内閣府経済社会総合研究所は10月15日、8月の機械受注統計調査報告を公表した。民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」は、季節調整済みで1兆698億円となり、前月より5.2%増えた。7月は3.7%減っており、増加は2か月ぶりとなる。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業・非製造業がそろって増加
船舶・電力を除く民需の内訳をみると、製造業は5270億円で前月比1.6%増、非製造業(船舶・電力を除く)は5413億円で2.9%増だった。7月はそれぞれ1.0%減、2.6%減と小幅に減っていたが、8月はどちらも増加に転じた。
季節調整をしていない原数値で前年同月と比べると、船舶・電力を除く民需は18.6%増えた。7月の前年同月比は11.2%増で、伸びが大きくなった。製造業は23.5%増、非製造業(船舶・電力を除く)は10.8%増だった。
ここ数か月の船舶・電力を除く民需は、5月が9620億円(前月比12.4%減)、6月が1兆558億円(9.7%増)、7月が1兆169億円(3.7%減)と、増減を繰り返してきた。8月の1兆698億円は、この4か月で最も大きい。
船舶・電力を除く民需の受注額(季節調整値)(億円)
数値で見る(単位: 億円)
| 項目 | 億円 |
|---|---|
| 5月 | 9,620 |
| 6月 | 10,558 |
| 7月 | 10,169 |
| 8月 | 10,698 |
月々の振れをならすため、内閣府は直近3か月の平均がどう動いたかも見ている。8月までの3か月移動平均は前月比3.6%増とプラスだった。内閣府は、単月の増加に加えてこの移動平均もプラスとなり「持ち直しの動きがみられる」との基調に変化はないとして、判断を据え置いた。7月分の公表時には単月で3.7%減っていた(7月の機械受注、設備投資の先行指標は3.7%減 内閣府統計 前月の9.7%増から反落、前年比では11.2%増)。
業種別では大口案件で大きく振れる
業種ごとの前月比は、1件の大口受注の有無で大きく動く。製造業では、非鉄金属が132.6%増と大きく伸びた。非鉄金属は7月に82.2%減っており、その反動が出た形だ。このほか石油製品・石炭製品が19.6%増、自動車・同付属品が13.1%増、情報通信機械が13.0%増、はん用・生産用機械が9.3%増だった。
一方、製造業の中でも減った業種は少なくない。造船業は41.0%減、鉄鋼業は36.3%減、パルプ・紙・紙加工品は33.2%減、窯業・土石製品は23.0%減、化学工業は11.5%減だった。7月に46.1%増えた電気機械は、8月は5.9%減となった。
非製造業では、リース業が136.0%増と倍以上に膨らんだ。卸売業・小売業は29.2%増、鉱業・採石業・砂利採取業は25.0%増、通信業は16.9%増、情報サービス業は7.9%増だった。反対に建設業は17.2%減、運輸業・郵便業は13.9%減、電力業は34.9%減となった。電力業を含む非製造業全体では5.7%減っている。
このように業種単位でみると、前月比が数十%から100%を超える幅で上下する月は珍しくない。指標として船舶・電力を除いた合計値が使われるのは、こうした個別の振れをならし、企業全体の投資の流れをつかむためである。
受注総額は3.7%減、外需と官公需が減少
民間以外も含めた受注総額は4兆419億円で、前月より3.7%減った。7月の5.5%減に続く減少となる。原数値の前年同月比では26.1%増と、前年の水準は大きく上回っている。
需要者別では、海外からの注文である外需が2兆1687億円で7.7%減った。航空機や工作機械などで増えたものの、船舶や産業機械などで減った。外需は7月にも8.2%減っていた。ただ、原数値の前年同月比では36.9%増と、前年を大きく上回る水準にある。
国や自治体などからの官公需は3533億円で6.1%減った。「その他官公需」や地方公務などで増えた一方、防衛省や国家公務で減った。最終的な需要者が分からない代理店経由の受注は1528億円で6.3%減った。工作機械や鉄道車両などで増え、道路車両や電子・通信機械などで減った。
船舶・電力を含む民需全体は1兆2269億円で4.2%減った。船舶・電力を除くと増加、含めると減少と、方向が分かれた。なお、季節調整は系列ごとに個別に行っているため、需要者別の内訳を足し合わせても全体の季節調整値とは一致しない。
7〜9月期の見通しは4.9%増
内閣府は機械メーカーに先行きの受注見通しを尋ねる見通し調査も行っている。6月末時点の調査では、7〜9月期の船舶・電力を除く民需は前期比4.9%増と見込まれていた。4〜6月期の実績は3兆1162億円で、前期比0.2%増にとどまっていた。
同じ見通し調査では、7〜9月期の製造業が前期比4.0%増、非製造業(船舶・電力を除く)が5.9%増と、いずれも増加が見込まれていた。4〜6月期の実績は製造業が1.3%減、非製造業(船舶・電力を除く)が2.3%減で、ともに減っていた。需要者別では官公需が28.5%増、代理店が11.1%増、外需が1.3%増の見通しだった一方、船舶・電力を含む民需は3.8%減、受注総額は0.1%減と見込まれていた。
7〜9月期のうち、7月と8月の実績はすでに出ている。7月は1兆169億円、8月は1兆698億円で、2か月の合計は2兆867億円となる。見通しどおりに着地するかどうかは、9月の実績に左右される。9月分と、10〜12月期の新たな見通しは次回以降の公表で示される。公表日程は内閣府の統計調査公表予定一覧に載っている。
前年度からの流れでみると、船舶・電力を除く民需は2025年7〜9月期に前期比1.0%減となった後、10〜12月期は6.6%増、2026年1〜3月期は6.4%増と伸び、4〜6月期は0.2%増と足踏みしていた。
半年先の設備投資を映す統計
機械受注統計は、機械メーカーが受けた設備用機械類の注文を毎月集計したものだ。調査対象は主要な機械等製造業者で、1987年4月実績から対象を308社(うち機械製造業者280社)に増やし、280社ベースの調査に移行した。毎月末時点の受注実績を調べ、金額は消費税を除いたベースで集計する。
企業が機械を注文してから納入・据え付けまでには時間がかかるため、受注の数字は設備投資の実額より早く企業の投資意欲の変化を示すとされる。内閣府は「船舶・電力を除く民需」を「民間設備投資の先行指数」と位置づけている。設備投資が実際にどれだけ積み上がったかは、別の統計で把握される(日本の固定資本ストックは2077.9兆円 民間住宅は48期連続で減りピークから37.8兆円目減り 企業設備は852.2兆円で50期連続プラス)。
季節による受注の偏りを取り除くため、内閣府は季節調整をかけた数値を主に使っている。手法はX-12-ARIMAのX-11で、受注総額や船舶・電力を除く民需などの主要系列にはRegARIMAを使った調整も適用している。季節調整の系列は毎年1月調査の時点で見直し、2026年は1月調査(3月19日公表)で過去にさかのぼって改訂した。
前月比の数字は月ごとの振れが大きいため、1か月の増減だけでは方向を判断しにくい。内閣府が単月の結果だけでなく3か月移動平均や四半期の見通しを併せて示し、基調判断を出しているのはこのためだ。8月は単月・移動平均ともプラスとなったが、外需や官公需は2か月続けて減っている。
