立憲民主党の水岡俊一代表は9月17日、第2次高市改造内閣の発足を受けて国会内で記者団の取材に応じ、自民党の新しい国会対策委員長がかつて「総理は国会出席より政策判断や外交に時間を割くべき」と発言していたことに触れ、「とりわけ総理の国会出席時間をさらに短くすることは認められない」と述べた。党の公式サイトが同日、発言を公表した。
国会の使い方に注文をつけた形である。ではその注文にどれだけの根拠と重みがあるのか。首相の出席時間をめぐる7月の国会論戦と、この党が2月の総選挙で有権者から受け取った数字を、順に確かめていく。
党名を投票用紙から消して臨んだ2月の総選挙
立憲民主党は今年2月8日に行われた第51回衆院選に、党の名前で臨んでいない。公明党とともに、衆院側の議員が1月に結成した「中道改革連合」へ合流する形をとったためだ。中道改革連合は1月16日、立憲民主党の野田佳彦代表(当時)と公明党の斉藤鉄夫代表(当時)が国会内で共同記者会見を開いて発足を発表した勢力である。
その結果は、総務省が2月13日に公表した公式集計「令和8年2月8日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調(けっかしらべ)」に残っている。総務省はこの選挙について確定版を別途公表していないため、以下はこの速報結果の数字である。比例代表の党派別得票数は次のとおりだ。
| 党派 | 2024年(第50回) | 2026年(第51回) |
|---|---|---|
| 立憲民主党 | 1156万5122票(21.20%) | 立候補なし |
| 公明党 | 596万4415票(10.93%) | 立候補なし |
| 中道改革連合 | -(未結成) | 1043万8802票(18.23%) |
| 自由民主党 | 1458万2690票(26.73%) | 2102万6140票(36.72%) |
前回の立憲民主党と公明党の合計は1752万9537票、得票率にして32.13%だった。合流後に受け取った票は1043万8802票で、709万735票、得票率で13.9ポイント分が消えた。同じ選挙で自民党は644万3450票(44.19%)を上乗せし、得票率を10ポイント近く伸ばしている。
議席でも差がついた。当選者は自民党が315人(小選挙区248、比例代表67)、中道改革連合は49人(小選挙区7、比例代表42)だった。日本維新の会36人、国民民主党28人、参政党15人、チームみらい11人と続く。
投票率は下がっていない。小選挙区の投票率は56.26%で、前回の53.85%を2.41ポイント上回った。当日有権者数1億321万1224人に対し、投票者数は5806万2811人。有権者がより多く投票所に足を運んだうえで、この結果が出ている。「無関心のせいで負けた」とは言えない。
合流先は7か月で「国会議員1人」に 交付金は61%減
その中道改革連合も長続きしなかった。同党が9月9日に公表した小川淳也代表の記者会見録によると、党は役員会や常任幹事会、議員懇談会、総支部長会議などを経て「統一会派結成など新たな形態」を決定し、国会議員1人を残して当面存続する形をとることになった。結党から8か月、総選挙からは7か月である。
衆議院が公表する会派別の所属議員数(令和8年2月18日現在)を見ると、会派は自由民主党・無所属の会316人、中道改革連合・無所属48人、日本維新の会36人、国民民主党・無所属クラブ28人、参政党15人、チームみらい11人、日本共産党4人、無所属7人。「立憲民主党」の名を冠した会派はない。 旧立憲系の衆院議員は中道改革連合の48人に含まれている。
公金の配分にも結果は表れている。総務省が4月8日に公表した令和8年分政党交付金の交付決定によると、立憲民主党への交付決定額は31億1899万円で、前年の80億1709万3000円から48億9810万3000円(61.10%)減った。減少率は11政党で最大である。同じ表で自民党は153億6349万6000円(前年比16.72%増)、新設の中道改革連合は23億3881万2000円だった。政党交付金は前年の国政選挙の得票などをもとに算定されるため、この減り方がそのまま、失った票の大きさを表している。
自分たちが送り出した勢力の解体を「応援したい」
水岡氏は同じ取材で、中道改革連合の分党と新党結成について「驚きながらも、新しいスタートを応援したい」と述べ、新党名に含まれる「民主」について「親近感があり、うれしく思っている」と語った。
だが、これは他人の党の出来事ではない。中道改革連合は、立憲民主党の当時の代表が公明党代表とともに記者会見を開いて立ち上げ、自党の衆院議員を送り出した勢力である。総選挙を戦わせ、7か月で「国会議員1人」になった。その解体を「驚きながらも応援したい」と評する立場に、送り出した側はいない。
しかも立憲民主党は、中道改革連合への組織的な合流はしないと決めている。田名部匡代幹事長は9月16日の記者会見で、新党名が「民主改革の会」に決まったと明らかにしたうえで、「中道改革連合の判断を尊重させていただきたい」と述べた。衆院側を送り出し、自らは合流せず、解体は「判断を尊重」して「応援したい」と見送る。誰が結果に責任を負うのかが、どこにも書かれていない。
自党の勢力がこうなった経緯を説明しないまま、政権の人事を「組織の調和より高市総理自身の意向を優先した人事のように見える」と評しても、言葉は届かない。
「15時間半」という数字の中身
出席時間の議論には、7月の国会でやり取りがある。会議録によると、7月6日の参院決算委員会で公明党の宮崎勝氏が、参院予算委員会の集中審議に高市首相が出席した時間について「本日時点で十五時間半にとどまっている」と述べ、「昨年の常会の石破総理の四十九時間、そして一昨年の常会の岸田総理の四十時間に比べてまだはるかに少ない水準にある」と指摘した。
ただし、この比較はそのままでは成り立たない。宮崎氏自身が述べているとおり、15時間半は「本日時点」の途中集計であり、比較対象の49時間・40時間は常会を通じた合計である。会期の途中と通期を並べれば少なく見えるのは当然で、これをもって「出席を渋っている」とは言えない。
首相の答弁も会議録に残っている。高市首相は同じ委員会で「国会審議の在り方は国会でお決めいただくことでございますので、お求めがあれば、このようにして出席をして、これまでも誠実に答弁をさせていただきました」と述べ、続けて「NATOの出張も外務大臣と防衛大臣に代理で行っていただくことといたしておりました」と説明した。党首討論と決算委員会の日程が示されたため、外交日程の側を代理に回して国会に出た、という趣旨である。出席を避けた形跡は、少なくともこの会議録からは読み取れない。
そして、野党が求めた党首討論と集中審議は開催で合意している。前出の吉田氏は7月8日の討論で「今般、与野党で開催を合意した党首討論と予算委員会における集中審議の確実な実施」を求めると述べており、要求そのものは通っていた。
「認められない」と言える立場にあるか
そのうえで9月、水岡氏は「とりわけ総理の国会出席時間をさらに短くすることは認められない」と述べた。だが、現在の出席時間が何時間で、どの委員会で何時間必要なのかという数字は示されていない。7月に問題とされた15時間半がその後どう積み上がったのかにも触れていない。
そして「認められない」という言葉は、相手に認めさせる力があって初めて意味を持つ。国会の日程と首相の出席時間は、与野党の国会対策委員長どうしの折衝で決まる。折衝で相手を動かすのは、規則ではなく力関係である。
政権が国会に時間を割くのは、そこが勝負の場だからだ。答弁を一つ誤れば支持が動き、次の選挙で逆転される——そう思わせる相手であれば、出席時間はわざわざ要求しなくても確保される。逆に、出席してもしなくても情勢が変わらない相手なら、時間は後回しにされる。前年の常会で49時間、前々年で40時間という数字が積み上がったのは、その国会が与党にとって勝負の場だったからにほかならない。
立憲民主党が政権にとって脅威かどうか
では、いまの立憲民主党はどうか。
2月の総選挙で、党は自らの名前を投票用紙から下ろした。合流先が得た比例票は前回の両党合計より709万735票少なく、当選者は49人。政党交付金は31億1899万円で前年から61.10%減り、11政党で最大の減少率となった。合流先は7か月で「国会議員1人を残して当面存続」する状態になり、衆議院に「立憲民主党」の会派は存在しない。
投票率は56.26%で前回を2.41ポイント上回っている。有権者は前回より多く投票所に足を運んだうえで、この結果を出した。無関心のせいにはできない。
政権の側から見れば、この党との論戦で失うものは小さい。だから出席時間は削られる。削られたくなければ、削れば政権が困る相手になるしかない。 求めるべきは「出席時間を短くするな」という確約ではなく、首相が出てこなければ議論が持たないと与党に思わせるだけの議席であり、その議席を託されるだけの主張である。
臨時国会で問われるもの
臨時国会の召集は10月初旬が見込まれている。日本維新の会は閣外協力から閣内協力に転じ、中司宏氏が内閣府特命担当相として初入閣した。与党の側は、政策の実現に連帯して責任を負う体制を整えたことになる。
一方の立憲民主党は、水岡氏が1月の両院議員総会で代表に選ばれた際、党自身が「40人の参議院の仲間を擁する立憲民主党」と説明した勢力である。参院を足場とする政党が、衆院での首相の出席時間に注文をつけている。
臨時国会でこの党が示すべきは、出席時間への注文ではない。首相が出てこなければ政権が持たないと思わせる質疑であり、その積み重ねだけが、失った709万票を取り戻す道になる。
