厚生労働省は2026年9月30日、医療・介護・保育の分野で人材紹介会社(有料職業紹介事業者)が受け取った手数料の平均額と、紹介で就職した人がどれだけ早く辞めているかを示す離職率のデータを更新して公表した。令和6年度の全国平均手数料は介護が59万7千円、看護が72万5千円、保育が66万8千円、医師が107万8千円で、4つの職種すべてが前の年度より上がった。一方、紹介で就職して6か月以内に辞めた人の割合は介護が19.9%と最も高く、紹介で入った介護職のおよそ5人に1人が半年のうちに職場を離れている。
4職種すべてで手数料が上がり、医師は1年で25万4千円増えた
手数料の平均額は、人材紹介会社が国に出す「職業紹介事業報告」をもとに、常用就職(無期雇用、または4か月以上の期間を定めた雇用)の件数と、それに対応する手数料の総額から算出したものだ。
全国平均を前回の公表分(令和5年度実績)と並べると、医師は82万4千円から107万8千円へ25万4千円上がった。看護は63万9千円から72万5千円へ8万6千円、介護は55万1千円から59万7千円へ4万6千円、保育は64万6千円から66万8千円へ2万2千円の上昇である。上げ幅は職種によって10倍以上の開きがあるが、下がった職種は一つもない。
職場が人材紹介会社に払うこの金額は、採用1人あたりの費用になる。介護の求人は求職者を大きく上回る状態が続いていて、9月29日公表の令和8年版厚生労働白書を公表 介護職の有効求人倍率3.98倍、病院の58.0%が経常赤字 テーマは「医療・介護・福祉の現場で働くこと」では、介護職の有効求人倍率が3.98倍に達したことが示されている。求人1件に対し求職者が4分の1しかいない市場で、紹介の対価が上がっている構図だ。
介護の離職率は19.9%、1年前の15.3%から悪化
離職率は、無期雇用で常用就職した人のうち、就職して6か月以内に辞めた人の割合である。手数料とは集計年度が1年ずれていて、今回公表されたのは令和5年度の実績だ。
全国平均は介護が19.9%、保育が14.5%、看護が12.9%、医師が4.8%。前回公表分(令和4年度実績)は介護15.3%、保育12.2%、看護10.5%、医師3.0%だったので、こちらも4職種すべてで悪化した。とくに介護は15.3%から19.9%へ上がり、5人に1人に近づいている。
この数字には「判明せず」という欄が別に付く。6か月以内に辞めたかどうかを人材紹介会社が把握できず、そう報告した分の割合で、離職率の外側に置かれる。令和5年度は医師0.1%、看護0.3%、保育1.1%、介護0.6%で、全国では医師9件、看護241件、保育190件、介護227件が「判明せず」だった。前回は看護2.4%、保育3.8%、介護2.4%と不明分がもっと多く、把握の精度が上がった分だけ離職率が見かけ上押し上げられた可能性もある。
手数料の決め方は2通り、届出制には上限額の定めがない
人材紹介会社が手数料を取れる根拠は職業安定法第32条の3で、方法は2つに限られている。
1つは「上限制手数料」で、金額の上限が職業安定法施行規則の別表に書かれている。求人の申し込みを受けたときの受付手数料が1件710円(消費税の免税事業者は660円)、紹介手数料は支払われた賃金額の11%(免税事業者は10.3%)。期間の定めのない雇用で6か月を超えて働いた場合は、6か月分の賃金の11%か、賞与など臨時に支払われる分を除いた賃金の14.8%のうち大きい額までとなる。月給25万円の人を無期雇用で採用した場合に当てはめると、6か月分の賃金150万円の11%は16万5千円、賞与を除いた14.8%は22万2千円で、上限は22万2千円になる。
もう1つが「届出制手数料」で、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づいて徴収する。この方式には法令上の上限額の定めがない。特定の相手を不当に差別する内容だったり、種類や額が明確に定められていないために著しく不当と認められる場合に、厚生労働大臣が手数料表の変更を命じられる仕組みで歯止めをかけている。今回公表された数十万円から100万円超という平均額は、上限制の水準を大きく超えており、届出制が使われていることを示す。なお、どちらの方式でも求職者本人から手数料を取ることは原則として禁じられている。
医師の手数料は南関東152万円・近畿43万8千円、介護の離職率は四国27.1%
資料は全国を10のブロックに分けた数字も載せている。手数料の地域差が最も大きいのは医師で、南関東の152万円に対し近畿は43万8千円と3倍以上の差がある。中国111万1千円、九州105万7千円、北陸102万8千円が続く。介護は北陸の87万8千円が最も高く、北関東・甲信の54万4千円が最も低い。看護は北陸81万7千円が高く九州57万5千円が低い。保育は四国78万9千円が高く、北海道55万5千円が低かった。
離職率では四国が目立つ。介護27.1%、看護24.8%、医師16.4%といずれも全国平均を大きく上回る。介護の離職率が低いのは南関東と北関東・甲信の17.3%、看護は東北の10.2%だった。医師は北海道が0%で、四国の16.4%との開きが大きい。
ただし都道府県ごとの数字には制約がある。平均値としての意味が持てず、個別の事業所が特定されるおそれもあるため、対象となる職業紹介事業所が10か所に満たない都道府県は計上されていない。また、ブロックや都道府県の区分は人材紹介会社の所在地で分けたもので、人を募っている病院や施設の所在地ではない。
厚労省はこの資料を「職業紹介事業者を選択する際の参考としていただくなど、適宜、ご活用いただきますようお願いします」として公表しており、手数料の多寡と早期離職の多寡を病院・施設の側が見比べられるようにする狙いがある。介護の現場に流れる費用の全体像については、介護サービスの費用、2025年度は12兆2208億円で4年続けて増加 利用者は685万1600人 1人あたり月額は鳥取23万3600円、埼玉19万6900円も参照できる。
