GMOインターネットグループ(東証プライム)は11月2日、子会社のGMOインターネット(同)が提供するクラウドサービス「お名前.com デスクトップクラウド」が不正アクセスを受けた問題で、熊谷正寿代表取締役グループ代表の月額報酬を3か月間30%減らすなど、役員4人の報酬を減額すると発表した。同日の取締役会で決めた。2026年12月支給分から実施する。同社は今回の減額を「本件が発生したことについての、現時点における評価に基づくもの」とし、発生前の経緯を検証した結果を踏まえて、経営責任のあり方を改めて検討するとしている。

熊谷代表30%、子会社社長25% 4人を3か月減額

減額の対象は、グループ側の代表取締役である熊谷氏と、子会社のGMOインターネットの役員を兼ねる3人の計4人。いずれも月額報酬を3か月間減らす。

氏名 グループでの役職 GMOインターネットでの役職 月額報酬の減額
熊谷正寿 代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEO 取締役会長 30%×3か月
伊藤正 取締役グループ副社長執行役員 代表取締役社長執行役員 25%×3か月
山下浩史 グループ副社長執行役員 副社長執行役員 20%×3か月
児玉公宏 グループ常務執行役員 専務執行役員 20%×3か月
不正アクセスを受けた役員報酬の減額出典: GMOインターネットグループ、GMOインターネット「役員報酬の減額に関するお知らせ」(2026年11月2日)

減額の幅は、グループの代表である熊谷氏が最も大きく、サービスを提供する子会社の社長を務める伊藤氏がこれに続く。開示資料には、減額前の月額報酬の水準や、減額によって減る金額は書かれていない。

4人の報酬は、親会社と子会社のどちらが払っているかで分かれる。伊藤、山下、児玉の3氏はGMOインターネットから報酬を受け取っており、グループ側からの支給は無い。このため3氏の減額はGMOインターネットの取締役会が決め、親会社は「当該内容を記載したもの」として同じ表に載せた。

一方、熊谷氏はGMOインターネットの取締役会長を兼ねるが、同社から取締役会長としての報酬は受け取っていない。GMOインターネットの開示では、熊谷氏の減額は親会社が払う月額報酬について行い、親会社が同日に知らせていると説明している。両社はいずれも東京証券取引所プライム市場に上場しており(親会社は証券コード9449、子会社は4784)、それぞれが同じ日に適時開示を出した。

「現時点の評価」 発生前の経緯は今後検証

開示資料の「今後の対応」で、両社は「本件発生前の経緯等につきましては、今後検証を行ってまいります」と記した。そのうえで、今回の減額は現時点での評価に基づくもので、検証の結果を踏まえて「改めて経営責任のあり方について検討いたします」としている。

検証を誰が、どのような体制で、いつまでに行うかは、11月2日の開示資料には書かれていない。社外の専門家による調査委員会を設けるといった記載も無い。10月24日の第4報で、GMOインターネットは「本サービスのシステムにセキュリティ上の問題が存在し」、サービスの環境への不正なアクセスと、顧客の情報が外部に持ち出された事実を確認したと公表している。どのような問題がどの時点から存在していたのかは、これまでの公表資料では明らかにされていない。今回の減額は、その検証の前に決めたものだ。

同社は第4報で、不正アクセスを受けた現行のシステム基盤をそのまま再開することはせず、「抜本的なセキュリティアーキテクチャの刷新」を行うと判断したと説明している。グループは10月27日の第12報でも、懸賞金の創設に合わせて、顧客への補償、原因究明、被害拡大防止と再発防止に取り組む責任は「本制度の実施や捜査の進展によって変わるものではありません」と記し、自らの責任で原因究明と再発防止を進めるとしていた。

発覚から2週間 見舞金と補償の費用は算定中

不正アクセスの経過は、グループが10月29日の第16報で整理している。GMOインターネットは10月21日午前4時にサービスを止めて第1報を出し、同じ日に約80億円を要求する脅迫メールを受け取った。22日に警察に相談し、24日の第4報で、全ての利用者への見舞金、不正取引による損失の補償、代替サービスの提供を決めた。第4報では、攻撃者とみられる者が、国内外の70を超える証券会社・FX会社などにある顧客の取引口座への不正操作を続けると脅していたことも明らかにした。発覚からの経緯はGMO「お名前.com デスクトップクラウド」不正アクセスの経緯と補償 見舞金5000円、再開は未定で伝えている。

27日には、犯人とみられる者が顧客に関するとする情報を公開した。グループは同日、情報の公開が確認された顧客に、情報の区分ごとに1万〜2万5000円、1公開につき上限300万円の「GMO特別お見舞金」を払うと決め、総額100万米ドル(約1億5000万円)を上限とする懸賞金も設けて28日正午から情報を受け付けた。懸賞金の専用サイトに寄せられた情報は、10月30日午後6時時点で累計428件となっている。経緯はGMO不正アクセス、犯人特定の有力情報を警察に提出へ 懸賞金への情報428件で報じた。

10月28日の適時開示によると、一律5000円の見舞金、不正取引による損失の補償、特別お見舞金などの費用は、懸賞金を除き子会社のGMOインターネットが負担する。いずれも総額は「現時点では算定できておりません」としており、理由として対象となる顧客の数、公開された情報の範囲、補償の対象となる取引の確認が確定していないことを挙げた。算定でき次第、知らせるとしている。

今後の焦点 補償の申請方法と検証の結果

利用者にとって次の区切りは、取引口座の損失補償の手続きだ。補償の対象は、調査の結果、不正アクセスに起因する不正取引だと同社が認めた取引で、顧客に実際に生じた損失(取引の差損と手数料など)とされている。第4報では、申請方法、必要書類、受付期間、支払い時期を11月6日までに公式サイトと登録メールアドレスで案内するとしていた。グループは10月30日、一律5000円の見舞金の受け取り手続きと代替サービスについて、契約者へ直接の連絡を始めたと発表している。代替サービスは独立したクラウド基盤で運用するもので、乗り換えた後は6か月間無償で使えるとしている。

経営責任をめぐっては、発生前の経緯の検証がどのような形で行われ、その結果が公表されるかが次の論点になる。報酬の減額は12月から2027年2月の支給分までの3か月間に限られ、両社は検証の結果次第で改めて経営責任のあり方を検討するとしている。見舞金や補償にかかる費用が算定されれば、グループの連結業績への影響も明らかになる。