衆議院の選挙制度を見直す与野党9党の政党間協議が10月6日、衆院第1議員会館で初めて開かれた。公明党が公式サイトで伝えたところによると、自民党、日本維新の会、公明党などの代表者が参加し、現行制度の見直しに向けた議論が始まった。この日は今後の議論の進め方などを確認した。

10月末が当面の期限 「抜本改革までのつなぎ」という位置づけ

協議には期限がある。公明党の説明によると、衆院議長の下で各会派が参加する「衆院選挙制度に関する協議会」が、抜本改革が実現するまでの措置として「10月末を目途に具体的な結論を得るよう努力する」ことで合意しており、政党間協議はこれを踏まえて現行制度の課題を解決する方策を検討する。

つまり、議論は二階建てになっている。土台にあるのが選挙制度の抜本改革で、こちらは有識者による調査会の設置が決まっている。その上に乗っているのが、抜本改革が仕上がるまでの間をしのぐ「現行制度の見直し」で、10月末という期限が付いているのはこちらだ。公明党の中野洋昌政務調査会長は初回の協議で「現行制度の見直しは、抜本改革までの“つなぎ”だ。公正、公平かつ充実した議論をすることが大事だ」と述べた。

起点は比例45人減の法案 1年で結論が出なければ自動的に発動する

この協議の枠組みは、法案によって先に用意されたものだ。

衆議院が公表している「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」の要綱によると、法案はまず、現行の選挙制度を維持するのか、見直すのか、抜本的に改めるのかを、人口減少の状況に鑑みて定数削減を含めて検討し、結論を得ると定めている。検討の場は「衆議院議長の下に設置され、各会派の衆議院議員により構成される協議会」で、その組織と運営は衆議院議院運営委員会に諮って議長が定めるとされている。10月6日に動き出した協議は、この設計図の上にある。

期限の根拠も要綱に書かれている。結論に基づく法制上の措置は、2025年の国勢調査の結果に基づく衆議院議員選挙区画定審議会の勧告期限である2027年5月29日を踏まえ、現在の衆院議員の任期満了である2030年2月7日による総選挙までに関係法律の整備が終わるよう、法律の施行日から1年以内に講ずるものとされている。区割りを改める必要が生じたときは、区画審の勧告期限を延長する措置も取る。衆院の区割り見直しの手続きは、すでに衆院の区割り、知事への意見照会を正式決定 改定の基準は人口最少県の最少選挙区=鳥取1区の25万7657人 2月の総選挙の有権者数も考慮のとおり進んでいる。

そして、1年以内に措置が講じられなかった場合に動くのが定数削減の規定だ。要綱は「比例代表選出議員の定数を176人から45人削減して131人とすることにより、衆議院議員の定数を420人とする」と明記している。小選挙区の289人は変えない。削減後の比例代表のブロックごとの議員数は別の法律で定めるとされ、要綱によれば、改正後の公職選挙法第13条第7項の規定の例により、131人を2025年の国勢調査の人口に基づいて各ブロックへ割り振る。

この自動発動の仕組みを置いた理由も、要綱に注として書かれている。2022年の公職選挙法改正の際の附帯決議に基づいて約3年にわたり検討が行われてきたことに鑑み、措置の検討を促すとともに、措置が講じられない場合にも定数削減を含む改革を確実に推進するためだという。法案の中身そのものについては衆院定数削減法案、6月の提出から採決されず閉会中審査 減らす45人はすべて比例代表 協議が1年でまとまらなければ自動的に定数420人で詳しく伝えている。

法案は付託されたまま採決されず

その法案は、まだ成立していない。

衆議院の議案審議経過情報によると、法案は6月24日に受理され、6月26日に政治改革に関する特別委員会へ付託されたが、衆議院の審査終了年月日と審査結果の欄は空欄で、審議結果の欄は「閉会中審査」となっている。提出者は加藤勝信氏ほか10名、提出会派は自由民主党・無所属の会と日本維新の会で、参議院にも6月25日に予備審査の議案として受理されている。採決に至らないまま国会をまたいでいる状態だ。

「比例のみ削減」に反対の声 10月6日には国会内で集会

比例代表だけを減らすという内容には、複数の党から反対の声が上がっている。

公明党の中野政務調査会長は10月6日、参院議員会館で開かれた定数削減に反対する緊急集会で、民意を反映するために導入されたのが比例区だとして「民意を切り捨てるような改革はしてはいけない」と述べた。中野氏は現行制度の課題として「人口減少に伴い『1票の格差』問題を突き詰めると、地方の議員枠が減り都市部に集中してしまう懸念があるため、大きな制度改革を議論する必要がある」とも指摘し、新制度で次期衆院選を実施するとした与野党合意に触れて「これから抜本改革を議論しようとしている時に、比例のみ削減といった乱暴な議論はあってはならない」と断じた。公明党は9月の全国大会で選出された公明党の新代表に岡本三成氏 第18回全国大会で選出 比例のみの定数削減は「断じて容認できません」 政府の食料品1%案は「あまりに非効率」の時点でも、同じ立場を明確にしている。

立憲民主党も反対している。同党の公式サイトによると、10月6日には「議員定数削減反対!緊急院内集会」が国会内で開かれ、幅広い分野からの呼びかけ人と野党各党の議員が発言した。立憲民主党からは辻元清美ジェンダー平等推進本部長が発言し、徳永エリ、吉田忠智、打越さく良、岸真紀子、高木真理、小島とも子、山内佳菜子の各参院議員が出席した。同党は、比例代表の定数削減は「身を切る改革」ではなく「民意を切る改革」だとして、野党や市民から強い懸念の声が上がり、法案は継続審議になっていると説明している。

直近の総選挙で有権者が出した数字

「民意」はどちらの側も掲げる。最後に有権者が出した数字は、総務省が公表している第51回衆院選(令和8年2月8日投開票)の結果調にある。

比例代表で、この法案を出した自由民主党は2102万6140票を得て得票率36.72%、日本維新の会は494万3330票で8.63%だった。両党で2596万9470票となり、有効投票5725万9957票の45.35%にあたる。自民党は前回(令和6年)の1458万2690票・26.73%から644万3450票を積み増した。日本維新の会は前回の510万5127票・9.36%から16万1797票減らしている。当選人数は自民党が小選挙区248・比例代表67の計315議席、日本維新の会が小選挙区20・比例代表16の計36議席で、両党で465議席のうち351議席を占めた。比例代表の投票率は56.25%で、前回の53.84%を上回った。

比例区が民意を反映するための仕組みだという説明は、制度の設計としてはその通りである。ただ、投票率が前回を上回った選挙で比例代表の票を最も伸ばしたのが、いまその比例定数を削ると言っている党だったことも、同じ民意の一部である。反対する側が「民意の切り捨て」と呼ぶなら、その民意が2月にどう出たのかという数字を併せて示す責任がある。

協議の場が立ち上がったことで、議論は法案の賛否から「現行制度をどう直すか」へ一段進んだ。10月末という目途まで、残りは3週間ほどである。