厚生労働省は10月13日、家庭で家事を担う家政婦(夫)の求人情報の概要を一覧で探せるサイト「家政婦(夫)ネット」の運用を、モデル事業として始めた。地域の家政婦(夫)紹介所が連携して求人を載せ、東京都内の求人をエリアや時間帯、求めるサービスなどの条件で検索できる。紹介所は小規模な事業者が多く、利用する家庭とのマッチングや働き手の確保に苦労していることから、求人の「見える化」で潜在的な求職者を掘り起こし、登録する家政婦(夫)を増やす狙いがある。サイトは厚労省の委託事業として、公益社団法人日本看護家政紹介事業協会(東京都新宿区)が運営している。

求人を条件で検索、応募は紹介所へ

厚労省の発表によると、家政婦(夫)ネットは、家政婦(夫)の仕事に関心がある人が求人の概要を検索し、興味を持った求人を扱っている紹介所に簡単にたどり着けるようにするためのサイトだ。発表は、家政婦(夫)の仕事を「紹介所からお仕事の紹介斡旋を受け、家庭における『家事』を、お客様の指示に従い、代行・補助するのが主なお仕事」と説明している。

検索画面では「仕事の場所」「仕事の内容」「賃金」の3つを組み合わせて絞り込む。仕事の場所は東京23区と多摩地域の市を個別に選べるほか、都道府県の選択肢には東京都と並んで神奈川県、埼玉県、千葉県も表示されている。仕事の内容は「調理」「掃除」「洗濯」「高齢者の軽い世話」「介護」「子育て」の6種類から複数を選べ、賃金は「1,200〜」から「3,000〜」までの5段階で下限を指定する。求人タイトルや紹介所名、路線名・駅名によるキーワード検索もでき、「未経験歓迎」「スポット」「短時間で働く」「週1日OK」「副業・扶養内で働く」といった探し方の入り口も用意されている。

応募までの流れは4段階で示されている。条件を選んで検索し、勤務条件や時給、紹介所の情報を見比べて選び、入力フォームから申し込むと、紹介所から連絡が来る。サイトのよくある質問では、詳しい求人内容は掲載している紹介所に問い合わせるよう案内し、紹介所はサイトに載っていない求人を扱っている場合もあるとしている。サイトはあくまで求人の入り口で、実際の職業紹介は従来どおり各紹介所が担う形だ。家政婦(夫)の仕事内容を紹介するリーフレットや動画も載せている。

紹介を通じた求職申込は1年で14.7%減

厚労省の雇用ガイドラインによると、家政婦(夫)は紹介所を通じて各家庭のもとで働くケースが多い。厚労省が2026年3月31日に公表した「令和6年度職業紹介事業報告書」の集計結果(速報)から、有料職業紹介のうち家政婦(夫)の欄を見ると、求職の減少が目立つ。

項目(有料職業紹介・家政婦(夫)) 2023年度 2024年度 増減率
新規求職申込件数 10万662件 8万5830件 −14.7%
常用求人数 3万1094人 2万8779人 −7.4%
常用就職件数 2万1054件 1万8455件 −12.3%
臨時日雇求人延数 138万5770人日 152万1585人日 +9.8%
臨時日雇就職延数 124万2800人日 122万4435人日 −1.5%

仕事を求めて紹介所に申し込んだ件数は、2023年度の10万662件から2024年度は8万5830件に減った。常用の就職件数も2万1054件から1万8455件に減っている。一方で、日々雇われる形の臨時日雇の求人は延べ138万5770人日から152万1585人日に増えたが、実際に就職した延べ人日は124万2800人日から122万4435人日とやや減った。2024年度に紹介所が家政婦(夫)の紹介で受け取った手数料の合計は24億4852万円だった。

働き手の年齢構成にも課題がある。厚労省の要請で労働政策研究・研修機構(JILPT)が2023年に実施した調査は、2020年度の職業紹介事業報告にある全国の家政婦(夫)紹介所541か所すべてを通じて調査票を配った。有効回答1997人のうち、女性が98.8%を占め、年齢は「70代」が50.1%と半数に達し、「60代」27.4%、「80代以上」7.3%と続いた。平均は68.9歳だった。医療・介護分野の人材紹介については、介護職の人材紹介手数料は平均59万7千円 医師は107万8千円で1年に25万4千円上昇 紹介で入った介護職の19.9%が6か月以内に離職でも厚労省の公表データを紹介している。

雇い主は「家庭」、労働基準法は適用されない

家政婦(夫)の働き方には、雇用関係に独特の仕組みがある。厚労省が2024年2月8日に策定した「家事使用人の雇用ガイドライン」は、家政婦(夫)紹介所について「ご家庭に家事使用人を紹介し、雇用関係の成立をあっせんする機関であり、あくまでもご家庭が雇い主となります」と明記している。つまり、紹介所を通じて働く家政婦(夫)の雇い主は、紹介所ではなく利用する家庭になる。

ガイドラインによると、個人宅に出向いて家庭と直接労働契約を結び、その指示のもとで家事一般に従事する「家事使用人」は、労働契約法の適用は受けるが、労働基準法は適用除外とされている。そのため労働時間の上限や休憩などは法律で義務づけられておらず、ガイドラインは家庭に対し、就業時間を「1日当たり8時間、1週当たり40時間を上限とすることが望ましい」とし、6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を設けるよう求めている。けがへの備えについては、紹介所などが特別加入団体になっていれば、紹介所を通じて労災保険に特別加入できると案内している。

ガイドラインを策定した背景について、厚労省はJILPTの調査で、業務内容や就業時間が不明確なために契約をめぐるトラブルが起きたり、就業中のけがへの補償が十分でなかったりする問題が一部で見つかったと説明している。ガイドラインは紹介所に対しても、家庭が雇い主としての自覚を持てるよう説明することなどを求めている。

適用除外の見直しを審議会で議論

家事使用人を労働基準法の対象外とする規定(同法第116条第2項)については、見直しの議論が進んでいる。厚労省の「労働基準関係法制研究会」が2025年1月8日に公表した報告書は、住み込みで働く家事使用人が減り、日々就業場所に通って決まった時間働く一般的な労働者とほとんど変わらなくなったことや、介護サービス事業者の労働者として働きながら家庭の家事使用人としても働く人が増えたことを挙げ、「家事使用人のみを特別視して労働基準法を適用除外すべき事情に乏しくなってきた」と指摘した。そのうえで、全面的に適用除外する現行規定を見直す方向を示した。

この報告書を受けて労働政策審議会の労働条件分科会でも議論が続いている。2025年12月24日の第206回分科会に示された意見の整理によると、労働者側委員は「家事使用人に対する適用除外規定は廃止すべき時期に来ている」と主張し、違法状態を解消するための国の支援策も求めた。使用者側委員は「労働基準法を適用する方向性に賛同」としつつ、規定を単に削除するのではなく、労働安全衛生法の措置や労災保険料の申告・納付、行政の監督・指導のあり方、紹介事業者が果たすべき役割などを含めて議論する必要があるとした。

家庭が雇い主になる仕組みのもとで法的な保護をどう広げるかという制度の議論と並行して、厚労省は今回のサイトで担い手の確保という足元の課題に手を打った形だ。家政婦(夫)ネットはモデル事業として東京都内の求人から始まっており、紹介所の参加や求人の掲載がどこまで広がるかが、今後の運用で問われることになる。