第34次地方制度調査会の専門小委員会(第10回)が10月14日、東京都港区の三田共用会議所で、ウェブ会議を併用して開かれた。人口減少が進む中で国・都道府県・市町村の仕事をどう分け直すかという「審議項目1」を取り上げ、総務省の事務局は、事務の国への移管も含めて法制度を見直すための国と地方の協議の枠組みと、都道府県が市町村ごとに事務処理の持続可能性を分析して広域連携などを調整する枠組みの2つを論点として示した。あわせて、2027年1月頃の総会で中間報告を行う日程案も示された。議事録は10月15日夜の時点で総務省のページに掲載されていない。

2000年の分権改革から四半世紀、何を見直すのか

審議項目1は「国・都道府県・市町村間の役割分担」の在り方である。事務局が配布した「議論の着眼点」は、2000年の地方分権改革以降、「基礎自治体優先の原則」の下で権限移譲や国による義務付けの見直し、市町村合併が進められてきたと整理した。そのうえで、人口減少や少子化の急速な進行で課題が新たな局面を迎えているとして、事務そのものや事務処理の方法、制度上の事務の割り振りの見直し、デジタル技術の実装、市町村同士の連携や都道府県による補完・支援を「加速化させることが適当と考えるか」と問いかけている。

この日に議論したのは、そのための仕組みを扱う「1-3」と「1-4」である。1-3は国と地方の間で各行政分野の見直しを進める枠組み、1-4は各地域で都道府県と市町村が連携を進める枠組みを扱う。

着眼点の文書は、2000年の改革と、その後の第二次地方分権改革(2度の分権改革)がもたらした副作用にも触れた。国と地方の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に改めた理念が、結果として各府省が自治体との必要な接触まで手控える方向を生んだ面があるのではないか、と指摘する。国の職員の多忙さも重なって制度の実態を把握する機会が減る一方、個別の法律で新たな制度が次々につくられ、自治体の事務負担は増え続けてきたのではないか、という問題提起である。

地方から国に意見を伝える仕組みは、これまでも段階的に整えられてきた。資料によると、1993年に知事会など地方六団体が内閣と国会に意見を出せる制度ができ、2011年には「国と地方の協議の場」が法律で設けられた。2014年からは、自治体の個別の提案を受けて法令改正などにつなげる「提案募集方式」が始まった。ただ、提案募集の対象は権限移譲と規制緩和に限られ、新たな制度の立案には十分対応できていないと資料は記している。

国と地方の協議の場をつくり、集中期間で法律を見直す案

1-3について事務局は「国・地方関係の最適化」という考え方を示した。2度の分権改革でできた法制度を、AIやデジタル化(AX/DX)の進展も踏まえ、事務が最も適切な手法と主体で行われる形に更新するというものである。

手法としては、事務の廃止や国への移管を含めた役割分担の見直し、広域連携の制度化、全国で統一的に処理できる事務を担う「地方共同法人」の設立・活用などを、個別の法律ごとに見直す案を挙げた。分権改革は国から地方へ仕事を移す方向で進んできたが、着眼点では国に戻すことも選択肢として明記された。これまでの委員の意見としても「国でやるべきものは国に戻すということも選択肢に入れるべき」との声が紹介されている。

推進体制では、国と地方の双方の提案に基づいて見直しを進める協議の枠組みを設け、実務者同士が具体的な事務に即して協議することや、デジタル技術を使って全自治体に説明や意見照会をすることを挙げた。調整役の府省を定め、集中取組期間を設けて短期集中で進めることや、各府省が積極的に見直しを提案するよう何らかのインセンティブを与えることにも言及している。

参考例として示されたのが、デジタル行財政改革の推進体制だ。2024年6月の基本方針に基づき、デジタル庁と総務省、地方三団体の代表でつくる「国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会」が、システムの共通化の対象を選ぶ仕組みである。3月の第3回専門小委員会では、長野県の阿部知事が、政策の立案段階から国と地方が共同作業をする「国と地方が一体で成果を上げるような仕組み」が必要だと述べていた。

県が市町村ごとに「持続可能性」を分析する案

1-4では「地域における担い手の最適化」という考え方が示された。都道府県が、域内の市町村の職員の状況やデジタル化の進み具合などから、市町村ごとに事務処理を続けられるかを分析する。その結果に基づき、広域連携、外部委託や官民連携、AIやデジタル技術の活用の組み合わせを都道府県内で最適化するよう調整するという案である。

そのために都道府県と域内の市町村が参加する枠組みを設け、集中取組期間を設けて計画を定めることも考えられるとした。さらに、この調整を都道府県の新たな役割として、枠組みの在り方とともに地方自治法に明記することにも触れた。都道府県の負担が増えることについては、国が積極的に支援し、ガイドラインやデジタルツールを提供することも挙げている。

背景には、都道府県と市町村の間でも日常的な関わりが減り、都道府県がかつてのような調整力を発揮できていないという認識がある。小規模な市町村では、広域連携や外部委託を検討する余裕すらないという声もあるという。一方で委員からは「調整を都道府県に任せるとなると都道府県の負担感が増える」「都道府県が助言や調整に伴う責任を果たすことは難しいのではないか」といった慎重な意見も出ていたことが、資料に記されている。

事務局が都道府県に照会した結果では、市町村の事務処理の在り方を検討する枠組みを設けているのは37団体だった。設置を予定・検討しているのが2団体、設置の予定がないのは8団体である。重点的に検討している対応策は「広域連携」が最も多く、「総合的な検討」が続いた。

市町村の事務処理を検討する枠組みの設置状況(都道府県)(団体)

設置済み37設置検討2予定なし8
出典: 総務省「審議項目1 関係資料」(第34次地方制度調査会第10回専門小委員会)
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項目団体
設置済み37
設置検討2
予定なし8

介護認定は法定30日に対し平均40.2日

関係資料は、市町村の現場の逼迫ぶりを具体的な業務で示している。「持続可能な地方行財政のあり方に関する研究会」の報告書(2025年6月)を基にした介護保険の要介護認定の例では、要介護(支援)認定者数は制度が始まった2000年と比べて2.7倍に増えた。申請から決定までは30日以内と法律で決まっているが、全国平均は40.2日で、期限を超えている団体は1638にのぼる。認定調査を担う専門職の確保も難しくなっている。

一方、広域で処理すると改善する例もある。人口計35万人の広域連合では、認定調査員35人の確保に支障が出ていないという。ただ、認定調査を共同で処理しているのは全国で36件・171団体にとどまる。介護認定審査会の事務は297件・1063団体が共同処理しており、こちらは市町村の半数を超える。

道路の維持管理では、静岡県と下田市が県道と市道の日常管理を同じ事業者に委託し、県と市の業務時間を36%減らした例が紹介された。奈良県は県が市町村の分もまとめて橋梁点検を一括発注しているが、県の技術職員も減っており、市町村を補うための人手が足りないという課題も記されている。

都道府県が主導する取り組みとしては、奈良県の「奈良モデル」、秋田県の県と市町村の「機能合体」、高知県が県職員を市町村に常駐させる「地域支援企画員制度」などが挙げられた。奈良モデルでは、ごみ焼却施設を25から14に集約する広域化や、知事と市町村長が年5〜6回議論する「市町村長サミット」がある。長野県は2026年1月、県と市町村の行政体制の最適化を進めるプロジェクトチームを始動させた。

11月から3回でまとめ、来年1月頃に中間報告

第34次地方制度調査会の専門小委員会は、2026年2月18日に第1回を開いて以来、審議項目1と、大都市制度などを扱う審議項目2を議論し、自治体などからの聞き取りを重ねてきた。9月17日の前回は審議項目2を取り上げ、政令市を県から切り離す「特別市」、住民投票は市だけか県全体かで対立 地方制度調査会が議論 神奈川県議会は105人中67人が3政令市選出で伝えたとおり、特別市制度を巡る指定都市市長会と全国知事会の主張の違いが論点となった。

この日示された日程案では、11月以降の第11回で審議項目2について自治体から聞き取りをしたうえで中間報告に向けた議論を始め、第12回、第13回と議論を重ねる。2027年1月頃の第3回総会で中間報告を行い、最終答申は2027年12月頃を予定している。

今回の着眼点はいずれも「考えられるか」「ではないか」という問いかけの形で示された段階で、事務の国への移管や都道府県の役割の法定化といった案がどこまで中間報告に盛り込まれるかは、今後の議論に委ねられる。