経済産業省は10月14日、一般送配電事業者10社から「最終保障供給約款」の変更届出を受理したと発表した。最終保障供給は、どの小売電気事業者とも契約がまとまらない工場やビルなどに、地域の送配電会社が電気を送る仕組みだ。本土の送電網とつながっていない離島などに電気を送る「離島等供給約款」も、7社が変更を届け出た。東京電力パワーグリッド(東電PG)の場合、11月1日から高圧の基本料金を契約電力1kWあたり3036円から3181円80銭に上げる。

10社が一斉に届出 東電PGと北海道は11月1日実施

経産省によると、最終保障供給約款は電気事業法20条1項、離島等供給約款は同21条1項に基づいて届け出る。担当は資源エネルギー庁電力・ガス事業部の電力産業・市場室。どちらも、送配電会社が約款を定めて経産相に届け出る決まりで、変更するときも同じく届け出る。

最終保障供給約款を変更したのは、北海道電力ネットワーク、東北電力ネットワーク、東電PG、中部電力パワーグリッド、北陸電力送配電、関西電力送配電、中国電力ネットワーク、四国電力送配電、九州電力送配電、沖縄電力の10社。このうち中部、関西、四国を除く7社が、離島等供給約款もあわせて変更した。

経産省が公表した届出書のうち、東電PGの届出書(10月14日付)と北海道電力ネットワークの届出書(同)は、いずれも実施期日を2026年11月1日としている。東電PGの新しい約款には、11月1日をまたぐ料金の算定期間は、改定前と改定後を日割りで計算するという切り替えの規定も盛り込まれた。

「最後の受け皿」 契約期間は1年以内

企業や家庭は、電気を買う相手を小売電気事業者の中から選んで契約する。ただ、どの小売事業者とも条件が折り合わなければ、契約先がないまま取り残される。そうした需要家の電気が途切れないよう、地域の送配電会社が引き受けるのが最終保障供給だ。

東電PGの案内によると、対象は高圧以上の需要家で、「小売電気事業者のいずれとも電気の需給契約についての交渉が成立しない」場合に、約款に基づいて電気を送る。契約期間は1年以内。期間が終わるまでにどの小売事業者とも契約できなかった場合は更新できる。あくまで次の契約先が見つかるまでのつなぎという位置づけで、利用者はその間も小売事業者を探し続けることになる。

料金は、基本料金と電力量料金に、燃料費等調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金を加えて計算する。さらに東電PGの約款には「市場価格調整」という仕組みがあり、日本卸電力取引所のスポット市場価格に連動して、1kWhあたりの単価を毎月上乗せしたり差し引いたりする。

東電PGの新料金 高圧の基本料金は145円80銭上がる

東電PGが公表した料金単価表(いずれも税込み)によると、主な単価の改定前後は次のとおり。

区分 10月31日まで 11月1日から
基本料金・高圧(1kWあたり) 3036円00銭 3181円80銭
基本料金・特別高圧(1kWあたり) 2976円00銭 3018円58銭
電力量料金・高圧(1kWhあたり) 20円92銭 20円96銭
電力量料金・特別高圧(1kWhあたり) 18円88銭 18円92銭

上げ幅は基本料金の方が大きい。高圧では1kWあたり145円80銭で、約4.8%にあたる。特別高圧は42円58銭、約1.4%の上げだ。電力量料金は、高圧・特別高圧とも1kWhあたり4銭上がる。

本紙の試算では、契約電力100kWで月に2万kWhを使う高圧の需要家の場合、基本料金は30万3600円から31万8180円に、電力量料金は41万8400円から41万9200円になる。合わせて月1万5380円の負担増だ(力率による割引・割増し、燃料費等調整、市場価格調整、再エネ賦課金は含まない)。

市場価格調整の単価も、約款の改定にあわせて変わる。東電PGが公表した11月分の単価は、10月31日までの使用分が高圧で1kWhあたり0.60円、特別高圧で1.23円。11月1日以降の使用分は、改定後の約款に基づいて高圧0.56円、特別高圧1.19円となる。

起点は11月の託送料金見直し

東電PGは今回の見直しの理由を、最終保障供給約款と離島等供給約款の料金単価は、東京電力エナジーパートナー(東電EP)の料金単価に基づいて設定しているためだと説明している。東電EPが9月29日、11月1日からの料金単価の見直しを公表したことを受けて改定した。東電PGは9月4日の時点で、見直しの予定を契約者に知らせていた。

東電EPの料金見直しのもとにあるのが、送配電網の利用料である「託送料金」の改定だ。東電EPは8月31日、11月1日に各一般送配電事業者の託送料金の見直しが予定されているとして、同日から見直し分を自社の電気料金に反映すると発表した。託送料金は、小売事業者が送配電会社に払うもので、電気料金に含まれている。

託送料金は2023年度から「レベニューキャップ制度」のもとで決まる。送配電会社が5年間の事業計画と必要な収入の見通しをつくり、国の承認を受けた見通しの範囲で料金を設定する仕組みだ。東電PGは7月10日、第1規制期間(2023〜2027年度)の収入の見通しを7兆6062億円(5年合計)とする変更承認を経産相に申請した。現行より2516億円多い。理由には、期初には想定できなかった物価や労務費単価の高騰、金利の上昇を挙げた。

この申請は8月24日の第77回料金制度専門会合で、2027年度の送電線工事1件に一部設備の重複計上があると指摘された。東電PGは9月1日に補正申請を出したが、申請額と、8月24日に公表した託送料金単価に変更はないとしている。託送料金の見直しが電気料金にどう波及するかは、11月の改定を控えて各社の手続きが続いている。託送料金の見直しをめぐっては、反映作業の過程で原価算定の誤りが表面化した電力会社もある(関西電力、電気料金の原価算定に誤り 発電側課金の割引単価を取り違え3年で約1400万円を過大計上 1契約あたり月最大1円)。

離島の料金も改定 「空押さえ」防止の規定も

東電PGの離島等供給約款は、同社エリアのうち本土の電力系統とつながっていない伊豆諸島と小笠原諸島の11島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島)などが対象だ。最終保障供給と違い、家庭向けの低圧も含む。

高圧用では、ベーシックプランなどの基本料金が1kWあたり2530円から2651円50銭に上がる。低圧用では、家庭向けの従量電灯Bの基本料金が30アンペアで935円25銭から1176円18銭に、電力量料金が最初の120kWhまで1kWhあたり29円80銭から29円85銭になる。30アンペアの契約で月260kWhを使う場合、本紙の試算では基本料金と電力量料金の合計は9607円25銭から9861円18銭となり、253円93銭上がる(燃料費等調整や再エネ賦課金などは含まない)。

料金以外の見直しもある。国の審議会である総合資源エネルギー調査会の次世代電力系統ワーキンググループ(2025年9月24日と2026年4月16日に開催)で、確保した系統の容量が一部しか使われない「空押さえ」を防ぐための整理が行われた。これを踏まえ東電PGは、供給を承諾する前に需要家の都合で申込み内容が変わる場合は申込みを取り消し、承諾後に工事費負担金の入金期限を過ぎた場合も申込みを取り消すよう、3つの約款の供給条件を改めた。