衆議院の選挙制度の見直しを巡り、自民党、日本維新の会、公明党など与野党9党の代表者が参加する政党間協議が10月15日、衆院第1議員会館で開かれ、各党が意見を表明した。公明党の機関紙・公明新聞(10月16日付)によると、席上、与党は比例代表の45議席削減を改めて主張した。これに対し公明党の中野洋昌政務調査会長は「比例は多様な民意を反映させるための制度だ」と述べ、小選挙区と比例区の割合を「3対2」に保つことを前提に議論すべきだと訴えた。協議は10月末を目途に結論を得ることを目指し、合意点を探る。
協議で何が話し合われたか
公明新聞によると、15日の協議は、現行の小選挙区比例代表並立制を部分的に見直すことに向けて、各党が考えを述べる場となった。与党が比例代表の45議席削減を改めて主張したのに対し、中野氏は比例区の役割を強調し、3対2の割合を崩すべきではないとの立場を示した。
中野氏はまた、今回の見直しは、次の衆院選までに実施を目指す抜本改革までの「つなぎ」だと位置づけた。そのうえで、選挙制度を大きく変えてしまう与党案は「全く受け入れられない」と強調した。
協議では、議席の削減幅とは別に、制度の運用上の問題も論点になった。小選挙区と比例代表に重複して立候補した人が比例で復活当選する際の基準と、比例代表の名簿に載せた候補者が足りなくなる問題の2つだ。
協議の終了後、中野氏は記者団に対し「多数で押し切るのではなく、各党の意見がほぼ一致したところを改正するのが基本だ」と述べ、与党側をけん制した。
自民党、日本維新の会、立憲民主党、国民民主党の各党公式サイトのニュース一覧では、17日昼の時点で15日の協議に関する発信を確認できなかった。このため本記事では、与党側の主張の詳しい内容や、ほかの野党の意見表明については書いていない。
協議の起点にある「比例45減」法案
与党が主張する比例45削減は、自民党・無所属の会と日本維新の会が提出した「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」に盛り込まれている。衆議院の審議経過情報によると、法案は加藤勝信氏ら11人が提出者となって6月24日に受理され、6月26日に政治改革に関する特別委員会へ付託された。審議の結果を示す欄は「閉会中審査」のままで、採決には至っていない。
衆議院が公表した法案要綱によると、法案は2段構えになっている。まず、定数削減を含めた選挙制度改革を、衆院議長の下に各会派の議員でつくる協議会で検討し、結論を得るとする。結論に基づく法制上の措置は、法律の施行日から1年以内に講じるものとしている。
そのうえで、期限内に措置が講じられなければ、比例代表の定数を176人から45人減らして131人とし、衆院の定数を420人にする公職選挙法の改正が動き出す仕組みだ。要綱は、2025年の国勢調査に基づく区割り改定の勧告期限である2027年5月29日を踏まえ、現職議員の任期満了(2030年2月7日)による総選挙までに関係法律の整備を終えるよう求めている。
公職選挙法第4条は、衆院の定数を465人とし、そのうち289人を小選挙区、176人を比例代表と定めている。法案のとおり比例だけを45人減らすと、構成は次のように変わる。
| 現行 | 法案(比例45減) | |
|---|---|---|
| 定数 | 465人 | 420人 |
| 小選挙区 | 289人(約62%) | 289人(約69%) |
| 比例代表 | 176人(約38%) | 131人(約31%) |
公明が求める「3対2」とは
小選挙区と比例を3対2にすると、比例の割合は40%になる。現行の289対176でも比例は約38%で、3対2をやや下回る。比例だけを45人減らすと約31%まで下がり、3対2からさらに離れる。
公明党はこの割合を党の方針として固めてきた。公明新聞によると、党政治改革本部(本部長=西田実仁幹事長)は10月8日に会議を開き、政党間協議での意見表明に向けて考えを整理した。西田氏はその場で「議員定数の削減は選挙制度と一緒に議論すべきであり、どうしても削減したいのであれば3対2のバランスをしっかり保つ必要がある」と述べた。
会議では参加議員から、「面積が広く災害リスクが高い地方ほど定数が減ると、1人の議員が担当する地域が広大になることも考慮すべきだ」「人口減少を理由に定数削減を行うのであれば、参院の定数もセットでやるべきだ」といった意見も出た。15日に中野氏が示した「3対2」の前提は、この方針と同じものだ。この方針は公明・西田幹事長、衆院定数削減は「小選挙区と比例3対2を保て」 政党間協議へ党の考え整理で詳しく伝えた。
論点になった「復活当選」と「名簿不足」
協議の論点に挙がった2つの問題は、いずれも公職選挙法第95条の2が定める比例代表の当選人の決め方に関わる。
衆院選では、同じ候補者が小選挙区と比例代表に重複して立候補できる。政党は比例名簿で複数の重複立候補者を同じ順位に並べることができ、その場合の順番は、小選挙区での得票数をその選挙区の最多得票者の得票数で割った割合、いわゆる惜敗率の高い順に決まる。ただし、小選挙区で有効投票総数の10分の1(供託金が没収される水準)に届かなかった候補者は、比例名簿に載っていないものとみなされ、復活当選できない。協議で論点になったのは、この復活当選の基準をどうするかだ。
もう1つの名簿不足は、比例の議席配分の仕組みから起きる。各党の得票数を1、2、3と順に割って議席を割り振る際、割る数は、その党の名簿に載っている候補者の数までと定められている。このため、党の得票に見合う議席が名簿の人数を上回ると、その党は名簿の人数を超えて議席を得られない。小選挙区で当選した重複立候補者や、復活当選の資格を失った候補者は名簿から外れたものとみなされるため、名簿に十分な人数を載せていても、実際に当選できる人が足りなくなることがある。
公明新聞は、協議でこの2点が論点になったと伝えているが、各党がどのような見直し案を示したかには触れていない。
10月末の結論に向けた日程
政党間協議は10月6日に初めて開かれ、15日は意見表明の段階に進んだ。公明新聞によると、衆院議長の下で各会派が参加する「衆院選挙制度に関する協議会」が、抜本改革が実現するまでの措置として「10月末を目途に具体的な結論を得るよう努力する」ことで合意しており、政党間協議はこれを踏まえて現行制度の課題を解決する方策を話し合っている。協議が始まった経緯は衆院選挙制度の政党間協議が初開催 与野党9党が参加し10月末を目途に結論へ 比例45人減の法案は閉会中審査のままで伝えた。
抜本改革については、有識者による調査会の設置が決まっていると中野氏は6日の協議で述べている。今回の見直しはそれまでの措置という位置づけで、公明党は大きな制度変更をこの段階で行うことに反対している。
一方、与党の法案は、協議会で結論が出ないまま施行から1年が過ぎれば比例の45人削減が動く設計になっている。部分的な見直しの範囲をどこまでとするのか、比例の削減を含めるのかが、10月末に向けた協議の焦点になる。区割りの見直しも並行して進んでおり、法案要綱が挙げる2027年5月29日の勧告期限との兼ね合いも、議論の前提として残る。
