上野厚生労働相は13日の閣議後記者会見で、デイサービス(通所介護)の事業者の倒産が増えていることについて、厚労省の調査で「小規模事業所の経営が厳しい状況も明らかになっている」と述べ、倒産が増える要因になっているとの見方を示した。2027年度の介護報酬改定に向けては、審議会で「収支差の平均値のみならず、地域別や規模別、移動コストの状況、経営の様態などに着目して経営状況を丁寧に確認」したうえで検討を進めるべきだとした。翌14日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会(第270回)には、通所介護の送迎や入浴をめぐる報酬の見直し案が示された。

会見で挙げた要因は送迎・物価・小規模の経営

会見では記者が、デイサービス事業者の倒産が今年1〜9月に47件と同じ期間で過去最多になったとして、現状の認識と介護報酬の見直しの考えを尋ねた。

上野氏は、通所介護の倒産件数が47件になったという「民間調査の公表があったことは承知しています」と答えた。そのうえで、個々の事業所の倒産理由を網羅的に把握しているわけではないと断りつつ、三つの事情を挙げた。一つは、審議会で中山間地域の送迎コストの負担が大きいとの指摘が出ていること。二つ目は、介護業界全体で物価と人件費の高騰への対応が必要だという意見があること。三つ目が、厚労省の介護事業経営概況調査で小規模事業所の経営の厳しさが明らかになっていることである。

通所介護は、要介護の高齢者が日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練などを受けるサービスである。事業所の車で自宅との間を送り迎えするのが一般的で、送迎の費用は基本報酬に含まれている。厚労省が14日の分科会に示した資料によると、介護給付費等実態統計(2025年11月審査分)で通所介護の受給者は123万700人、請求事業所は2万4381か所だった。小規模な地域密着型通所介護は受給者44万600人、事業所1万7887か所である。1事業所あたりの利用者は通所介護が50.5人、地域密着型が24.6人だった。

介護サービス全体の費用の動きは介護サービスの費用、2025年度は12兆2208億円で4年続けて増加 利用者は685万1600人 1人あたり月額は鳥取23万3600円、埼玉19万6900円で伝えている。

規模別では月300人以下がマイナス4.2%

大臣が言及した介護事業経営概況調査は、厚労省が介護報酬見直しの基礎資料を得るため、サービスごとの事業所の収支を調べるものだ。2025年度の調査結果は同年12月3日の分科会(第249回)に報告された。

収入に対する利益の割合を示す「収支差率」は、通所介護全体で2023年度決算の6.5%から2024年度決算は6.2%に下がった(税引き前、物価高騰対策の補助金を含まない値)。全サービスの平均は4.7%で、通所介護は平均を上回る。ただし、2024年度決算で赤字だった通所介護事業所は37.4%にのぼる。

事業所の規模でみると差ははっきりしている。月の延べ利用者数で6段階に分けた2024年度決算の収支差率は、300人以下がマイナス4.2%、301〜450人がマイナス0.1%と赤字だった。451〜600人は5.3%、601〜750人は7.9%、751〜900人は6.3%、901人以上は10.0%である。2023年度決算では301〜450人は2.1%の黒字で、1年で赤字に転じた。

通所介護の規模別収支差率(2024年度決算)(%)

-50510-4.2300以下-0.1〜4505.3〜6007.9〜7506.3〜90010.0901〜
月の延べ利用者数による区分。税引き前、物価高騰対策の補助金を含まない出典: 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査 結果(案)」第77表
数値で見る(単位: %)
項目%
300以下-4.2
〜450-0.1
〜6005.3
〜7507.9
〜9006.3
901〜10.0

300人以下の事業所は、延べ利用者が月236.4人で、1事業所の月の収入は約238万円だった。利用者1人1日あたりの収入は1万54円で、901人以上の8604円より多い。それでも費用が収入を上回り、月約10万円の赤字となっている。

14日の分科会、送迎減算の緩和や共同送迎の拡充を提示

14日の分科会では、厚労省が通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護の論点と対応案を示した。資料に載った2026年度の調査(速報値)では、送迎の課題として「燃料費、車両リース料・購入費、修理代、保険料等の負担が大きい」と答えた事業所が80.7%、「運転・送迎に従事する職員の確保が難しい」が63.1%、「冬期の送迎時間・燃料費の負担が大きい」が42.2%だった。中山間地域や離島、農村地域の事業所ほど冬期の負担を挙げる割合が高い。

対応案の一つは、送迎減算の緩和である。いまは利用者の自宅へ迎えに行ったのに、家族が事業所まで送るなど利用者側の都合で送迎がなくなった場合も減算になる。厚労省は、迎えに行った際に起きる「突発的な送迎のキャンセル」を例外として減算の対象から外す案を示した。もう一つは共同送迎の拡充で、送迎を実施したと認める同乗の範囲を、いまの他の介護サービス事業所や障害福祉サービス事業所に加え、児童の通園・通学や地域の買い物支援にも広げる案である。

このほか、ほとんど算定されていない延長加算のうち12時間以上の2区分の廃止、地域密着型通所介護の中重度者ケア体制加算の要件見直しも挙がった。延長加算の12〜13時間の区分の算定率は、通所介護で0.0%だった。入浴をめぐっては、水道光熱費の高騰などを踏まえた入浴介助加算の単価見直しや、訪問入浴の事業者がない中山間地域などで、入浴を目的とした短時間の通所利用を例外的に認める案を示した。

分科会では先行して、夜間対応型訪問介護は2027年3月末で廃止 統合先の定期巡回に24時間対応を評価する新報酬案 グループホームは3ユニットの夜勤2人体制を拡大案など地域密着型サービスの議論も進んでいる。

送迎コストは別の場で議論、改定は「平均」以外も

大臣が会見で触れた中山間地域の送迎コストについて、厚労省は14日の資料で、冬期に送迎時間が長くなるなど負担が大きいことを踏まえ、2026年度の老人保健健康増進等事業で把握する実態も勘案して対応を考えるとした。具体策は、人口減少やサービス需要の変化に応じた提供体制を扱う分科会で説明し、議論する予定だとしている。

これまでの分科会では委員から、中山間地域や積雪地域の通所系サービスを特別地域加算の対象にすべきだとの意見や、事業所数が減っている要因を詳しく調べるべきだとの意見が出ている。資料は、医療・福祉施設の送迎も地域の輸送資源として生かす仕組みを盛り込んだ地域公共交通活性化再生法の改正法が6月に成立し、10月16日に施行される予定だとも記している。

介護報酬は介護サービスごとに国が定める価格で、2027年度の改定に向けた議論が分科会で続いている。概況調査は「介護報酬見直しのための基礎資料を得ること」を目的とし、サービスごとの収支差率を示す。通所介護全体の6.2%という数字は全サービス平均を上回るが、その内側では月300人以下の小規模事業所が赤字で、規模が大きいほど利益率が高い。平均値だけを見れば、小規模事業所の苦境は見えにくい。

上野氏が会見で「収支差の平均値のみならず」と述べたのは、こうした規模や地域による差を改定の議論に反映させるよう求めたものだ。通所介護は在宅で暮らす要介護の高齢者を支える柱のサービスで、送迎がなければ通えない利用者も多い。小規模な事業所が撤退すれば、近くに通える場所がなくなる地域も出てくる。2027年度改定に向け、規模別・地域別の経営実態をどう報酬に落とし込むかが今後の焦点になる。