厚生労働省は9月14日、個人事業主やフリーランスを「勤務時間が極端に短い正規型の労働者」として雇い、健康保険と厚生年金の被保険者資格を届け出る一方で、本人から報酬を上回る「会費」などを支払わせている事業所について、原則として被保険者資格を有さないものとして扱うよう、全国健康保険協会と健康保険組合、日本年金機構に通知した。

会費が報酬を上回れば「業務の対価」と認めない

通知(保保発0914第2号・年管管発0914第2号)は、資格の有無を二つの観点で判断すると示した。①報酬が業務の対価として経常的な支払いと認められない場合と、②業務が経常的な労務の提供と認められない場合である。両方に当てはまれば原則として資格なしとして扱い、どちらか一方なら就労の実態から個別に総合判断する。

①の典型が、働き手が受け取る報酬より多い額を会費として事業所へ払っている形だ。通知は会費等を「勉強費、広告費、掲載料、参加料、コンサルタント料、協力金、委託費など、名称の如何を問わない」と定義している。事業所本体ではなく関連法人へ払わせていても、その支払いが働き手になるための実質的な条件になっており、単に資金を移しているにすぎないとみられる場合は同じ扱いになる。会費が報酬と同額か下回っていても、報酬の多くを会費が占める状態が常態化していれば、資格を認めない可能性があるとした。

中身が自己研さんや情報共有だけなら労務の提供とみなさない

②については、1週間または1か月の労働時間が常態的に極端に短い場合を挙げた。そのうえで業務の中身が、知識向上のためのアンケート回答や勉強会への参加といった自己研さん、活動報告や情報共有、事業の紹介への単なる協力、働き手どうしの互助的な連携にとどまるものは、経常的な労務の提供に当たらないとしている。個人事業主として行っている事業活動を、そのまま形式的に事業所の業務として付け替えた場合も同様だ。

健康保険法第3条第1項と厚生年金保険法第9条は、適用事業所に常態的に使用される者を被保険者と定めている。厚労省は、契約の文言だけで判断せず、労働日数・労働時間・就労形態・勤務内容といった就労の実態から総合的に判断するという従来の原則を改めて示した。実態がないと確認された事業所には資格喪失届を提出させ、資格を失わせる。事実と異なる資格取得の届け出は、健康保険法第48条と厚生年金保険法第27条に反する。

国民年金は月1万7920円、健保・厚年なら本人負担1万908円

こうした形が生まれる理由は、二つの制度の保険料の決め方の違いにある。自営業者やフリーランスが入る国民年金の保険料は、日本年金機構によると令和8年度は所得にかかわらず月額1万7920円の定額で、これとは別に国民健康保険料がかかる。国保の負担は国民健康保険料、2024年度は1人あたり10万7856円 前年度から6.8%上昇 加入者の所得は2.1%減、滞納は185万世帯の通り、加入者1人あたりで年10万円を超える水準にある。

一方、会社員が入る健康保険と厚生年金の保険料は報酬に応じて決まり、低いほうに下限がある。全国健康保険協会(協会けんぽ)東京支部の令和8年度の保険料額表では、健康保険の標準報酬月額の最も低い等級は5万8000円で、40歳未満なら保険料は月5713円、労使で折半した本人負担は2856円50銭。厚生年金は標準報酬月額の下限が8万8000円で、保険料は月1万6104円、本人負担は8052円となる。報酬が月5万8000円なら本人が払うのは合わせて1万908円(50銭以下は切り捨て)で、国民年金の保険料だけより安い計算になる。扶養される配偶者は国民年金第3号被保険者となり、自分で保険料を納める必要がなくなる。国民年金では10月1日から、自営業・フリーランスの国民年金保険料、10月から育児期間は免除 0歳児を育てる父母が対象 所得要件はなく最大12か月・21万5040円も始まる。

3月の役員向け通知を、役員でない働き手にも広げた

厚労省は今年3月18日、個人事業主を法人の役員に就けて同じ形をとる事例について、先に通知を出していた。その通知は「社会保険料の削減を謳い」、役員報酬を上回る会費を払わせる事業所があると指摘し、本来は国民健康保険と国民年金の適用を受けるべき人が、通常より低い保険料で健康保険等の適用を受けている可能性があるとしていた。

今回はこれを、役員ではない労働者にも広げた。厚労省は、役員ではない働き手についても使用関係や業務の実態に疑義がある事業所が存在しているとしている。同日付で3月の通知も一部改正され、役員の場合にも、会費が報酬と同額以下でありながら報酬の多くを占めるケースや、役員どうしの互助的な連携にとどまる活動が、判断の対象に加わった。