第2次高市改造内閣で農林水産大臣を務めているのは、衆院議員の武部新(たけべ・あらた)氏である。首相官邸が公表する「第2次高市改造内閣 閣僚等名簿」は令和8年10月15日現在の内容で、農林水産大臣の欄に武部氏の名が記されている。農林水産省が扱う行政の範囲は農林水産省設置法が定めており、同法第3条第1項は食料の安定供給の確保をはじめ7つの任務を挙げ、第4条第1項はそれを達成するための所掌事務を第1号から第86号まで列挙している。外局は林野庁と水産庁の2つ。行政機関職員定員令が定める同省の定員は1万9156人で、府省の中では6番目にあたる。
現職は武部新氏 名簿には前任の在任期間も併記
官邸の閣僚名簿には「令和8年9月17日発足 令和8年10月15日現在」と記され、農林水産大臣の欄は武部新氏(衆議院)となっている。名簿の後半には「農林水産大臣 令和8年9月17日~令和8年10月15日」という欄が別に設けられ、簗和生(やな・かずお)氏(衆議院)の名が残されている。第2次高市改造内閣の発足から1か月足らずで担当大臣が代わった事実が、名簿そのものに記録されている形である。
交代の経緯は農水相の後任は武部新氏 簗和生氏が在任29日で辞任、首相「任命責任を重く受け止める」、就任当日の発言は武部新農水相が就任会見 備蓄米21万トン買い戻し「着実に」、米は「需要に応じた生産」継続で伝えている。
農林水産省設置法第2条は、国家行政組織法第3条第2項に基づいて農林水産省を設置すると定め、第2項で「農林水産省の長は、農林水産大臣とする」と規定する。大臣は省の長であり、個別の法律が「農林水産大臣」に与えた権限を自らの名で行使する。表示の是正を命じる処分もその一つで、地理的表示(GI)保護制度に基づく措置命令を農水省が出した事例はふるさと納税の返礼品に「越前がに」の不正表示 農水省が福井県越前町に措置命令 水がにを過半超え混ぜた商品を2020年9月から2026年4月まで掲載で伝えた。大臣が誰であるかは、こうした処分や計画の名義が誰になるかに直結する。
政務三役は5人 副大臣と大臣政務官はそれぞれ2人
官邸の副大臣名簿によると、農林水産副大臣は小寺裕雄(こてら・ひろお)氏(衆議院)と藤木眞也(ふじき・しんや)氏(参議院)の2人。大臣政務官名簿では、農林水産大臣政務官は森下千里(もりした・ちさと)氏(衆議院)と保岡宏武(やすおか・ひろたけ)氏(衆議院)の2人である。大臣を含めた政務三役は5人で、うち参議院からの起用は藤木氏1人となっている。
| 役職 | 氏名 | 所属議院 |
|---|---|---|
| 農林水産大臣 | 武部 新 | 衆議院 |
| 農林水産副大臣 | 小寺 裕雄 | 衆議院 |
| 農林水産副大臣 | 藤木 眞也 | 参議院 |
| 農林水産大臣政務官 | 森下 千里 | 衆議院 |
| 農林水産大臣政務官 | 保岡 宏武 | 衆議院 |
政務三役とは別に、設置法第5条は「農林水産省に、農林水産審議官一人を置く」と定め、農林水産審議官は命を受けて省の所掌事務に係る重要な政策に関する事務を総括整理すると規定している。法律が人数まで定めている職であり、政務三役の交代にかかわらず置かれ続ける。
設置法が定める任務は7つ 所掌事務は第86号まで
設置法第1条は、この法律の目的を「農林水産省の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定める」ことだとしている。任務を書いた第3条第1項は、農林水産省が図るべきものとして①食料の安定供給の確保②農林水産業の発展③農林漁業者の福祉の増進④農山漁村及び中山間地域等の振興⑤農業の多面にわたる機能の発揮⑥森林の保続培養及び森林生産力の増進⑦水産資源の適切な保存及び管理の7つを並べる。同条第2項は、これに加えて「同項の任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けること」も任務だと定めている。
任務を達成するための所掌事務は第4条第1項に列挙されており、第1号から第86号まで続く。途中に「第十一号の二」のような枝番の号があるため、条文上の項目を数えると90項目になる。第1号は「食料の安定供給の確保に関する政策(食品衛生に係るものを除く。)に関すること」で、食品衛生は厚生労働行政の側に置かれていることが括弧書きで示されている。第11号の2は農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律第4条に規定する事務、第84号は政令で定める文教研修施設での研修、第85号は農林水産技術についての試験及び研究である。最後の第86号は「前各号に掲げるもののほか、法律(法律に基づく命令を含む。)に基づき農林水産省に属させられた事務」と書かれ、個別法が新たに大臣や省に事務を与えた場合をここで受け止める構造になっている。
さらに設置法の附則第3項は、期限を区切って上乗せされる事務を表の形で定めている。地域振興の臨時措置法に合わせたもので、いずれも「総合的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること」が対象である。
| 期限 | 対象地域 |
|---|---|
| 令和9年3月31日 | 特殊土壌地帯の災害の防除及び振興 |
| 令和11年3月31日 | 奄美群島の振興及び開発 |
| 令和13年3月31日 | 過疎地域の持続的発展 |
| 令和15年3月31日 | 離島振興対策実施地域の振興 |
| 令和17年3月31日 | 半島振興対策実施地域の振興 |
外局は林野庁と水産庁 審議会は本省に4つ
設置法は、国家行政組織法第3条第2項に基づいて農林水産省に林野庁と水産庁の2つの外局を置くと定めている。林野庁の任務は森林の保続培養、林産物の安定供給の確保、林業の発展、林業者の福祉の増進、国有林野事業の適切な運営の5つで、第4条第1項のうち第55号から第66号まで、第83号から第86号までなどの事務を担う。水産庁の任務は水産資源の適切な保存及び管理、水産物の安定供給の確保、水産業の発展、漁業者の福祉の増進の4つで、第67号から第83号までなどの事務を担う。林野庁には森林管理局が置かれ、その事務の一部を分掌させるために森林管理署と支署が置かれる。
審議会等は、本省に農業資材審議会が設置法第6条第1項で直接置かれ、同条第2項の表で食料・農業・農村政策審議会(食料・農業・農村基本法)、獣医事審議会(獣医師法)、農漁業保険審査会(農業保険法)の3つが別の法律に基づいて置かれると定められている。本省の審議会等は計4つで、このほか林野庁に林政審議会(森林・林業基本法)、水産庁に水産政策審議会が置かれる。農業資材審議会は農薬取締法、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律、種苗法、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律に基づく事項を処理する。
本省には農林水産技術会議も置かれる。設置法は会長と委員6人で組織すると定め、事務を処理させるために事務局を置くとしている。地方組織としては地方農政局があり、第4条第1項の多くの号の事務を分掌するほか、農林水産業の統計の作成・提供とその調査、所掌事務に係る情報の収集・整理・分析・提供、所掌事務に関する相談を担う。名称、位置、管轄区域、内部組織は政令で定められる。
定員は1万9156人 府省では6番目
行政機関職員定員令(令和8年7月31日施行)第1条第1項の表は、農林水産省の定員を1万9156人と定め、備考に「うち、一人は、特別職の職員の定員とする」と記している。特別職の1人は大臣にあたる。表に並ぶ国の行政機関の定員の合計は30万7761人で、農水省はその6.2%を占める。省の本省と外局それぞれの定員は、この省の定員の範囲内で省令が定めると規定されており、林野庁や水産庁の内訳は政令の表には出てこない。
府省別に見ると、農林水産省より定員が多いのは財務省7万3196人、国土交通省6万443人、法務省5万6086人、厚生労働省3万3093人、防衛省2万1418人の5つで、農水省は6番目となる。いずれも外局を含む数で、財務省は国税庁、法務省は刑事施設などの現場職員を抱える。防衛省の2万1418人のうち2万1393人は特別職の定員である。農水省に次ぐのは内閣府1万6172人、経済産業省8068人、外務省6845人、総務省4882人、環境省3490人、文部科学省2256人の順で、7位以下との差は大きい。
定員が多い上位6府省(行政機関職員定員令 第1条第1項)(人)
数値で見る(単位: 人)
| 項目 | 人 |
|---|---|
| 財務省 | 73,196 |
| 国土交通省 | 60,443 |
| 法務省 | 56,086 |
| 厚生労働省 | 33,093 |
| 防衛省 | 21,418 |
| 農林水産省 | 19,156 |
定員は組織の規模を示す一方で、農林水産省の場合は地方農政局と森林管理局という地方組織を抱えることが数字に反映されている。所掌事務が第86号まで並び、期限付きの事務が附則で5件上乗せされている構造とあわせて見ると、大臣が1人で名義を負う範囲は、米や牛乳といった個別の品目を超えて、森林、水産資源、離島や半島の振興にまで及ぶ。簗氏から武部氏への交代が1か月足らずで起きたことの重さも、この範囲の広さを前提に置くと見えやすい。
