政府は10月6日、令和8年度一般会計予備費32億3137万4千円の使用を閣議決定した。使途は全額が、サクラやウメ、モモを食い荒らす特定外来生物クビアカツヤカミキリの防除である。予備費を1つの外来昆虫の対策だけに充てる決定で、環境省所管が27億380万円、農林水産省所管が5億2757万4千円となる。

環境省分は自治体の防除への交付金、受付は11月6日まで

財務省が公表した閣議決定の文書によると、金額の内訳は環境省所管と農水省所管の2本で、両方とも項目名は「クビアカツヤカミキリの防除に必要な経費」である。

環境省の27億380万円は、自治体が行う防除を支援する「特定外来生物防除等対策事業」の交付金に充てられる。環境省の事業概要によれば、支援の対象は3種類で、①防除そのものを行う事業は交付率が2分の1以内、②特定外来生物の早期防除計画をつくる事業は定額250万円、③地域ごとの防除戦略をつくる事業は定額500万円である。②と③は定額を超えた分も2分の1以内で見る。いずれも今回はクビアカツヤカミキリに関する事業に限られる。交付先は地方公共団体で、中間執行団体を経由する仕組みだ。

環境省は閣議決定と同じ10月6日に、この交付金の追加公募を始めた。受付は11月6日までで、窓口は自然環境局野生生物課外来生物対策室である。農水省の5億2757万4千円は、総務省の事務連絡によれば「消費・安全対策交付金(重要病害虫の特別防除等)」として使われる。

自治体の持ち出し分は、半分だけが特別交付税で見られる

交付金には自治体の負担分がある。総務省自治財政局財政課は閣議決定と同じ10月6日、都道府県と指定都市の財政担当課などに事務連絡を出し、その扱いを2通りに分けた。

生物多様性保全推進交付金(外来生物対策費)については、地方負担額の50%を特別交付税で措置する。一方、農水省の消費・安全対策交付金(重要病害虫の特別防除等)については、地方財政計画に計上された追加財政需要額4200億円の一部で対応するとして、「新たな財源措置は行わないこととしているので、留意されたい」と書いた。同じ1つの閣議決定に基づく経費でも、自治体から見た手当ての厚みは一律ではない。

なお環境省は、交付金を受けずに自治体が単独で実施する防除事業も特別交付税措置の対象になると説明している。都道府県の交付金を受けて市町村が行う事業も含まれる。

2012年に愛知県で1本、いま22都府県・300超の市町村

クビアカツヤカミキリ(学名 Aromia bungii)は、中国・朝鮮半島・ベトナムなど東アジアを原産とするカミキリムシ科の昆虫である。農水省の資料によると、幼虫が生きた木の内部を食べながら「フラス」と呼ばれる木くずと糞を外に押し出す。幼虫でいる期間は1年から3年で、成虫は6月から8月に出てくる。食われる木はサクラ、ウメ、モモ、スモモ、ザクロ、ヤナギ属などバラ科を中心とした樹種で、やられた木は衰えて枯れる。

国内で最初に見つかったのは2012年の愛知県のサクラだった。平成30年1月に外来生物法に基づく特定外来生物に指定され、生きたままの移動や飼育は原則として禁止されている。農水省が令和8年8月時点でまとめた確認状況では、確認されたのは22都府県である。初確認の年を並べると、2012年の愛知県、2013年の埼玉県、2015年の徳島・大阪・群馬・東京、2016年の栃木県と増え、2026年に入ってからは岐阜、山梨、香川、岡山、長野、福井の6県で新たに確認された。14年で1県から22都府県へ広がったことになる。

防除戦略の概要は、被害が「22都府県・300を超える市町村」に及び、サクラの名所や景観の喪失、ウメ・モモなどの農作物被害を通じて「生活環境、文化的価値、観光、生産現場に深刻な影響」が出ていると書いている。

目標は「2030年を目途に被害地域の縮小への道筋」

政府は令和8年7月31日、関係省庁と自治体が連携して対策を強化するため「クビアカツヤカミキリ対策本部」を設置した。対策本部は9月に「クビアカツヤカミキリ防除戦略」を決定している。概要資料の日付は9月11日である。

戦略が掲げた目標は、長期的に国内根絶が可能となるよう、2030(令和12)年を目途に被害地域の縮小への道筋をつけることだ。やり方は地域を4つに区分する。被害がまだ出ていない地域では巡視とネット被覆による予防を徹底し、飛び地のように離れて被害が出た地域では伐倒・伐根を軸に短期間で根絶を狙う。被害の最前線では薬剤の樹幹注入や幼虫の個別駆除を組み合わせて拡大を止め、すでにまん延した地域では生息密度を下げる。

基本的な考え方として戦略は、防除の主体は被害木・土地・施設の所有者または管理者が基本だと明記した。国と自治体は自らの施設で率先して実施し、民有地には必要な支援を行うという立て方である。進み具合は対策本部が毎年度点検・見直しをする。

予備費の残りは7089億円になった

今回の使用で、令和8年度の一般会計予備費の残りは7089億1964万7千円になった。予備費の予算額は1兆5135億462万5千円で、前回までの使用累計が8013億5360万4千円、今回の使用額が32億3137万4千円である。

直前の2回を見ると、9月29日には予備費1118億円の使用を9月29日に閣議決定 食料品の消費税1%引き下げの準備に781億円、就業者負担軽減支援金の準備に327億円 残額は7171億円があり、10月2日には財務大臣決定として農水省所管の家畜伝染病予防費の不足を補う49億8984万2千円が決まっている。年度の前半には政府、電気・ガス料金支援を7月から再開 猛暑の8月は上乗せ 予備費5135億円もあり、使い方の幅は広い。

予備費は、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて設けられる(憲法87条1項)。内閣の責任で支出できるが、支出については内閣が事後に国会の承諾を得なければならない(同条2項)。10月5日に召集された第222回国会で、この32億円も承諾を求める対象になる。