任期満了に伴う那覇市長選挙は10月25日に投票が行われ、即日開票の結果、無所属で現職の知念覚(さとる)氏(63)が6万3306票を得て再選された。新人で無所属の久手堅さちこ氏(74)の2万2280票に4万1026票の差をつけた。那覇市選挙管理委員会が同日午後11時34分に確定させた開票結果による。投票率は35.81%で、前回2022年の47.05%を下回った。
現新4人の争い 知念氏が有効投票の7割を得る
選挙は10月18日に告示され、4人が立候補した。届出順に、新日本婦人の会沖縄県本部会長の久手堅さちこ氏、会社社長の矢島ケント氏(35)、現職の知念覚氏、IT会社員のヨシミネリョウ氏(25)で、4人とも無所属。現職に新人3人が挑む構図だった。
選管の開票速報(最終確定)によると、各候補の得票は次のとおり。
| 候補者 | 年齢 | 新旧 | 得票数 | 得票率 |
|---|---|---|---|---|
| 知念 さとる(当選) | 63 | 現 | 63,306 | 71.60% |
| 久手堅 さちこ | 74 | 新 | 22,280 | 25.20% |
| 矢島 ケント | 35 | 新 | 1,419 | 1.60% |
| ヨシミネ リョウ | 25 | 新 | 1,412 | 1.60% |
出典: 那覇市選挙管理委員会「開票速報(最終確定)」「最終 立候補者一覧」
有効投票は8万8417票、無効票は1038票だった。知念氏の得票は有効投票の71.60%で、久手堅氏の約2.8倍にあたる。開票の経過をみると、午後10時の時点で知念氏1万2500票、久手堅氏1万1000票と差は小さかったが、午後10時30分には知念氏が5万5000票まで伸ばし、大勢が決まった。
公職選挙法第93条は、首長選挙の候補者の得票が有効投票総数の10分の1に達しないとき、立候補の際に納めた供託物はその地方公共団体に帰属すると定める。今回の基準は8841.7票で、矢島氏とヨシミネ氏の得票はいずれもこれを下回った。
知念氏、6党の推薦を受け「8つの約束」掲げる
選管が発行した選挙公報によると、知念氏は自由民主党、公明党、国民民主党、立憲民主党、沖縄社会大衆党、おきなわ維新の会の推薦を受けた。
公報に載った略歴では、知念氏は1985年に那覇市役所に入り、総務部長(2010年)、政策統括調整監(2013年)、副市長(2015年)を経て、2022年11月に第34代那覇市長に就いた。市職員から市長になった経歴で、今回が2期目となる。
1期目の実績として、公報はお米券の配布、1年間の水道基本料金の免除、プレミアム付き商品券の配布といった物価高対策のほか、給食費の無償化、校区まちづくり協議会の発足、新那覇市立病院の開院、那覇・広島・長崎の3市長による「ピーストークセッション」を挙げた。
2期目に向けては「8つの約束」として、物価高対策、子どもの教育、地域経済の活性化、観光、市役所の手続きのデジタル化、高齢者福祉、人口減少対策、公園の民間活用(パークPFI)を掲げた。あわせて「未来につなぐ5つの種まき」として、那覇軍港の早期移設と跡地利用の推進、LRT(次世代型路面電車)の導入と次世代公共交通の推進、土地の高度利用と都市機能の集積、密集市街地の解消、省エネルギー・再生可能エネルギーによる脱炭素社会の実現を挙げている。
久手堅氏は「ミサイルよりクーラーを」 基地問題で対立軸
2位の久手堅氏は、公報のプロフィールによると1951年生まれで、琉球大学を卒業後、小学校教員として32年勤めた。沖教組那覇支部の専従、女性団体連絡協議会の副会長(2020〜2024年)を経て、新日本婦人の会沖縄県本部会長を務める。
公報では「ミサイルよりクーラーを」と大きく掲げ、体育館へのクーラー設置や教員・児童館の増加、国民健康保険と介護保険の負担軽減、学生や高齢者向けのバス・モノレール定額乗り放題を訴えた。基地問題では「那覇軍港は無条件返還!」「辺野古新基地ストップ!普天間基地の閉鎖・撤去!」と掲げ、那覇空港の民間専用化も求めた。公報には応援する人として、参院議員の高良さちか氏、前衆院議員の赤嶺政賢氏らの写真を載せた。
那覇軍港の扱いは、両氏の主張がはっきり分かれた点だった。知念氏が「早期移設」を掲げたのに対し、久手堅氏は移設を前提としない「無条件返還」を求めた。結果は知念氏が4万票余りの差で勝った。
新人の矢島氏は「しがらみのないクリーンな市政」を掲げ、基地負担の軽減やライトレールなどの鉄道整備、パートナーシップ条例の実現などを訴えた。ヨシミネ氏は、スマートフォンから市長と市議会に直接意見を届けられる仕組みづくりと、市議会の議員ごとの発言・投票の記録の公開を約束に掲げた。
投票率35.81% 記録の残る23回で2番目の低さ
選管の投票速報(最終確定)によると、当日有権者数は24万9809人(男性11万9179人、女性13万630人)で、投票者数は8万9455人だった。投票率は35.81%で、男性34.85%、女性36.69%。投票しなかった人は16万354人にのぼった。
前回2022年の選挙は、知念氏と翁長雄治氏の新人同士の一騎打ちで、知念氏が6万4165票、翁長氏が5万4125票だった。投票者数は11万9423人、投票率は47.05%だった。今回の知念氏の得票は前回より859票少なかったが、対立候補との差は前回の1万40票から4万1026票へ大きく開いた。
選管が公表している戦後の那覇市長選の記録(1948年の第1回以降)で、投票が行われた23回のうち、今回の35.81%は1996年の25.97%に次いで2番目に低い。1992年は無投票だった。2012年の39.43%、1976年の40.63%も下回った。
| 執行年 | 投票率 |
|---|---|
| 1996年(過去最低) | 25.97% |
| 2012年 | 39.43% |
| 2014年 | 65.25% |
| 2018年 | 48.19% |
| 2022年 | 47.05% |
| 2026年(今回) | 35.81% |
出典: 那覇市選挙管理委員会「市長選挙の記録 過去の記録一覧」「投票速報(最終確定)」
期日前投票は、市役所本庁や首里支所、市内の大型商業施設2か所など6か所で計3万8435人が投票し、投票者全体の43.0%を占めた。前回の期日前投票者数は5万4952人で、投票者に占める割合は46.0%だった。期日前投票所のうち最も多かったのはサンエー那覇メインプレイスの1万1843人だった。
2期目の課題 軍港移設とLRT、具体化が問われる
知念氏は2022年11月の就任から4年の任期を終え、2期目に入る。公報で掲げた「5つの種まき」のうち、那覇軍港の早期移設と跡地利用、LRTの導入は、いずれも那覇市だけでは決められず、国や沖縄県、周辺自治体との調整が要る事業だ。公報には、こうした事業をいつまでに、どの段階まで進めるかの目標は書かれていない。
今回の選挙では、6党が知念氏を推薦し、対立軸は基地問題を前面に出した久手堅氏との間に絞られた。知念氏は2位に4万票余りの差をつけて勝った一方、投票率は前回の47.05%から35.81%に下がり、投票したのは有権者の3人に1人余りにとどまった。軍港移設や公共交通の整備は、完成まで長い年月がかかり、市民の負担や暮らしに長く関わる。2期目の市政は、大差の勝利に安住せず、投票に足を運ばなかった6割を超える有権者にも、事業の工程と費用を示して説明を尽くせるかが問われる。
