日本共産党は10月12日、第10回中央委員会総会(10中総)を開き、党綱領の一部改定案と第30回党大会決議案を提案した。同党の公式サイトは同日、提案した文書4点を掲載した。綱領改定案の提案報告は志位和夫中央委員会議長が行った。改定案は、党がめざす未来社会についての章を全体的に書き改め、「人間の自由」をその最大の特徴・目的と位置づけた。戦後日本の記述からは「形を変えて天皇制の存続を認めた」との表現を削り、AI(人工知能)への対応や排外主義への反対、消費税の減税・廃止などを新たに書き込んだ。
綱領とは何か 前回の改定は2020年
綱領は、政党が基本的な歴史認識や当面の目標、将来めざす社会を定めた最上位の文書だ。共産党の現行綱領は五つの章からなる。第一章「戦前の日本社会と日本共産党」、第二章「現在の日本社会の特質」、第三章「二一世紀の世界」、第四章「民主主義革命と民主連合政府」、第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」である。党の公式サイトによると、現行の綱領は2020年1月18日の第28回党大会で改定された。
綱領の改定は党大会で決める。今回の第30回党大会決議案は冒頭で「第30回党大会は、党綱領の一部改定をおこなう歴史的党大会となる」と位置づけ、改定案を「いま考え得る最良の綱領」にするため全党で学習・討議するよう呼びかけた。10中総の模様は12日午後1時からYouTubeでライブ配信された。公式サイトの掲載文書は、改定案の本文、提案報告のレジメ、大会決議案、党勢拡大運動の「よびかけ」のレジメの4点である。
提案報告のレジメによると、改定の中心は第五章の未来社会論で、2004年の綱領改定の意義を踏まえて「さらに発展させた」と説明している。そのうえで「綱領の全体を現時点で考え得る最良の記述に発展させるという立場」から、第一章から第四章にも手を入れた。
未来社会の目的は「人間の自由」 生産力の規定も改める
第五章の改定案は、「社会主義・共産主義の社会の最大の特徴・目的は、人間の自由をあらゆる意味で豊かに保障し開花させることにある」と書いた。その保障となるのは「労働時間が抜本的に短縮され、すべての人間が十分な自由な時間をもつこと」だとし、自由な時間を使って誰もが能力を伸ばし、それが社会の発展につながる「好循環」が生まれるとした。
提案報告のレジメは、マルクスが未来社会を語るときに「自由」という言葉を必ず強調していたと指摘する。「生産手段の社会化」は人間の自由を実現する条件・手段と位置づけ、改定案の理論構成は『資本論』の理論構成に即していると説明した。
2004年改定については、積極的な意義を認める一方で「3つの点で問題点を残すものとなった」とし、当時の理論的探究の「過渡的な制約」だったと総括した。その一つが生産力の扱いで、レジメは「物質的生産力の飛躍的な発展を無条件に肯定する規定は適切とはいえない」と書いた。改定案は、未来社会は「資本主義社会のような生産力の無限の量的発展をめざすのでなく」、労働や環境と調和する「新しい質での生産力の発展をめざす社会である」との文を新たに入れた。
レジメは「自由な時間」論について、労働時間の短縮を求める現代の運動は未来社会と「地つづき」でつながっていると位置づけ、「旧ソ連流の社会主義論を根底から克服するうえで大きな力」になるとも述べている。
戦前・戦後の記述 「天皇制の存続」の表現を削除
第一章では2点を改めた。一つは侵略戦争と植民地支配の起点を明確にすることで、戦前の日本がアジア諸国に対して進んだ道を、現行の「侵略と戦争の道」から「五〇年余におよぶ侵略戦争と植民地支配の道」に書き換えた。もう一つは女性解放の闘争の補強で、党が戦前にたたかった対象として「家父長制のもと徹底した差別と無権利状態におかれていた女性の解放」を書き加えた。
第二章では、戦後の日本国憲法の天皇条項について、現行綱領にある「形を変えて天皇制の存続を認めた」との表現を削除した。天皇条項が「民主主義の徹底に逆行する弱点を残したもの」だったとする記述と、天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」とされ、「国政に関する権能を有しない」との制限が明記されたとする記述は残っている。
対米関係では、自衛隊について現行の「事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており」を、米軍の「指揮と統制のもとに深く組み込まれており」との表現に改めた。日米地位協定については、米軍が「治外法権的な特権を与えられた日米地位協定のもとで」日本の領土・領空・領海を「ほしいままに踏みにじっている」との記述を置き、レジメはこの問題を補強したと説明している。日本の独占資本主義の現状については、1990年代以降の新自由主義の強行とその行き詰まり、さらに「軍国主義の全面的復活の危険」を明記した。
世界の章にAIと排外主義 「民族の自決」は「人民の自決」に
第三章「二一世紀の世界」は「ごく部分的な修正・補強」(レジメ)にとどめた。用語では、現行の「民族の自決権」を「人民の自決権」に改めた。国際連帯の課題には「排外主義に反対する闘争」を加え、現行の「気候変動」は「気候危機」と書き改めた。そのうえで、気候危機を「後戻りが不可能な限界点を超える前に抑制」することを「人類の生存がかかった急務」とした。
現行綱領にはないAIの記述も入った。改定案は、巨大企業がAIを利用することで生まれる雇用、労働、環境、人権などへの害悪をただし、軍事への利用をやめさせ、「人類がAIを制御できなくなる破滅的な危険を回避」するための社会的ルールを国際協調でつくることを「緊急の課題」とした。同党の国会議員団は10月1日、共産党国会議員団、政府に「最先端AIの開発を一時停止・禁止するよう各国に求めよ」と申し入れ 自衛隊の指揮統制システムへのAI導入計画の中止も要求で政府に対応を求めている。
当面の政策に「消費税減税・廃止」「SRHR」
当面の改革を定める第四章でも、情勢の変化に合わせて書き足した。憲法と民主主義の分野には「差別と分断をあおる排外主義に反対する」を入れ、「性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)」の保障を明記した。経済の分野では、「労働時間の抜本的短縮」や最低賃金の大幅な引き上げ、非正規ワーカーの待遇改善のほか、国の責任による「ケア労働者の待遇改善」を掲げた。
財政では、国の予算が優先させている対象として「空前の大軍拡」を挙げ、くらしと社会保障に加えて「教育、住宅」などに重点を置いた運営をめざすとした。税制では「消費税減税・廃止を進め」る方針を書き込んだ。原発については、現行と同じく原子力発電所の廃止と「原発ゼロの日本」を掲げている。
同時に提案された第30回党大会決議案は、衆院選の比例代表で「比例450万票、得票率7.5%以上」を目標に掲げ、小選挙区では沖縄1区の議席奪還をめざすとした。参院選は比例代表の現有3議席を「絶対守り」、議席増をめざす。決議案は高市政権について、軍事費の「GDP比2%以上」を2年前倒しで強行したと批判し、高市政権が言う消費税減税は「2年限定、食料品だけ1%」で2年後の大増税を「確約」するものだとしている。
10中総は「第30回党大会成功・統一地方選挙勝利をめざす大運動」を2027年1月末まで行うことも呼びかけた。大会議案の学習・討議に加え、党員で1万9千人、機関紙「しんぶん赤旗」の読者で日刊紙1万6千人、日曜版8万6千人の増加をめざす。
