自民党、日本維新の会、国民民主党の3党は10月29日、国会内で幹事長と実務者による会談を開き、衆議院の選挙制度の見直しについての合意文書に署名した。衆院の議員定数を31削減し、削減はすべて比例代表で行う。比例代表の議席配分方式の変更やブロックの統合など、ほかに6項目を盛り込んだ。3党は今の第222回国会に共同で法案を提出し、成立を目指す。前日の28日には、立憲民主党の田名部匡代幹事長が記者会見で「数の力で進めてよいことではない」と述べ、反対の立場を示していた。

3党の幹事長が署名、削減は比例代表だけ

国民民主党が公表した発表と合意文書によると、会談には自民党の鈴木俊一幹事長、維新の柴田巧幹事長、国民民主党の榛葉賀津也幹事長らが出席した。合意文書の日付は令和8年10月29日で、3党の幹事長の名前が並ぶ。

文書は前文で、衆議院選挙制度に関する協議会から衆院議長への報告にある「理想の選挙制度に向けた抜本改革」の結論を得るまでの間の措置として、「現行制度の見直し」に合意すると位置づけた。そのうえで「速やかに立法作業を進め、共同提案にて今第222回国会に法案を提出し成立を期す」と明記した。

榛葉氏は会談後、記者団に対し、三党の幹事長と実務者の計7人で最終的な会談と調印式を行ったと説明した。比例代表に限って減らす理由について、「小選挙区に手をつければ、人口減少が加速している地方の選挙区を削ることになり、地方の声がますます国会に届きにくくなる」と述べ、地方の小選挙区を守るために比例代表で対応すると理解していると語った。一部の野党から比例代表だけを減らすことに異論が出ていることも承知しているとした。

公職選挙法第4条は、衆院の定数を465人とし、うち289人を小選挙区、176人を比例代表と定めている。合意どおり比例代表を31減らすと、定数は434人、比例代表は145人になる。小選挙区の289人は変わらないため、定数に占める小選挙区の割合は約62%から約67%に上がる。

合意した8項目と現行の仕組み

合意文書は「記」以下に8項目を並べる。定数削減の2項目のほかは、比例代表の議席の決め方や候補者の扱いを改める内容だ。

項目 現行(公職選挙法) 3党の合意
比例の議席配分 ドント式(第95条の2) 修正サン・ラグ式に変更
比例のブロック 11ブロック(中国10人、四国6人) 中国と四国を統合し10ブロック
重複立候補の当選基準 小選挙区の有効投票総数の10分の1 6分の1に引き上げ
名簿の候補者が不足する場合 名簿の人数までしか議席を割り当てない 欠員とする
供託金の没収点 ― 引き下げる
統一名簿方式 ― 可能とする
離党した比例議員の政党交付金 ― 取り扱いを検討
議員定数 465人(比例176人) 31削減、比例代表で行う
衆院選挙制度の見直しで3党が合意した8項目と現行制度出典: 3党の合意文書(国民民主党公表)、公職選挙法

比例代表の議席は現在、第95条の2の規定で決まる。各党の得票数を1から名簿登載者の数までの整数で順に割り、得られた商の大きい順に議席を割り振る方式で、ドント式と呼ばれる。合意はこれを修正サン・ラグ式に改める。榛葉氏は合意に至った経緯の中で、統一名簿方式とともに「少数政党にもよりプラスになる方式」を取り入れたと説明した。

ブロックは公職選挙法の別表第二が定める。北海道8人から近畿28人まで11に分かれ、四国は最も少ない6人、中国は10人だ。合意は両ブロックを統合し、全国を10ブロックにする。統合後に各ブロックへ何人を割り当てるかは、合意文書には書かれていない。

重複立候補は、小選挙区と比例代表の両方に名前を載せる仕組みだ。現行法では、小選挙区の得票が有効投票総数の10分の1(第93条が定める供託金没収の水準)に届かなかった候補者は、比例代表で復活当選できない。合意はこの線を6分の1に引き上げ、小選挙区で得票の少ない候補者が比例で議席を得る道を狭める。

削減幅は45から31に、国民民主の主張は一部が入る

定数削減を巡っては、自民党と維新が前の第221回国会の6月24日に「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」を提出していた。衆院の議案情報によると、法案は比例代表の定数を176人から45人減らして131人とし、定数を420人とする内容で、政党間の協議で結論が出ないまま一定期間が過ぎれば削減が実施される仕組みも備えていた。法案は政治改革に関する特別委員会に付託されたが、採決されずに閉会中審査となった(経緯は衆院定数削減法案、6月の提出から採決されず閉会中審査 減らす45人はすべて比例代表 協議が1年でまとまらなければ自動的に定数420人)。榛葉氏も29日、「連立与党では、45議席の削減が連立時の約束だった」と述べている。

その後、各党が参加する協議会で議論が続き(衆院選挙制度の9党協議、与党が比例45減を再主張 公明「3対2の割合を前提に」)、鈴木馨祐座長(自民党)が修正案を示した。国民民主党が26日に開いた党の会議後の会見記録によると、古川元久政治改革・行政改革推進本部長は、座長案の31削減は2015年の国勢調査と2030年の推計人口を比べて算出したものだと説明した。そのうえで、確定値が出ている2015年と2025年を比べるべきだとし、その場合は19削減になると座長に申し入れる考えを示していた(国民民主、衆院定数削減を条件付きで受け入れ 比例のみ「1回限りのつなぎ」 削減幅は19を提案)。

29日の合意で削減数は座長案の31となり、国民民主党の19は採られなかった。一方、同党が座長案に無いとして追加を求めていた共通名簿(統一名簿方式)の導入と、人口の少ないブロックの統合は合意に入った。同党が求めた被選挙権年齢の引き下げは、合意文書の8項目には含まれていない。榛葉氏は「実質7項目からなる修正で、本日合意に至った」と述べ、自党の意見が取り入れられたと強調した。

立憲「少数政党も含めて丁寧な議論を」

野党第1党の立憲民主党は反対している。田名部幹事長は合意前日の28日の定例会見で、政党間協議で自民党の修正案に3党が賛同したことについて、選挙制度は民主主義の基盤であり、少数政党も含めて丁寧な議論が必要だと指摘した。党の発表によると、田名部氏は安倍晋三元首相がかつて党首討論で少数政党への配慮を訴えていたことを紹介し、「数の力で進めてよいことではない」と述べた。削減数31の根拠や区割りについての説明が不十分で、人口減少地域の声が届きにくくなるとの懸念も示した。

同じ28日には、衆院第2議員会館前で「議員定数削減反対!緊急アクション」が開かれ、立憲民主党の打越さく良参院議員が「熟議の民主主義を実現するためには、議員定数削減は認められない」と訴えた。

人口減少地域の声を理由に挙げる点は、榛葉氏が比例代表に限って減らす理由として示した説明と同じだ。3党は地方の小選挙区を残すために比例代表を減らすとし、立憲は削減そのものが人口減少地域の声を届きにくくすると見ている。同じ懸念から、反対の結論に分かれた形になっている。

31の算定根拠を法案審議で示すべきだ

3党の合意は、6月の法案提出から4か月余り結論の出なかった定数削減を、具体的な数と制度の形にした。小選挙区には手を付けず、比例代表のブロック統合や配分方式の変更で少数政党への影響を和らげる項目を組み合わせたのは、人口が減る地方の代表を確保しつつ、定数を減らすという連立時の約束を果たす現実的な判断である。与党だけでなく野党の国民民主党が条件を出して加わり、その主張の一部を文書に残させた点も、協議を結論まで運ぶという国会議員の職務にかなう。

一方で、削減数そのものの根拠は弱い。31は2015年の国勢調査と2030年の推計人口の比較から出た数字で、確定値どうしを比べれば19になると合意に加わった国民民主党自身が説明していた。定数を法律で決める以上、推計を基にした数字を選んだ理由は、提出者の3党が国会で説明できなければならない。法案を提出する際には、31の算定に使った人口の数字と計算の手順を、統合後のブロックの定数とあわせて示すべきではないか。

反対する立憲民主党も、人口減少地域の声が届きにくくなると言うのであれば、比例代表を残したまま地方の代表をどう確保するのか、制度の対案を数字で示すべきではないか。両者の主張がそろって初めて、有権者は審議の中身を比べることができる。