18歳未満の選挙運動を一律に禁じる公職選挙法の規定は、表現の自由を保障した憲法21条1項に違反する――。東京地裁が9月25日に示したこの判断を受け、国民民主党は10月14日、党の政治改革行政改革推進本部と選挙制度調査会の合同会議に「18歳未満にも選挙で応援する自由を」訴訟の原告団を招き、ヒアリングを行った。党の発表によると、古川元久本部長(衆院愛知2区)は冒頭、「未成年であっても政治や選挙に関われる道を開いていけるように国民民主党として取り組んでいく」と述べ、前向きに検討を進める考えを示した。

国民民主党、原告団から聞き取り

党の発表によると、14日は合同会議でのヒアリングに加え、党青年局の主催で党学生部と「18歳未満の選挙運動禁止」をテーマに意見交換も行った。

古川氏は冒頭あいさつで「未成年の選挙運動禁止について地裁で違憲判決が出た。若いうちから政治・選挙に関われることは、政治に対する意識を高め、政治参画を促すことにつながる」と述べた。党として具体的にどの条文をどう改めるかといった案は、発表には示されていない。

地裁判決は条文そのものを無効にするものではなく、規定を変えるには国会での法改正が必要になる。原告側の弁護団も10月7日付の声明で「国会は速やかに法改正を実現するべき」としており、政党側がどう受け止めるかが次の焦点になる。判決要旨によると、規定の制定後、国会でその当否が具体的に検討された事情は見当たらないと判決自身が指摘しており、今回のヒアリングは判決後に政党が当事者から話を聞いた動きとなる。衆院の選挙制度をめぐっては、別の論点で衆院選挙制度の政党間協議が初開催 与野党9党が参加し10月末を目途に結論へ 比例45人減の法案は閉会中審査のままのとおり与野党の協議も動いている。

何が禁じられているのか

問題となったのは公職選挙法137条の2だ。判決文によると、同条1項は「年齢満18歳未満の者は、選挙運動をすることができない」と定め、2項は「何人も、年齢満18歳未満の者を使用して選挙運動をすることができない」と定める(選挙運動のための労務に使用する場合は除く)。

違反すると、239条1項1号により1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される。さらに252条により、罰金刑が確定した人は原則5年間、選挙権と被選挙権を失う(公民権停止)。

判決が認定した経緯によると、この規定は1952年(昭和27年)8月16日成立の公選法改正で設けられ、同年9月1日に施行された。訴訟で国側は、制定の過程で連呼行為や「人海戦術」に未成年者が動員されたことが問題として指摘されていたと主張した。その後、選挙権年齢の引き下げに伴い2015年の法改正で対象が「18歳未満」に改められ、2013年にはインターネットを使った選挙運動も解禁されたが、未成年者の選挙運動の禁止そのものは70年以上続いてきた。

原告は4人。訴えた時点で17歳だった1人は、2024年の選挙の際に自分のブログで候補者を応援する投稿をしようとして断念した。別の1人は、2024年の東京都知事選で候補者に手伝いを申し出たが、未成年であることを理由に断られたと判決は認定している。もう1人は2022年7月の参院選の際、所属団体の活動として候補者に政策についての質問状を届ける役を担おうとしたが、選挙運動の禁止に触れるおそれがあると指摘され、辞退した。4人のうち口頭弁論が終わった時点でも未成年だったのは1人で、この原告は次回選挙で選挙運動ができる地位の確認も求めていた。

判決は「一律禁止」を違憲、「使用禁止」は合憲

判決要旨によると、判決(衣斐瑞穂裁判長)は、規定の目的を「選挙の公正の確保」と「未成年者の保護」の二つと認めたうえで、いずれについても一律に禁止する必要性は高くないと判断した。

選挙の公正については、連呼行為や人海戦術の弊害は未成年者が加わる場合に限らず、公選法はすでにそれらを個別に規制していると指摘し、「未成年者の選挙運動を一律に禁止しなければならない理由は判然としない」と述べた。国は「未成年者には選挙権が与えられていない」とも主張したが、判決は公選法が選挙権の有無だけを基準に選挙運動を禁じているわけではないとして退けた。

未成年者の保護についても、不当な選挙運動に巻き込まれるのを防ぐなら、そうした選挙運動や動員を規制すべきだとし、未成年者が自らの関心に基づいて選挙運動に参加すること自体を禁じる「実質的根拠は見いだし難い」とした。そのうえで判決は、1項が表現の自由への直接の制約で、未成年者は一切の選挙運動を禁じられると指摘した。選挙権を持たないことや、制約が成年に達するまでの限られた期間にとどまること、選挙運動以外の政治活動は禁じられていないことを考慮しても「制約の程度は大きい」とし、目的は弊害に対応した個別の規定を設ければ達成できるとして、1項は憲法21条1項に違反すると結論づけた。違反した未成年者を罰する罰則と公民権停止の規定も違憲とし、保護の対象である未成年者を処罰することは「およそ合理性を欠く」と述べた。

一方、2項の「使用禁止」は合憲とした。未成年者が親権者など影響力のある人によって意に沿わない選挙運動をさせられるおそれは明らかだとし、規制の対象は未成年者を使う第三者で、未成年者が自ら選挙運動をしたり、使用関係なしに他者と一緒に活動したりすることまでは禁じていないと判断した。

規定 内容 判決の判断
137条の2第1項 18歳未満の選挙運動を禁止 違憲
239条1項1号・252条(1項違反分) 罰則・公民権停止 違憲
137条の2第2項 18歳未満を使用した選挙運動を禁止 合憲
国家賠償(1人10万円) 立法・不作為の違法 認めず

賠償は認めず、原告側は控訴の方針

主文は、未成年の原告が求めた「次回選挙で選挙運動ができる地位」の確認などの訴えを却下し、1人10万円の国家賠償請求を棄却した。地位確認については、どの選挙でどの候補者のためにどんな運動をするかが具体化していないとして、確認の利益がないと判断した。

賠償については、制定当時は未成年者の表現の自由を制約するという意識が明確でなかったこと、その後も国会で規定の当否が具体的に検討された事情がなく、規定の合憲性を正面から判断した裁判例も見当たらないことを挙げ、違憲であることが国会にとって「明白であったとまではいい難い」とした。

弁護団は10月7日付の声明で、1項を違憲とした判断を「正当」と評価する一方、使用禁止を合憲とした点には「重大な疑問がある」とした。使用禁止が残る限り、未成年者がボランティアとして陣営の活動に加わろうとしても受け入れ側の行為が「使用」に当たるおそれがあり、参加の道は閉ざされると主張。賠償を認めなかった点も含め「控訴することとしました」と表明した。

若者の政治参加をめぐる司法判断

選挙と年齢をめぐっては、公選法10条1項が定める被選挙権年齢を争った別の訴訟もある。裁判所の裁判例検索によると、都道府県知事選や市町村議会議員選に立候補を届け出て、年齢に達していないとして受理されなかった若者らが国を訴えた事件で、東京地裁は2025年10月24日、地位確認などの訴えを却下し、賠償請求を棄却した。

今回の判決は、選挙権を持たない未成年者にも選挙運動の自由が憲法上保障されるとした点で、これまでの議論とは異なる判断を示した。判決は2項を合憲とする理由の中で、2013年の改正でインターネットを使った選挙運動が解禁されていることも踏まえ、未成年者が自ら情報を発信する手段はあると述べており、1項の禁止がなくなった場合には、陣営に属さずに個人として発信する形が想定されていることがうかがえる。ただし第1審の判断で、原告側は控訴する方針を示しており、137条の2の規定は現在も改正されていない。インターネットを使った投稿も含め、18歳未満の選挙運動は引き続き禁止されている。控訴審の行方とあわせ、国会が法改正に動くかどうかが注目される。