衆議院の議員定数を減らす法案が、採決されないまま止まっている。衆議院の議案審議経過情報によると、「衆議院議員の選挙制度改革及び定数削減に関する法律案」は6月24日に受理され、6月26日に政治改革に関する特別委員会へ付託されたが、審査は終わっておらず、いまは閉会中審査の扱いになっている。提出したのは自由民主党・無所属の会と日本維新の会で、提出者は加藤勝信氏ほか11人の計12人。参議院にも6月25日に予備審査の議案として受理されている。

減らす45人はすべて比例代表 小選挙区は289のまま

法案の中身は、名前から受ける印象より込み入っている。

衆議院が公表している法案要綱によると、削減の対象になるのは比例代表選出議員だけだ。「比例代表選出議員の定数を176人から45人削減して131人とすることにより、衆議院議員の定数を420人とする」と書かれている。

公職選挙法第4条第1項は、衆議院議員の定数を465人と定め、うち289人を小選挙区選出議員、176人を比例代表選出議員としている。つまり法案が想定する形は、小選挙区の289人はそのままで、比例代表を176人から131人へ減らし、合計を465人から420人にするというものだ。削減幅は45人で、全体の約1割にあたる。

減らしたあと、11ある比例代表のブロックごとに何人ずつ配分するかは、この法案では決めていない。要綱は「別に法律で定める」とし、注記で2025年(令和7年)の国勢調査の結果に基づく区割り改定法を想定していると説明している。附則では、131人を比例代表の定数とし、令和7年の国勢調査を公職選挙法第13条第7項の国勢調査とみなして計算する、という算定の方法まで示されている。

本筋は「議長の下の協議会」 削減は動かなかったときの備え

もっとも、この45人減はすぐに動く規定ではない。法案は二段構えになっている。

第一段は検討だ。要綱は、現行の選挙制度を維持するのか、見直すのか、抜本的に改めるのかについて、人口が減り続けている状況を踏まえ、定数削減を含めて検討し結論を得るとする。検討の場は「衆議院議長の下に設置され、各会派の衆議院議員により構成される協議会」で、その組織と運営は衆議院議院運営委員会に諮って議長が定める。

第二段が45人減だ。第一段の結論に基づく法制上の措置を、法律の施行日から1年以内に講ずるのが本筋で、それが果たされなかったときに備えて比例代表45人減の規定が置かれている。附則によると、この部分が施行されるのは、第一段の措置として制定すると明記された法律が成立しないまま公布から1年を経過した日だ。

要綱には、なぜこの形にしたのかの説明も付いている。2022年(令和4年)の公職選挙法改正の際の附帯決議に基づき「これまで約3年間にわたり検討が行われてきた」ことに鑑み、措置の検討を促すとともに、措置が講じられない場合にも改革を確実に進めるため、としている。各会派の話し合いに委ねつつ、期限を切って結論を迫る仕掛けだといえる。

「1年以内」の根拠は区割り審の勧告期限と任期満了

期限の置き方には根拠がある。要綱は、法制上の措置について、令和7年の国勢調査の結果に基づく衆議院議員選挙区画定審議会の勧告の期限である2027年5月29日を踏まえつつ、いまの衆議院議員の任期満了である2030年2月7日による総選挙を行うべき期間までに、実施に必要な関係法律の整備が完了するよう講ずる、としている。選挙区を改定する必要が出てきたときは、区割り審の勧告期限を延長するなどの措置を講ずるとも書かれている。

新しい定数が実際に使われるのは、この部分が施行された日以後、初めて期日が公示される総選挙からだ。それより前に公示された総選挙には従来どおりの定数が適用される。

3か月、採決に至らないまま

法案が提出された第221回国会(特別会)は、2月18日に召集され、7月25日に会期を終えた。衆議院の議案審議経過情報では、この法案の「衆議院審査終了年月日/衆議院審査結果」と「衆議院審議終了年月日/衆議院審議結果」はいずれも空欄で、委員会でも本会議でも結論が出ていないことが分かる。付託から3か月近くがたつが、法案は委員会に置かれたままだ。

高市早苗首相は9月17日、第2次高市改造内閣の発足にあたっての記者会見でこの法案について問われ、「議員立法でございます。さきの特別国会に自民党と日本維新の会から提出されて、継続審議になっております。臨時国会においても議論が行われるものと承知をしております」と述べた。そのうえで「議員定数の在り方につきましては、これ民主主義の根幹に関わる問題ですから、国会においてまずは御議論いただくべき事柄でありますので、その議論の状況を注視してまいりたい」と語った。

一方で、首相は自民党総裁としての立場にも触れ、「自民党においては日本維新の会と連立政権合意書を交わしております。また、今年の衆議院議員選挙において政権公約として掲げておりますので、その実現に向けて真摯に取り組んでいくべきものと考えております」と述べている。

選挙制度をめぐっては、参議院の「合区」解消を全国知事会が衆参両院に求める動きや、被選挙権年齢の引き下げ法案など、別の論点の議論も並行して続いている。閉会中審査となったこの法案が次の国会で採決まで進むのか、それとも協議会の設置という第一段にとどまるのかが、当面の焦点になる。