紐を2点止めから4点止めにしたものだ。交換部品セットについて、興研のお知らせは「R-5箱入・交換部品セット品PS用」と記している。
厚労省は、製造者が自主的に回収などを行っているとして、手元の防毒マスクを確認し、該当する場合は速やかに製造者に連絡するよう求めている。
興研はお知らせの別紙で、対象かどうかの確かめ方を3段階で示した。まず型式名称を確かめる。次に、マスクの下側に表示された製造年月を見る。対象の期間に製造された製品でも、締め付けリングの内側に青色のシールが貼ってあるものは対策済みで、問題なく使えるという。
青色シールは、対象製品が交換を済ませたかどうかを見分けるために貼っているもので、対象の製造期間以外に作られた製品には貼られていない。つまり、対象の型式・製造期間に当てはまり、リングの内側に青色シールが無いものが交換の対象になる。
対象製品を持つ人は、最寄りの興研の営業所か代理店に連絡する。営業所は北海道から九州まで15か所あり、受け付けは土日祝日を除く午前8時50分から午後5時10分まで。同社のホームページの問い合わせフォームからも受け付けており、問い合わせ項目は「製品に関するお問い合わせ」の「その他」を選ぶよう案内している。
国の型式検定を受ける保護具
防毒マスクは、国が定めた規格を備えなければ譲渡や貸与ができない保護具だ。労働安全衛生法第42条は、健康障害を防ぐために使う機械などのうち政令で定めるものについて、厚生労働大臣が定める規格を備えなければ「譲渡し、貸与し、又は設置してはならない」と定める。さらに同法第44条の2は、一定の機械などを製造・輸入する者に、登録型式検定機関による型式の検定を受けるよう義務づけている。
同法施行令第14条の2は、型式検定を受けるべきものとして「防毒マスク(ハロゲンガス用又は有機ガス用のものその他厚生労働省令で定めるものに限る。)」を挙げている。今回の対象製品に付いている「検定合格番号」は、この型式検定に合格した型式であることを示す番号だ。
検定に合格した型式であっても、規格を満たさない製品が出回った場合の手当ても法律にある。同法第43条の2は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が、製造・輸入した者に対し、回収や改善、使用者への通知など、労働災害を防ぐための措置を命じることができると定めている。今回、厚労省は製造者が「自主的に」回収などを行っていると説明しており、命令を出したとは発表していない。
使う職場には着用と保守の管理が求められる
防毒マスクの着用は、法令で義務づけられている作業がある。有機溶剤中毒予防規則第33条は、タンクの内部での作業や、局所排気装置などを設けずに行う吹き付け作業などに労働者を従事させるとき、送気マスク、有機ガス用防毒マスク、または有機ガス用の防毒機能を持つ電動ファン付き呼吸用保護具を使わせなければならないと定めている。
保護具の管理も事業者の責任になる。労働安全衛生規則第12条の6は、化学物質管理者を選任した事業者が、リスクアセスメントの結果に基づいて労働者に保護具を使わせるときは、保護具着用管理責任者を選び、保護具の適正な選択、適正な使用、保守管理を担わせるよう定める。選任は、選ぶべき事由が生じた日から14日以内に行う。
今回の不具合は、リングを奥まで締め込めば気密が確保できると興研は説明している。一方で、厚労省は締め込みにくい場合があること自体を注意喚起の理由に挙げている。対象の4製品を使う事業場では、保護具の保守管理を担う担当者が手元の在庫と配布済みのマスクを型式名称・製造年月・青色シールの3点で確かめ、対象品があれば交換を申し込むことになる。
