厚生労働省は10月27日、令和7(2025)年度の「衛生行政報告例」の結果を公表した。精神障害者保健福祉手帳の交付台帳に載っている人(有効期限切れを除く)は2025年度末時点で164万6609人となり、前年度末から9万9176人(6.4%)増えた。2021年度末の126万3460人と比べると、4年で38万3149人、約1.3倍に増えた計算になる。等級別では、障害の程度が最も軽い3級が55万5088人で、4年間の伸びが最も大きかった。人口10万人当たりでは1339.0人で、およそ75人に1人が手帳を持っていることになる。

手帳の登載数、毎年6〜7%台の増加

報告例の年次推移によると、手帳の登載数は2021年度末の126万3460人から、2022年度末134万5468人、2023年度末143万8093人、2024年度末154万7433人と増え続け、2025年度末に164万人台に乗った。前年度からの増加数は2022年度が8万2008人、2023年度が9万2625人、2024年度が10万9340人、2025年度が9万9176人で、率にすると毎年6〜7%台で増えている。人口10万人当たりの数も、2021年度の1006.7人から2025年度の1339.0人に上がった。

精神障害者保健福祉手帳の登載数(各年度末)(人)

0500,0001,000,0001,500,0002,000,0001,263,46020211,345,46820221,438,09320231,547,43320241,646,6092025
有効期限切れを除く。2021年度末から4年で約1.3倍になった出典: 厚生労働省「令和7(2025)年度衛生行政報告例」表2
数値で見る(単位: 人)
項目人
20211,263,460
20221,345,468
20231,438,093
20241,547,433
20251,646,609

都道府県別では、東京都が19万473人で最も多く、大阪府14万6133人、神奈川県12万9062人、愛知県11万7641人、埼玉県9万1961人と続く。指定都市(再掲)では大阪市5万9335人、横浜市5万7011人、名古屋市4万3354人が多い。

増加の中心は2級と3級

等級別に見ると、2025年度末は1級が14万317人、2級が95万1204人、3級が55万5088人で、2級が全体の約58%、3級が約34%、1級が約9%を占める。

等級 2021年度末 2025年度末 4年間の増加
1級 13万2163人 14万317人 8154人
2級 74万3152人 95万1204人 20万8052人
3級 38万8145人 55万5088人 16万6943人
計 126万3460人 164万6609人 38万3149人
精神障害者保健福祉手帳の等級別登載数(各年度末・有効期限切れを除く)出典: 厚生労働省「令和7(2025)年度衛生行政報告例」表2

1級は4年で約1.06倍にとどまる一方、2級は約1.28倍、3級は約1.43倍に増えた。前年度からの増加率も1級0.7%、2級6.0%、3級8.7%で、等級が軽いほど伸びが大きい。厚労省の用語の定義では、1級は「他人の援助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度」、2級は「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活が困難な程度」、3級は「日常生活又は社会生活に制限を受けるか、日常生活又は社会生活に制限を加えることを必要とする程度」とされる。働きながら、あるいは地域で暮らしながら支援を受ける人が、手帳を持つ人の多くを占めるようになっている。

手帳とは何か 2年ごとに更新の認定

精神障害者保健福祉手帳は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第45条に基づく。精神障害者(知的障害者を除く)が居住地の都道府県知事(指定都市では市長)に申請し、政令で定める精神障害の状態にあると認められると交付される。同条は、交付を受けた人が「二年ごとに」その状態にあることについて都道府県知事の認定を受けなければならないと定めており、手帳には有効期限がある。報告例の登載数が「有効期限切れを除く」としているのはこのためで、数字は更新の認定を受け続けている人の数を表す。

衛生行政報告例そのものは、都道府県、指定都市、中核市が衛生関係の法令に基づいて行った行政の実績を国に報告するもので、精神保健福祉、栄養、生活衛生、薬事など10分野にわたる。今回の公表では、薬局数が6万3417施設で前年度から214施設増えたことなども示された。人口10万人当たりの比率は、今回から令和7年国勢調査の人口を用いて算出している。

措置入院は1430人、医療保護入院届は18万件

精神保健福祉関係では、入院の制度に関する数字も公表された。2025年度末の措置入院患者数は1430人で、前年度末から94人(7.0%)増えた。措置入院は、2人以上の精神保健指定医の診察で、入院させなければ精神障害のために自身を傷つけたり他人に害を及ぼしたりするおそれがあると診断が一致した場合に、都道府県知事が入院させる制度(同法第29条)。2021年度末は1569人、2022年度末は1668人で、2023年度末に1367人、2024年度末に1336人まで減っていたが、2025年度末は再び増えた。都道府県別では東京都243人、埼玉県141人、神奈川県121人、福岡県88人が多い。

家族等の同意があれば本人の同意がなくても入院させられる医療保護入院(同法第33条)の届出数は、2025年度に18万2905件で、前年度から1199件(0.7%)増えた。一般や警察官等からの申請・通報・届出は2万6515件(前年度比266件増)で、このうち診察を受けた人は9746人だった。

なお、今回の公表では過去の年度の数値の一部が改められている。たとえば2024年度末の措置入院患者数は、前年に公表された令和6年度の報告例では1349人だったが、今回の年次推移では1336人となっている。本記事の前年度比は、今回の公表の数値に基づく。

精神保健福祉センターの相談、ひきこもりが4分の1

都道府県と指定都市が置く精神保健福祉センターでの相談延人員は、2025年度に7万7909人だった。令和6年度の報告例が示した8万1615人より3706人少ない。主な相談内容別では「社会復帰」が1万9958人(25.6%)で最も多く、「心の健康づくり」1万150人(13.0%)、「ギャンブル」8229人(10.6%)、「思春期」7157人(9.2%)が続いた。アルコールは3723人、薬物は3443人、ゲームは747人で、ギャンブルと合わせた依存に関わる4項目は計1万6142人、相談延人員の約2割にあたる。

相談の要因別では、「ひきこもり」が2万352人(26.1%)と4分の1を超えた。厚労省は「ひきこもり」を、仕事や学校に行かず、家族以外の人との交流をほとんどせずに6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態にある7歳から49歳までの者と定義している。このほか「発達障害」が6465人(8.3%)、自殺の危険や未遂、遺族からの相談などを含む「自殺関連」が5400人(6.9%)で、そのうち自死遺族は1055人だった。

精神保健福祉法は、手帳の申請に対する決定や、障害者総合支援法に基づく支給認定(精神障害者に係るもの)のうち専門的な知識と技術を要する事務を、精神保健福祉センターの業務と定めている。手帳を持つ人が毎年10万人規模で増えれば、新規の交付に加えて2年ごとの更新の審査も同じ割合で積み上がる。そのセンターでは相談延人員が前年度より減った一方、ひきこもりの相談が2年続けて全体の4分の1を超えた。手帳の審査と相談の両方を担うセンターの人員と専門職を、増え続ける手帳の数に見合う形でどう確保するかが、都道府県と指定都市に問われる。