環境省は10月1日、国立環境研究所など6機関が温室効果ガス(GHG)の観測データと研究成果を一つの窓口に集める「日本GHGセンター」を合同で設立することに合意したと発表した。必要な手続きが完了し次第、運営を始める。これまで大学、研究機関、政府機関にばらばらに置かれてきたデータや解析・評価結果を結び付け、ワンストップで案内・発信する「オールジャパン」の情報ハブは国内で初めてだとしている。

構成は6機関、環境省と気象庁は賛同機関

設立に合意したのは、国立環境研究所、東京大学気候と社会連携研究機構、広島大学瀬戸内CN国際共同研究センター、海洋研究開発機構地球環境研究部門、気象庁気象研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)第一宇宙技術部門の6機関である。庶務は国立環境研究所地球システム領域に置く「日本GHGセンター事務局」が担う。

このほか環境省、地球環境戦略研究機関、気象庁、森林研究・整備機構の4機関が設立の趣旨に賛同しており、役割に応じて連携・協力する。つまり環境省自身は構成機関ではなく、研究機関側が設立構想をまとめ、環境省が緊密に連携する形をとった。

活動内容は、観測・解析・モデル開発などによるデータと知見の創出、関係機関で生まれた知見の集約、国内外への提供・発信、海外機関との連携、次世代人材の育成などの6項目を掲げる。センターのウェブサイトが、各機関の情報へ案内するプラットフォームの役割を担う。国際的なパートナーには、米国のGHGセンター(U.S. Greenhouse Gas Center)と欧州連合のコペルニクス情報サービス(Copernicus Atmosphere Monitoring Service)を予定している。

衛星・地上・船舶・航空機の観測をつなぐ

環境省は国立環境研究所とJAXAとともに、温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT」シリーズを使って大気中の二酸化炭素やメタンを観測してきた。記者説明会資料では、GOSAT、GOSAT-2、GOSAT-GWの衛星観測に加え、落石岬・波照間島・富士山の地上観測、船舶や航空機による観測、炭素循環モデル、そして日本の排出量インベントリ(排出量の目録)を組み合わせた体制が示されている。

センターは、パリ協定のグローバル・ストックテイク、世界気象機関(WMO)の全球温室効果ガス監視(G3W)、国連環境計画(UNEP)の国際メタンガス排出観測所(IMEO)といった国際的な取り組みへの貢献も目的に挙げる。発表資料は、日本が世界の中でも特に充実したGHG観測網と長年の観測・研究実績を持つことを踏まえ、情報ハブを置くことで政策立案や企業活動を支える科学的根拠が充実し、国際連携やルール形成への貢献が期待できると説明している。

2024年度の排出・吸収量は初めて10億トンを下回った

科学的根拠の土台となる日本の実績値も、同じ環境省と国立環境研究所の体制で作られている。2026年4月に公表された2024年度の実績では、温室効果ガスの排出・吸収量は約9億9400万トン(二酸化炭素換算)だった。2023年度の約10億1300万トンから約1880万トン減って1.9%の減少、2013年度からは約3億9950万トン減って28.7%の減少にあたる。2013年度以降の最低値で、初めて10億トンの大台を下回った。

吸収量を差し引く前の排出量だけで見ると、2024年度は10億4600万トンで、1990年度の12億7200万トン、2013年度の13億9400万トンより少ない。うち二酸化炭素は約9億7100万トンで、2013年度比26.0%減、2023年度比1.7%減である。ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)は3年連続で減った。

一方で、同じ資料が示す目標はいずれも2013年度比で、2030年度が46%減、2035年度が60%減、2040年度が73%減、2050年に排出量と吸収量を釣り合わせるネット・ゼロである。2024年度の28.7%減を、11年後の2035年度には60%減、さらに2040年度には73%減まで広げる必要がある。観測と排出量の数字をどこまで精密に押さえられるかは、この目標の進捗を測る物差しそのものを左右する。

「情報がどこにあるか分からない」状態の解消をねらう

発表資料は、GHGの観測データ、モデルシミュレーション、排出量といった情報を、これまで現業機関や研究機関がそれぞれ取得・作成・公表してきたと指摘する。将来にわたって削減を進めるには、観測に基づく科学的根拠の提供基盤を築き、最新の知見を継続して積み上げる必要があるとして、センター設立の理由を説明した。研究・行政・民間・市民のそれぞれに向けて、同じ入り口から情報を届ける狙いである。

国民の側の受け止めとの間には距離もある。内閣府の世論調査では、「生物多様性」の意味を知っている人は38.3% 4年前の29.4%から上昇 ただし「行動に移せていない」は33.7%から42.7%に増加 内閣府世論調査のように、環境分野の言葉が広がっても行動に結びつきにくい傾向が出ている。研究機関側がデータを一元化しても、それが政策や企業活動、家計の判断に届くかどうかは発信の工夫に左右される。