外務省は10月14日、「日本とアフリカとの経済連携強化に関する産学官検討委員会」の第2回会合を13、14の両日に同省で開いたと発表した。6月の第1回会合に続く2回目で、対面で開いた。アフリカ側の委員がアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を軸とする経済統合の意義と実施面の課題を発表し、日本側は日本企業がアフリカで直面する物流の課題などを示した。委員会は2027年度中に報告書をまとめ、外相に提出する予定だ。

2日間の会合で何が話されたか

外務省の発表によると、初日の冒頭で大空幸星外務大臣政務官があいさつし、委員会が日本とアフリカの双方にとって持つ意義に触れたうえで、議論が両者の経済関係のさらなる発展につながることへの期待を表明した。

委員の発表では、アフリカ側からAfCFTAをはじめとするアフリカの経済統合について、その意義と、実施面の課題が示された。課題として挙がったのは、ソフトとハードの両面のインフラと、行政能力だ。アフリカ側の委員は、こうした取り組みが日本企業にとってアフリカでの投資機会につながると述べ、日本がさらに関与することへの期待を表した。

日本側は、日本企業がアフリカでビジネスをするうえでの物流面の課題と、日本がこれまでアフリカの経済統合に向けて行ってきた支援を発表した。発表では参加者の間で活発な意見交換があったとしているが、個々の発言の中身や、会合として何らかの結論を出したかどうかは公表していない。

TICAD 9で石破前首相が設置を表明

委員会の出発点は、2025年8月に横浜で開かれた第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)だ。当時の石破茂首相は8月20日の開会式の基調演説で、柱の3つ目に「地域統合と域内外の連結性」を挙げた。アフリカ各国の成長には国境を越えた地域統合と連結性の強化が必要だとして、AfCFTAの実施促進を後押しすると述べ、「日本・アフリカの産学官の代表から成る」経済連携強化の検討委員会を設置すると表明した。

演説では金融面の支援も示した。日本とアフリカ開発銀行の協調枠組み「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ」を最大55億ドルに広げ、国際協力機構(JICA)の海外投融資を呼び水に官民総額15億ドル規模のインパクト投資を動員するとした。貿易保険を使ってビジネスのリスクを下げる方針も挙げている。

同じ演説では、アフリカと域外を結ぶ連結性の強化として「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を立ち上げることや、鉱物資源の供給にもつながるナカラ回廊の物流を促す「広域オファー型協力」を新たに始めることも打ち出した。翌21日の官民ビジネス対話のあいさつでも、石破氏はAU(アフリカ連合)の主導でAfCFTAの取り組みが「巨大な単一市場の誕生を目指し」進んでいると評価し、日本として域内の連結性の強化に協力すると述べている。

外務省は委員会の役割について、「自由で開かれたインド太平洋」の考え方の下、AUが最重要課題とするアフリカの経済統合に向き合い、経済面の連携強化を通じてアフリカ市場での日本企業の事業展開を後押しするためのものだと説明している。議論するのは、アフリカの域内経済統合を進める方策、日本とアフリカの貿易・投資関係の点検、将来の経済関係の強化などだ。

委員の顔ぶれ

座長は渡邊頼純・慶應義塾大学名誉教授が務める。外務省が公表した委員は次のとおり。第1回会合の発表(英語版)でも同じ顔ぶれが示されている。

区分 委員
日本・学界 渡邊頼純 慶應義塾大学名誉教授(座長)、木村福成 日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所所長
日本・経済界 藤田亮二 豊田通商執行幹部(経団連)、渡邉達郎 商船三井常務執行役員(経済同友会)、五十嵐克也 日本商工会議所理事・国際部長
日本・政府 外務省、財務省、農林水産省、経済産業省の代表
アフリカ側 ラシナ・コネ スマート・アフリカ事務局長兼CEO、クレカニ・マテ 南アフリカ・ビジネス・ユニティCEO、オラワレ・オグンコラ ナイジェリア・イバダン大学教授
国際機関 国連アフリカ経済委員会(UNECA)、AfCFTA事務局、アフリカ連合委員会(AUC)の代表

経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体がそろって委員を出し、商社と海運会社の幹部が名を連ねている。第1回会合は、外務省の英語版の発表によると6月18日に対面とオンラインを併用して開く予定とされていた。

AfCFTAとは何か

AfCFTAは、アフリカのほぼ全域を一つの市場にまとめようとする自由貿易圏だ。AfCFTA事務局によると、AUの加盟55か国と八つの地域経済共同体が参加し、人口約13億人、域内の国内総生産(GDP)合計約3.4兆ドルの単一の大陸市場をつくることを目指している。AUの長期開発戦略「アジェンダ2063」の旗艦事業の一つと位置づけられている。

協定は2018年3月にルワンダのキガリで開かれたAUの臨時首脳会議で、加盟55か国のうち44か国が署名した。2019年4月29日に22か国目の批准書が寄託されたことで、同年5月30日に発効した。協定に基づく取引は2021年1月1日に始まり、事務局はガーナの首都アクラに置かれている。

ただ、関税を下げる取り決めができても、モノを運ぶ道路や港、国境の手続き、各国の行政の実務が追いつかなければ、取引は増えにくい。今回の会合でアフリカ側委員が挙げたインフラと行政能力の課題は、この実施の段階にかかわるものだ。

官民ミッションでも協力を要請

外務省は委員会の発足に向け、アフリカ側への働きかけも進めてきた。今年1月11日から17日には、国光あやの外務副大臣を団長とするアフリカ貿易・投資促進官民合同ミッションがエチオピアとガーナを訪れた。2008年の第1回から数えて15回目で、過去最多の41企業・団体が参加し、外務省や内閣官房、経済産業省を含めて総勢68人だった。

ミッションは1月13日、UNECAのクラバー・ガテテ事務局長と、AUCのマハムッド・アリ・ユスフ委員長をそれぞれ訪ね、アフリカの経済統合に向けた日本の関与を表明した。そのうえで、TICAD 9で日本が設立を表明した検討委員会への協力を各機関に依頼した。両機関は今回、委員会に代表を出している。

委員会は今後も会合を重ね、2027年度中に報告書をまとめる。日本とアフリカの貿易・投資の現状をどう点検し、日本企業の進出を後押しする具体策をどこまで示すかが焦点となる。